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[社説]核燃料使う小型モジュール原子炉、「温室効果ガス削減」の代案にはなり得ない

登録:2021-06-17 02:17 修正:2021-06-17 08:29
まだ研究段階、「夢の原発」に根拠なし 
核廃棄物の排出も同様、経済性も不透明 
業界支援するにしても「漸進的脱核」は確固たるものに
16日、国会本会議で交渉団体代表演説を行う共に民主党のソン・ヨンギル代表。ソン代表は、小型原子炉は立地の限界が克服できるとし、北朝鮮の核問題解決後、北朝鮮にエネルギーを供給する有用な方策ともなり得ると述べた=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 原発業界が小型モジュール原子炉(SMR)の宣伝に力を入れている。温室効果ガスの排出削減に向けた国際社会の動きが加速していることを受け、原子力発電を再び拡大する突破口にしようとしているようだ。「未来型原子力」、「原子力ルネサンス」、果ては「夢の原発」などという派手なレトリックで人々を惑わしている。根拠の乏しい話だ。

 原子力発電が長い間、安価な電力供給源となってきたのは事実だ。しかし核廃棄物は、人類がいまだに解決策を見出せていない。1986年に旧ソ連のチェルノブイリ、2011年に日本の福島で起きた惨事で、人類は恐怖に震えた。安全強化や廃炉の費用を考慮すると、経済性にも大きな疑問符がつくようになった。先進諸国が原子力発電を凍結して「脱原発」の道を歩み始めたのはこのためだ。

 国際原子力機関(IAEA)の統計によると、今年1月現在の地球上の原子力発電所は443基。10年前から2基増にとどまっている。石炭火力発電の大気汚染を減らすことを急務とする中国は37基、後発国への影響力拡大のために原発の輸出に積極的なロシアは6基を増設したものの、日本(21基)、米国(10基)、ドイツ(9基)などは大幅に減らしている。

 安全性と経済性の限界に直面した原発業界が代案として開発しているのが小型原子炉だ。メーカーごとに設計は異なるが、韓国型は原子炉圧力容器の中に蒸気発生器、加圧器、ポンプを入れる。危険時に丸ごと水槽に入れて冷却し、「核暴走」を防ぐという。だからといって事故のリスクが消えるとは断言できない。核廃棄物も同じように発生するほか、設備容量が小さいため経済性も不透明だ。

 米国のビル・ゲイツ氏らが投資して作る小型原子炉は液体ナトリウムを冷却材として使い、今は核廃棄物に過ぎないウラン238を核燃料のプルトニウム239にする高速炉である、という点で注目される。日本が建設と試験運転に約1兆円以上を注ぎ込んだものの、相次ぐ事故により2018年に廃棄することを決めた「もんじゅ」と設計概念は同じだ。「夢の原子炉」はまだ構想に過ぎず、技術的な検証を経たものではない。

 気候危機の中、温室効果ガスの削減が急務だということは誰も否定できない。しかし、化石燃料を核燃料に替えるのは決して代案とはなり得ない。核分裂で生成される物質は温室効果ガス同様、人類の暮らしと地球環境に大きな危険と負担を負わせる。小型原子炉を使えば変わるという根拠はほとんどない。

 政府は新規の原発建設を中止し、老朽化した原発の稼働を延長しないことを決めた。60年にわたる「漸進的脱原発」方針だ。ぶれることなく進めるべきだ。ただ、これに対する韓国社会の合意水準がそれほど堅固ではないということは考慮せねばならない。原発業界の没落や電気料金高騰の懸念を払拭してはじめて、政策も揺るぎないものとなる。

 そうした点で、原発業界が生き残りの観点から推進する技術輸出は支援しうる。原子力発電政策は、安全性や経済性などをすべて考慮して、各共同体が方向性とスピードを決めるべきものだからだ。導入を前提としなければ、研究・開発にも開かれた態度が必要だが、共に民主党のソン・ヨンギル代表の発言は真意が疑わしい。ソン代表は16日の国会演説で、小型原子炉は立地の限界を克服しうるとし、北朝鮮の核問題が解決すれば、北朝鮮にエネルギーを供給する有用な方策ともなり得ると述べた。小型原子炉の開発を支援する理由を説明したものだが、このまま行けば政府の政策すら覆すのではないかと懸念される。ソン代表は何度も新ハヌル3、4号機の建設再開検討を主張しているのだからなおさらだ。政府と与党は、国内の原子力発電所の漸進的閉鎖政策に変わりがないことを、重ねて明確にすべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/999674.html韓国語原文入力:2021-06-16 18:22
訳D.K

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