世間の常識とは違って、米国のステルス戦闘機F-35とF-22は、互いにデータ通信ができない。100年前と同じく、音声通信のみ可能だ。このような問題を認識してか、最近、米軍ではU-2偵察機を両機種の通信中継機として運用する案まで出たという。空飛ぶスーパーコンピューターと呼ばれた最先端戦闘機がこの有様だから、合同作戦はさらに多くの難題を伴う。奇しくも、米軍の地上、海上、空中、水中兵器はそれぞれ異なる経路を経て開発されたため、システムそのものが異なり、連結もできない。偵察機が空中で確保した標的データを、民間ならばクラウドコンピューティングで即座に共有するはずだが、米軍にはそれができない。偵察機が収集したデータを空中で伝送すると、通信システムに過負荷がかかるため、いったん着陸してからデータをセンターに送る。そこでまた標的情報をアップグレードするのに通常4週間かかる。民間のゲーム業界がリアルタイムでグラフィック情報を処理する速度に比べると、米軍は約800倍遅く、モノのインターネット(IoT)も適用されていない。昨年出版されたクリスチャン・ブローズの著書『The Kill Chain :Defending America in the Future of High-Tech Warfare』が明らかにした米軍の実像だ。
米国防総省の軍事革新派は、現代の技術革命に合わせて有人戦闘機や潜水艦、空母、偵察機、早期警戒管制機のような古い兵器プラットフォームを放棄すべきだと主張する。その代わり、無人戦闘機や無人潜水艦、小型ステルス艦艇、小型群集衛星、人工知能(AI)に目を向けている。大容量の通信ネットワークと知能型兵器システムも関心事だ。新しい兵器システムは、過去の兵器システムに比べて10倍以上低いコストで調達できる消耗品として扱われている。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足当時は世界11位だった韓国の国防費は、今年6位に到達し、来年には日本まで追い越して5位になる可能性が高い。5年前には日本の防衛費が韓国の2.5倍だったのに、いつの間にか日本を追い越す勢いであるから、驚かざるを得ない。軽空母と原子力潜水艦、潜水艦発射弾道弾(SLBM)、様々な弾道ミサイルなど核兵器を除いてすべて備えることを目指す韓国は、近い未来に軍事大国になる可能性が高い。このように国防費が大幅に増額されたのは、米国がすでに過去の遺物とするいわゆる「レガシーシステム」、すなわち古い概念の兵器プラットフォームにこだわっているからだ。韓国は大国の背中を追いかけ、その軍事力を真似して、差を縮めることを国防力の増強とみなしているわけだ。
現政権で先端兵器の数は大きく増えたが、それによって韓国の国防力が強化され、より安全になったわけではない。旧型の運営システムを維持している韓国は、10年前や20年前と比べても、ほとんど変わっていない。スマートでもなく、速くもなく、正確でもない軍隊と、以前と同じ方式の意思決定、同じ方式の戦術や教義、制度が、相変らず物を言う。いくら先端兵器の数が増えても、互いに結びつかなければ何の役にも立たない。韓国軍は新しい戦争に備えるのではなく、古い戦争をより良く遂行するために国防費を増額してきた。血と汗、犠牲を求める大量戦争で考えが止まっている限り、世界11位の軍事力も6位の軍事力も本質的な違いはない。
技術革命の時代に国防改革3.0のビジョンを作るためには、文在寅政権で放漫に進めてきた大型兵器プラットフォームの導入をここで止めなければならない。軽空母や原子力潜水艦、SLBMシステム、迅速対応師団の創設などは、軍ではなく、大統領府が主導してきた無謀な事業だ。軍事的合理性を欠いた軍備増強は、未来世代に莫大な軍備負担を強いるだけではなく、軍の改革を遅らせる。格好よく見える大型兵器が韓国の安全を守ってくれるという考えがお門違いであることは、近い未来に明らかになるだろう。このような観点から、国会国防委員会が軽空母の予算を削減したことは非常に望ましい。これからは軍のシステムを科学化する新たな観点の国防力建設を構想しなければならない。豊富なデータや機械の開発で速くなった意思決定、知能型警戒と作戦、無人化された軍事装備、高度に連結されたシステム、宇宙衛星基盤のモバイル戦闘システム、技術集団で軍を再構成する「国防改革3.0」がまさに今進めるべき新しい国防政策だ。血で守る国防ではなく、科学と知略で守る新しい国防の企画に着手しなければならない。
キム・ジョンデ|延世大学統一研究院客員教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)