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[特派員コラム]バイデンの10カ月と韓国外交

登録:2021-11-26 09:55 修正:2021-11-26 10:24
米国のジョー・バイデン大統領/ロイター・聯合ニュース

 米国のジョー・バイデン大統領は就任後の10カ月間、外交原則を行動で明確に示してきた。民主主義と人権の価値を外交の最優先課題として掲げ(「民主主義サミット」開催予定、北京冬季五輪の外交的ボイコット)、バラバラだった同盟を再糾合し(北大西洋条約機構(NATO)との関係改善、クアッド(QUAD)維持、オーカス(AUKUS)創設)、国益に役立たない戦争には介入しない(アフガニスタン撤退)などだ。

 その中でも、バイデン外交の核心軸は米中戦略競争だ。今日の世界秩序の基礎といえる。米国は中国と安保、技術、通商、人権で激しく競争し、環境、公共保健などで協力を追求している。これまでを見ていると、米中両国は新冷戦へと突き進むだろうとの懸念とは異なり、今はまだ「競争が衝突へと変化しないようにするガードレール」(バイデン)の中で共存を模索しているようだ。

 韓米関係はバイデン政権の成立以降、安保から経済、技術、環境、保健などへと協力水準を大きく深めた。これは「韓米同盟の新たな幕開け…より良い未来に向けた包括的協力」という副題の付いた5月の首脳会談の共同声明に集約されている。

 実際にワシントンにおいて韓国の地位は急速に高まり、関連領域も多様化した。韓国は昨年、新型コロナウイルス防疫の模範国として浮上したほか、米国が「安全保障」事案としてアプローチする半導体サプライチェーン問題における最重要パートナーであり、中国・日本・英国などと共に原油価格抑制に向けて戦略石油備蓄の共同放出で米国と手を組んだ5カ国のうちの一つでもある。BTSや『パラサイト』、『イカゲーム』に代表される強力なソフトパワーは言うまでもない。ワシントンのあるシンクタンクの関係者は「一時期、ワシントンで『コリア』と言えば北朝鮮核問題のせいで『ノースコリア(北朝鮮)』だけだった。しかし今は、ワシントンで韓国について話すとき、北朝鮮核問題ばかりに深入りすれば干されるだけだ」と述べた。

 このような変化はバイデン政権成立以降に際立っているが、根本的にはコロナパンデミックと米中戦略競争という新たな土台の上で加速している。安保的必要性のほかにも韓国の経済、社会、文化的力量にワシントンと世界が改めて注目しているのだ。韓国外交もまた、パンデミックと米中戦略競争が開いた機会を最大限に活用する方向へと焦点を合わせるべきだ。

 そのためには「米中の間で韓国は二者択一を求められる」という視点から自由にならなければならない。米中戦略競争そのものが、あまりにも多様な領域で対立と協力が絡んでいるため、勝敗を評価することさえ難しい構造となっている。米国の外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長は、今年初めの韓国のシンクタンク「ヨシジェ」との対談において「米国が中国と関係を完全に断絶したわけでもないのに、他国に断絶するよう要求することはできない」と述べている。昼には米中が石油備蓄の放出を並んで発表し、夜には米国が「民主主義サミット」に台湾を招待して中国が反発するという、曖昧な風景が続くものとみられる。

 朝鮮半島問題においても、バイデン政権は「朝鮮半島の完全な非核化」を目標として北朝鮮に外交的・実用的にアプローチしつつ、韓国と緊密に協力するという原則を固守している。トランプ時代の「サプライズショー」はないということは明らかだ。各国がコロナによる経済の悪化や不平等の深刻化などの喫緊の国内課題を抱えている中では、朝米対話を急進展させるにも限界がある。それだけに、北朝鮮核問題にすべての外交力を注ぐような政府の姿勢は調節する必要がある。北朝鮮核への集中外交は、朝鮮半島の平和ムードづくりの面では肯定的に評価しうるが、結果が出なければ懐疑論ばかりが強くなる。ワシントンの北朝鮮疲れを緩和しつつ、北朝鮮を対話へと導く新たなアプローチがますます切実に求められている。

//ハンギョレ新聞社

ファン・ジュンボム|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1020845.html韓国語原文入力:2021-11-25 18:21
訳D.K

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