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[特派員コラム]米議会議事堂、鉄柵は取り払われても

登録:2021-07-09 02:46 修正:2021-07-09 08:13
ファン・ジュンボム|ワシントン特派員

 米国の白人の貧困層の暮らしを描いた自伝的な小説で、ベストセラーとなり映画化もされた『ヒルビリー・エレジー』の著者J.D.ヴァンス(36)は、2016年には当時共和党の大統領候補だったドナルド・トランプを批判していた。

 ヴァンスはメディアとのインタビュー、寄稿、ツイッターなどでトランプを「文化的ヘロイン」と呼び、トランプが移民やムスリムを恐怖に陥れるとして「非難されるべき」と攻撃した。大統領選直前には、トランプに背を向けた共和党員の有権者に訴えた第3候補のエヴァン・マクマリンを支持した。彼はトランプが大統領選挙で勝利した直後にも「トランプは共和党と米国の最善の利益に合わないレトリックを使っている」と批判した。

 5年後、ヴァンスは過去の発言を「後悔している」と述べて謝罪した。彼は5日のFOXニュースに出演し、「トランプは良い大統領だった。国民のために多くの決定を下し、数多くの攻撃を受けた」、「2016年の発言で私を判断しないでほしい」と述べた。これは、彼が来年11月に行われる連邦上院議員選挙の候補を決める共和党内の予備選挙への出馬を宣言してから4日後になされたものだ。彼が出馬するオハイオ州は、大統領選で2016年、2020年ともにトランプが勝利している。CNNはトランプが依然として共和党の王であることをヴァンスが立証したと指摘した。

 トランプに求愛しているのはヴァンスだけではない。彼の党内のライバルたちは「トランプは2020年の大統領選挙を盗まれた」と主張する。米国全域でも同様だ。「ワシントン・ポスト」は来年の中間選挙への出馬に向けて現在までに連邦選挙委員会に書類を提出している約700人の共和党候補のうち、少なくとも3分の1がトランプの「大統領選詐欺」主張を擁護していると分析している。共和党候補となるには、トランプと強硬な支持層を獲得しなければならないからだ。

 昨年の大統領選挙で敗北し、これを否定して1月6日に支持者の連邦議会議事堂乱入という前代未聞の事態を招き、下院で弾劾され、ツイッターアカウントすら停止されたトランプは、ホワイトハウスを離れても依然として自分の領土では強い。

 彼は退任5カ月にして、先月オハイオ州で大規模な演説を再開することをもって、自らの弾劾に賛成した共和党議員に対する「報復遊説」を開始した。「ホワイトハウス、議会、米国を取り戻す」と述べて2024年の大統領選挙への再出馬も強く示唆している。様々な世論調査で、共和党支持層の半数以上が、ジョー・バイデンではなくトランプこそが正当な大統領であると信じており、次の大統領選への再出馬を望んでいることが明らかとなっている。フロリダ州のロン・ディサンティス知事、マイク・ペンス前副大統領、ニッキー・ヘイリー元国連大使などの共和党の次期大統領候補たちの最大課題は「トランプを刺激せずに有力候補となること」という評価が出るほどだ。ニューヨークの検察がトランプの事業体「トランプ・オーガニゼーション」とその財務責任者(CFO)アレン・ワイゼルバーグを脱税などの疑いで起訴し、トランプを圧迫しているが、トランプは「魔女狩り」と述べて被害者のふりをし、むしろ支持層結集の材料にしている。

 バイデン大統領は6日、議事堂乱入事件から6カ月を迎えて発表した声明で「あれは反対意思の表現ではなく狼藉だった」とし、民主主義を守るために「憎悪と嘘、急進主義には、善意と勇気を持った人々が立ち向かわねばならない」と述べた。徹底した真相調査も強調した。

 バイデン就任から半年が経過した今も、米国は舞台の周辺でトランプと格闘している。共和党がまずトランプを乗り越えない限り、長引きそうな課題だ。乱入事件後から議事堂を囲んでいた鉄製の柵は9日に撤去作業が開始されるが、トランプの影は簡単には消えない。

//ハンギョレ新聞社

ファン・ジュンボム|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1002703.html韓国語原文入力:2021-07-08 13:30
訳D.K

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