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尿素「中国オールイン」には、韓国政府の放置・収益追求の黒歴史があった

登録:2021-11-12 08:45 修正:2021-11-12 10:04
「南海化学」の話から探った尿素水問題の原因と代案
南海化学の麗水工場/聯合ニュース

 「農協の子会社として、公企業の長所と私企業の長所を合わせた安定的で良い会社」

 匿名コミュニティ「ブラインド」で南海化学を検索すると、このような紹介文が出てくる。しかし、この会社が一時は韓国最大の尿素(尿素水の原材料)の生産企業だったということは、あまり知られていなかった。

 尿素水の供給難は、韓国だけが大きな影響を受けた。日本や欧州などと違い、韓国内には尿素の生産企業がないからだ。南海化学も17年前に関連事業をたたんだ。

 今回の問題を機に、「韓国も尿素を国内で生産しなければならない」という声がふたたび高まっている。尿素水事業を営む中堅グループの最高経営責任者(CEO)は、「南海化学は、尿素の生産経験があるうえ、農協が最大株主である事実上の公的性格を有する企業」だと述べ、「国内の供給安定のため、尿素の生産を一定部分は担当しなければならないのではないか」と語った。

 南海化学は、過去には年間生産能力66万トンに達する尿素生産工場を持っていた。昨年時点の韓国の尿素輸入量(83万5000トン)の約80%の規模だ。この設備を今も維持していたとすれば、今回のような尿素水問題は起きなかった。

 この工場をある米国企業に800万ドルで丸ごと売却したのは、2004年のことだ。製造原価が輸入尿素の価格より高くなり、2年間工場稼動を中断した後、下した決定だ。

 これは、会社の民営化後に断行した体質改善と構造調整案の一つだった。南海化学は、為替危機の最中の1998年、最大株主が公企業である韓国総合化学工業から農協中央会に変わった。政府の財政負担を減らし、公企業に市場経済体制を取りいれるという、当時の民営化の風に乗ったからだ。

 韓国肥料協会の関係者は11日、本紙との電話インタビューで「尿素工場は、高温・高圧のガスがパイプラインを通過する化学プロセスの特性上、わずか1日や2日でも稼動を止めると腐食が生じ、再稼動が難しくなるなど、維持費用が極めて高いのが特徴」だと述べ、「南海化学のプラントの規模はあまりにも大きく、民間企業になった後には、その損失額を支えきれなかったのだろう」と説明した。

 尿素生産の代わりに飛びこんだ新事業は、ガソリンスタンドと油類の販売業だ。国内に直営のガソリンスタンドを開業し、精油会社からガソリンや軽油などを買ってきて、農協系列のガソリンスタンドに納品する事業だ。安定した内需消費市場を狙った成長戦略だ。

 財務的な見解からだけなら、南海化学の民営化は成功したと評価できる。2002年の創立以来、一度400億ウォン(約38億円)台の赤字(当期純損失)を出し、その後の18年間、わずか3年を除きすべて黒字を達成した。この期間の累積営業利益は約4000億ウォン(約380億円)、純利益は2800億ウォン(約270億円)ほどになる。ある公企業の事業部門のトップは「南海化学は非常に優れた企業であり、有名な会社」だと伝えた。

 KOSPI(有価証券市場)に上場する厳然たる民間企業だが、実際の事業構造はそうではない。南海化学の昨年の売上高は1兆98億ウォン(約960億円)で、肥料・化学事業が62%、油類事業が38%を占める。売上の45%にのぼる4500億ウォン(約430億円)ほどが、最大株主である農協経済グループとの取引で発生した。

 国内の農家への肥料供給を担当する農協を主要な取引先として確保し、内需の肥料市場の独占業者(市場占有率45%)の地位を保障されている。最大株主は政府から農協に変わったが、安定した事業基盤自体は大きく変わらなかったわけだ。ただし、南海化学側の関係者は「韓国内での肥料販売からは利益は出ず、輸出や化学製品の販売側から純利益を出している」と述べた。

 財務余力は他の肥料会社よりはるかに優良だ。南海化学が保有している現金など1年以内に現金化可能な資産は、今年6月末基準で5047億ウォン(約480億円)であり、その期間に返済しなければならない負債(2306億ウォン、約220億円)の2倍を超える。通常はこの割合(流動負債に対する流動資産の比率)が1.5倍であるだけでも、財政的な地位が安定した会社だと評価される。負債比率(自己資本に対する負債の比率)もわずか54%だ。韓国内での尿素の自社生産の余力がある会社のなかでは、南海化学が有力だと議論される背景である。

 政府は、尿素水の供給難を沈静化する手段としては、韓国での尿素の国内生産よりも、まずは政府の直接購入を通じた物量の備蓄と輸入先の多角化などを推進している。国家予算を用いて国外から尿素を買ってきて、政府の蓄積として積んでおくということだ。

 農林畜産食品部の関係者は「国内での自主生産も十分に考えてみることはできるが、今は足元の火を消すことに焦点を合わせている」と述べた。南海化学側の関係者は、「尿素の自主生産を事業多角化案の一つとして考慮できると思われる」としながらも、「今のような供給難が発生したのは、私たちが尿素の生産を中止してからこの20年間で初めてのことであるだけに、このような事態に備え、赤字を甘受し自主生産することが正しいのかは、よく考えてみなければならない問題」だと述べた。

パク・チョンオ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1019017.html韓国語原文入力 :2021-11-12 08:06
訳M.S

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