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[コラム]進歩陣営の反省と省察

登録:2021-06-09 03:35 修正:2021-06-09 07:55
クァク・ジョンス|論説委員
共に民主党のソン・ヨンギル代表が2日、国会の党代表会議室で開かれた「民主党国民疎通・民意傾聴結果報告会」でチョ・グク元長官問題などについて謝罪している//ハンギョレ新聞社

 4年前のことだ。米国のトランプ大統領は就任直後、韓国に韓米自由貿易協定(FTA)の改定を迫った。米国に不利だとの理由からだった。「拒否すれば協定を破棄することもあり得る」と脅しまでかけた。当初、韓米FTAに否定的だった進歩陣営としては、トランプの手を借りて協定を破棄する絶好の機会だった。しかし意外に静かだった。15年前のことを覚えている国民は当惑しただろう。

 2006年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が韓米FTA推進を宣言すると、進歩陣営はいっせいに糾弾した。それなりの理由があった。安価な米国産の農産物が大量に輸入されれば、国内の農業基盤は崩壊しかねなかった。「投資家対国家の紛争解決(ISD)」条項は司法主権を侵害する余地が大きかった。しかし、これを「新乙巳条約」と呼び、韓国が米国の経済植民地に転落すると主張したのは行き過ぎだった。

 トランプがFTA破棄をちらつかせているにもかかわらず、進歩陣営が静かだったことが何を表しているかは明らかだ。韓国に部分的に害を与えた面もあるが、全体的には得の方が大きかったのだ。そのような場合は、問題点は補完するにしても、物事を推進するというのが道理だ。行き過ぎの批判によって物事そのものに反対するように映ると、共感はなかなか得られない。

 進歩陣営は、盧泰愚(ノ・テウ)政権が仁川(インチョン)新空港と京釜(キョンブ)高速鉄道を建設する時も、問題点を集中的に強調した。環境破壊、事故、文化財の毀損を理由としてあげた。限界に直面していた金浦空港、京釜線、京釜高速道路の問題は後回しだった。もし新空港と高速鉄道がなかったらどうなっていただろうか。そんな大韓民国を1日でも想像できるだろうか。

 韓米FTA、新空港、高速鉄道はすべて韓国の社会と経済に大きな影響を及ぼした歴史的な出来事だ。進歩陣営がこれらの事案にいずれも否定的な態度を取ったのは驚くべきことだ。進歩陣営は、手遅れになる前に率直に立場を明らかにすることも考える必要がある。

 最近、文在寅(ムン・ジェイン)政権の4年間の経済政策を批判した改革進歩系の若手学者をインタビューしたことで、頭に浮かんだ考えだ。最低賃金の引き上げ、不動産政策が「市場受容性」を無視して失敗したという指摘に共感しつつも、学者たちはこの4年間に何をしてきたのかという質問を投げかけた。その瞬間、この問いは学者だけでなく、進歩陣営すべてに投げかけるべきではないかという考えに頭を打たれた。

 2018年5月にキム・ドンヨン経済副首相が釜山(プサン)で記者団に対し、「最低賃金引き上げの雇用・経済に対する影響を十分に考慮して、目標年度を柔軟に考えた方がよい」と述べ、速度調節論を取り上げた。進歩陣営は「任期内に最低賃金1万ウォン(約982円)」という大統領選挙での公約を放棄するのかと反発した。進歩陣営が最低賃金引き上げの衝撃を完全に度外視したわけではないが、結果的に2年連続の二桁引き上げの一助となった。

 保守陣営は、不動産政策の失敗を理由にキム・ヒョンミ国土交通部長官の更迭をしつこく要求した。対策を20回以上打ち出しても市場の安定化に成功できなかったのだから無理もなかった。しかし、大統領が応じたのは2020年12月になってからだった。

 進歩陣営は、経済正義実践市民連合(経実連)を除けば、キム長官の交代には慎重な意見だった。保守陣営が不動産規制をすべて緩和し市場に任せるべきだという誤った主張をしているのに、進歩陣営まで長官交代を要求すれば、政府の政策基調が揺らぎかねないという懸念が作用したのだ。しかし、政策に対する国民の信頼はすでに崩れていた。かつての李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権の時代だったとしても、進歩陣営は長官交代を要求しなかっただろうか? 国民の目ではなく、政権勢力の目で判断したのではないのか。

 民主党のソン・ヨンギル代表が「チョ・グク事態」について謝罪した。チョ長官の娘の入試不正疑惑については「若者たちに挫折と失望を与えるものだった。(中略)国民と若者の傷ついた心を推し量ることができなかった」と頭を下げた。進歩陣営は「チョ・グク論争」から脱しなければならないとして肯定的に評価した。民主党の一部の強硬党員による反発に対しても制動をかけた。

 進歩陣営がこのように第三者的な観戦評を述べるだけで十分なのかは疑問だ。「民主化運動に献身しつつ公正と正義を誰よりも声高に叫び、他人を断罪した私たちが、自らもそうした原則を守ってきたのか、反省しなければならない」とのソン代表の指摘は、政権勢力だけでなく進歩陣営全体にも当てはまる。検察改革を掲げて、若者層と離脱した支持層の失望した声に耳を塞いでいたのではないか。与党が誤った判断をした時、沈黙を守ったり、むしろ煽ったりしていたのではないか。自ら振り返る必要がある。

 文在寅政権の残りの1年間、反省と省察は続くだろう。しかし、それは政権勢力だけではなく、進歩陣営全体の役割だ。「ダブルスタンダード」で国民の信頼が損なわれたのは進歩陣営そのものだからだ。

//ハンギョレ新聞社

クァク・ジョンス|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/998486.html韓国語原文入力:2021-06-08 15:30
訳D.K

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