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[寄稿]カブールのサーラー・カリミ監督へ

登録:2021-08-19 07:21 修正:2021-08-19 10:38
ソン・アラム|作家
16日(現地時間)、アフガニスタンの首都カブールの国際空港が出国を待つ市民で大混雑している。イスラム武装集団タリバンが政権を再掌握すると、この日、夜が明ける前に数千人のカブール市民がアフガニスタンから脱出するために空港に押し寄せた=カブール/AFP・聯合ニュース

 ニュースを通じて、アフガニスタンの状況に接しました。ある記事は、首都が陥落するやいなや現金の束を抱えて逃げた大統領を、ドラマの一場面のように興味津々に書きました。米国の国際戦略の基本方針を詳細に分析した記事もあり、新疆ウイグル自治区で国境を接するアフガニスタンの情勢変化に神経を逆立てている中国の本音を推測する記事もありました。あたかも帰還した英雄を称賛するかのように、強大国に立ち向かい長い闘争の末に勝利を得たタリバンの業績を書き連ねた記事も読みました。そのような記事から、アフガニスタンの人々の顔を思う浮かべることはなかなかできませんでした。私たちは、生きている表情の代わりに、飛行機のタイヤにぶらさがって脱出し空からまっさかさまに墜落して亡くなった人のシルエットから、あなた方の事情を察するだけです。私たちはそこでの生よりも死のほうをもっと詳しく聞いています。そんな時、私はあなたが書いた手紙を読みました。

 あなたは、タリバンの男性と強制的に結婚させられた少女について語りました。服装のために殺害された女性について語りました。拷問の末に亡くなった詩人とコメディアンについて、滅亡に瀕した芸術について、ミルクがないため死んでいく赤ん坊について、学校から追い出された900万の少女について、やっと得られた高等教育の機会を剥奪される危機に直面した女子学生について語りました。あなたは、タリバンとの平和協定が合法的ではないと語り、沈黙する世界を理解できないと言いました。あなたは、戦いを継続できるよう、手紙の読者が自国のメディアにアフガニスタンで起きていることについて伝えてほしいと求めました。私はひとえにあなたの要請に応じるために、ここに返事を書きます。

 私があなたの手紙を読んだ8月15日は、ちょうど韓国の光復節でした。韓国が日本の植民地統治から解放された日です。あなたの手紙を読み、乙巳条約の不当性を知らしめるためにハーグに特使として派遣されたイ・ウィジョンの演説「韓国の訴え」が思い浮かびました。危険を冒してハーグを訪問した彼は、日本は平和を繰り返し強調するが、銃口の前に立っている人々には平和はありえず、平等な機会の約束は残酷で非人間的な統治に変わったと叫びました。彼が非難した世界の野蛮さは、あなたが直面したのとまさに同じものでした。

 歴史を学んだ韓国人であれば誰でも、イ・ウィジョンの訴えは反論できず正当なものだったことを知っています。私たちは、合理的な反論の代わりに、理解されず静かだった反応について記憶しています。あなたが「世界の沈黙」と呼んだ過酷な静寂を。韓国は世界からとても遠く離れた国でした。ハーグに集まった世界の人々は韓国についてはよく知らず、彼らが韓国のために声を上げるとしても、どこに行き届くのか、どのような意味と影響を持つのか確信できなかったはずです。実は私も同じです。私はアフガニスタンについてよく知りません。アフガニスタンに行ったことも、アフガニスタン人に会ったこともありません。また、カブールから飛んできたあなたの手紙に、大陸の反対側のソウルから応答することに、何の意味があるのかもわかりません。しかし、あなたの手紙から切々とにじみ出るさみしさは、韓国人である私にも非常によく分かるものだったので、そのまま通り過ぎることはできませんでした。この世界には、私たちが頭では理解できない暗い領域が存在するようです。そこからはどんな声も聞こえません。沈黙は、合意された不正義ではなく、無視として認識されることすらない無関心だからです。私は、あなたに返事をしようと決心することで、無関心の誘惑に立ち向かいます。

 人間が人間らしく生きる権利を押さえつけるいかなる権力も、正当性を得ることはできません。生きるという要求は、互いに異なる法と宗教と言語が共有する唯一の真理です。したがって私は、あなたの戦いに、銃の代わりにささやかな言葉を送ります。私は、あなたとあなたの国の国民が生きる権利を支持します。このような言葉が、あなたに向かい飛んでいく弾を防ぐこともできず、あなたに向かい近付く敵を後退させることもできないのは自明のことです。しかし、これまでの戦争の間、あなたの政府が持っていた武器でも、そのようなことを達成できなかったのと同じです。あまりにも純粋なアプローチは避けたがる人々がたまにいますが、彼らも自分の生活が脅かされる瞬間には、同じように純粋な希望から世界の助けを求めるに違いありません。私たちは、特に希望が持つ力を信じます。毎年8月15日が来るたびに、まさにそのような純粋な希望が現実になった出来事を記念しているからです。

※編集者注:サーラー・カリミ(Sahraa Karimi)氏はアフガニスタンの女性映画監督で、「世界は私たちに背を向けてはならない」と訴える手紙をSNSに投稿した。

//ハンギョレ新聞社

ソン・アラム|作家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1008117.html韓国語原文入力:2021-08-19 02:38
訳M.S

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