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[コラム]韓国検察総長、前任者の政治行動と新任者の課題

登録:2021-05-01 10:11 修正:2021-05-01 12:24
次期検察総長候補に挙がった4人。左からキム・オス元法務部次官、ク・ボンソン光州高等検察庁長、ペ・ソンボム法務研修院長、チョ・ナムグァン最高検察庁次長検事。検察総長候補推薦委は29日の会議で、彼らを候補者としてパク・ポムゲ法務部長官に推薦した。パク長官はこのうち1人を選び人事権者である文在寅大統領に任命提請する/聯合ニュース

 新しい検察総長の主要な資格要件と役割とは、どのようなものだろうか。当然、第一は検察の独立性と中立性に対する意志とその実行だ。検察の独立性・中立性に関して、現在最も大きな懸案は何か。ユン・ソクヨル前検察総長の政治行動だ。次期検察総長は、これに対する明確な認識と解決策を提示し、検察の中立性に対する国民の信頼を回復しなければならないという重大な課題を抱えている。

 憲法の教科書では、立法・行政府は政党政治を通じて選挙で選出される「政治的権力」である一方、司法府は政党政治から断絶された「中立的権力」だと説明されている。選挙による権力の創出という民主的正当性を欠いた状態で司法権という強力な権限を享受するためには、徹底した中立性が大前提となる。これは検察にもそのまま適用される。「検察はその所属上、行政府の一員として大統領を首班とする命令体系に取り込まれているが、業務の性格は準司法的なもの」(憲法裁判所)であるからだ。検事が裁判官に準ずる身分保障を受けるのもこのような理由からだ。

 その首長である検察総長が任期途中に辞任して政治に飛び込むことになれば、検察の政治的中立性は根本から揺さぶられることになる。現職で検察を指揮したすべての行為が政治的動機を疑われ、それに従った検事たちの今後の検察権行使も中立的という信頼を得にくくなる。憲法が予定した権力秩序が損なわれるということだ。例えるならば、スポーツのシーズン中に審判長が監督としてスカウトされるようなものだ。さらに、審判長が判定問題で争ったチームのライバルチームに行くことになったとしたら、どうだろうか。先の判定の客観性とその背景が俎上に載せられるのは避けられない。このように審判に対する信頼が崩れれば、公正なゲームとしてのスポーツの存続まで危ぶまれる。

 1995年にキム・ドオン検察総長が退任した後すぐに総選挙に出馬すると、与野党ともに「検察総長退任後2年間の政党活動禁止」の立法に取り組んだのも、こうした脈絡からだった。憲法裁判所は、同法が政治的結社の自由、参政権などの基本権を過度に制限するという理由で違憲決定を下したものの、検察総長の政界直行そのものが望ましいという判断では決してなかった。検察の中立性確保という公共の価値よりも、検察総長個人の基本権により重点を置いた結果だったが、これは多くの憲法学者から批判を受けた。立法の目的の正当性に照らせば、政党活動の源泉封鎖ではなく、一定期間の選挙出馬だけを制限する程度なら、違憲の素地はないということだ(キム・ウンギュ「検察総長の憲法上の地位」)。ソウル大学総長を務めたソン・ナギン教授は、このような法の適用対象を最高裁長官、最高裁判事、憲法裁判官などにむしろ広げなければならないと主張した。自由韓国党の議員を務めたチョン・ジョンソプ教授は、捜査権と公訴権の公正な行使は検事個人の正義感に任せるのではなく、制度で解決しなければならないと指摘した。

 検察はユン前総長の政治行為とは関係なく中立性を守っていくと言うかもしれない。しかし、検察の中立性が実現しているかどうかを判断する主体は検察自身ではない。憲法第1条によってすべての権力の源泉とされる国民がその主体だ。司法権力が本質上、国民の信頼を命として考えなければならない理由がここにある。このような点で、検察はこれまで失敗していた。昨年、刑事政策研究院の刑事司法機関信頼度調査で、「検察を信頼する」という回答は31%にとどまった。裁判所(35.3%)、警察(49.2%)よりも低い結果だ。2012年以降6回行われた調査で、検察は最初を除いて連続最下位にとどまった。統計庁の「2020韓国の社会指標」を見ても、刑事司法機関に対する信頼度は警察(46.4%)、裁判所(41.1%)、検察(36.3%)の順だ。

 ユン前総長が出馬を決行した場合、彼を支持する国民とそうでない国民の間で検察の中立性に対する見方がよりいっそう明確に分かれるだろう。ユン前総長は「国民の検察」を強調してきたが、この時、国民は特定陣営や特定者を支持する人だけを意味するということはありえない。ユン前総長の出馬は、「国民の検察」というレトリックと真っ向から相反する方向に韓国社会と検察を追い込むことになる。

 新しい検察総長は前任者の政治行動で乱れた憲法のアリーナを整え、検察を「国民全体に対する奉仕者」(検察庁法)という元の位置に戻さなければならない。その第一歩は「ユン・ソクヨル検察」との徹底した絶縁だ。29日に推薦された4人の検察総長候補のうち、誰がその役割を果たせるだろうか。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヨンヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/993207.html韓国語原文入力:2021-04-30 02:38
訳C.M

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