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[寄稿]第2の尿素水騒動を防ぐためには

登録:2021-11-12 07:11 修正:2021-11-13 07:51
ユン・ドクギュン|漢陽大学生産工学科名誉教授

 尿素水騒動の波紋が広がっている。貨物の運転手が尿素水を探しに全国のガソリンスタンドをさまよい、値段が最大10倍以上にまで急上昇したこともあった。韓国政府は10日、中国などから3カ月分の物量を確保したと明らかにしたが、問題が大きくなってから一歩遅れてオーストラリアやベトナムで尿素の輸入先を探し慌てるということ自体が、典型的な政策の不在を示している。米中貿易対立が強まっているにもかかわらず、中国に対する輸入依存度が97%だというのは、サプライチェーン管理の基本原則を無視したものだ。貿易協会によると、韓国内への輸入品1万2586品目のうち、特定国家への依存度が80%以上の品目は3941品目(31.3%)だ。なかでも中国が1850品目と最も多く、その次が米国(503品目)、日本(438品目)、ドイツ(121品目)、イタリア(108品目)の順だ。このような問題が改善されないのであれば、第2、第3の尿素水騒動が予想される。

 今回を機に、尿素水騒動の根本的な原因を指摘する。韓国が尿素を生産したのは、1961年に竣工した忠州肥料が最初だ。1963年から年間8.5万トンの尿素を生産した。続いて、同一規模の湖南肥料が1962年に竣工した。1967年にも同規模の嶺南化学と鎮海化学が完成した。同じ年には、年間生産量33万トンの世界最大の尿素工場である韓国肥料(サムスン精密化学の前身)が稼動を始め、1973年には韓国総合化学のアンモニアセンターが同一規模で竣工した。1977年には、年間生産量33万トンの尿素肥料工場を2工場備えた南海化学が竣工式を行ったことで、韓国は70年代に尿素肥料工場の全盛時代を迎えることになる。当時の尿素生産能力は、8.5万トン級の工場が4つ、33万トン級の工場が4つで、166万トンに達する規模だった。現在の尿素水の年間需要は8万トンであるから、その数十倍に達する尿素を生産していたのだ。

 ところが、第1次、第2次オイルショック以後、南海化学とサムスン精密化学(現在はロッテ精密化学)を除く他の5つの企業が門を閉ざした。そして、2004年には、南海化学も尿素とアンモニアの工場4カ所をわずか800万ドルで米国企業(LCEC社)に売却した。最後まで持ちこたえたサムスン精密化学が2011年に打ち切ったことにより、尿素生産は幕を下ろした。現在、ロッテ精密化学が尿素を輸入し尿素水を生産しており、国内の尿素水市場の2分の1を占めている。

 産業の運命を決める際には、原価、効率、競争力が重要な変数になることは避けられない。しかし、時には戦略的な意思決定をする必要がある。特に、尿素水のように戦略的な用途を有する物品であればなおさらだ。日本のトヨタ社の場合、在庫ゼロ(JIT・Just in Time)を追求する。その場合、協力業者の多角化は必須だ。約2万5000個の自動車部品のうち、ボルト1個でも特定の業者の独占を許さない。ある1つの協力業者の事故がただちにトヨタ社全体の事故につながることを防ぐためだ。サプライチェーンの多角化には必ず対価が伴う。ある企業から100%購入するより50%ずつ2つの企業から、または25%ずつ4つの企業から購入すれば、単価は上がる。サプライチェーン管理はそのために重要だ。アップル社のスティーブ・ジョブスが後継者にサプライチェーン管理(SCM)専門家であるティム・クックを選んだことを神の一手だと言う理由だ。ティム・クックは卓越したサプライチェーン管理により、アップルの時価総額3000兆ウォン(約290兆円)時代を開いた。

 第2の尿素水騒動を防ぐには、国家の役割とシステムが必要だ。一つ目は、輸入国の多角化だ。どの企業も値段が高い国から物品を調達しようとしないため、これを調整するには国家が乗りださなければならない。二つ目は、非常事態に備えた専門家システムの構築だ。例えば、韓国には世界最大の尿素工場を運営した尿素の専門家が備わっている。非専門家の公務員が右往左往せず、これらの人々の衆知を集めるならば、短時間のうちに尿素水問題の解決策を導きだせるだろう。政府は第2の尿素水騒動を防ぐためにも、特定国家への依存度が高い3941の輸入品目に関する専門家人材のプールをすみやかに構成し、危機対応能力を最大化しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

ユン・ドクギュン|漢陽大学生産工学科名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1018784.html韓国語原文入力:2021-11-11 02:34
訳M.S

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