本文に移動

[コラム]ワクチンとともに米国が帰ってくる

登録:2021-04-30 02:47 修正:2021-04-30 08:30

 先日、私はファイザーの新型コロナウイルスワクチンを2次接種まで終えた。単にこの時期に米国に滞在していたため、韓国にいる人たちよりずっと早く接種できたのだ。米国の公共サービスは遅いことで有名だが、ワクチンを打って考えが少し変わった。今月19日から16歳以上なら誰でも、官公庁や薬局チェーンなどの様々なルートを通じて接種を予約できるようになっている。2回目の接種では、大型接種センターの駐車場に車をとめ、列に並んで建物内に入り、注射を打つまでにかかった時間は、せいぜい十数分だった。医療関係者はもとより、民間ボランティア、軍人、警官がいたるところに配置され、全ての動線が迅速かつ安全に流れるよう彼らが助けていた。私に注射を打ってくれた女性医療スタッフは「うまく体系化されている」と自負した。5月末までに希望するすべての人への接種を終えるという疾病予防管理センター(CDC)の目標は虚言ではないと感じた。

 1年前のことを思い出すと、これが果たして同じ国なのだろうかと思う。当時ドナルド・トランプ大統領と当局者たちは「なぜ米国は韓国のようにコロナ検査ができないのか」という問いに苦しんでいた。トランプは「殺菌剤を人体に注入したらどうか」という発言で世界を驚愕させた。マスクはしろというのか、するなというのか、政府のメッセージは人々を混乱させるものだった。

 世界の懸念材料だった米国が、今や羨望の的となっている。ジョー・バイデン大統領の速攻により、米国の成人の54.2%がすでに最低1回はワクチンの接種を終えており、37.3%は2次接種も完了している。今年1月には25万人台だった1日のコロナ感染確認は、最近では5万人台に、死者は3000人台から600人台に減った。米国は、ワクチンの国内供給が間もなく需要を上回るとの見通しすら出ている中、いまや若者や農村の保守層などのワクチン接種を忌み嫌う人に接種させる方法に苦慮する「ワクチン富裕層」となっている。米デューク大学の国際保健革新センターの集計によると、米国は年内のファイザーとモデルナの6億回分をはじめとして、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ)、アストラゼネカ、ノババックスなども合わせて12億1000万回分のワクチン購入契約を結んでいる。すべての成人に1人当たり3回接種できる分量だ。韓国がきめ細かな行政力と国民の高い受容性を基盤として防疫の模範国になったとすれば、米国は蓄積された技術と天文学的な投資を武器にワクチン大国となったわけだ。

 そのような米国を世界が見つめている。ワクチン、原料物質、製造技術を共有しようと訴える国際社会と保健専門家の要請に対して、バイデン政権は「まず米国から」と耳をふさいできた。米国は、「インドは生き地獄となっている」という悲痛な叫びが高まってようやく、国内に備蓄してあるアストラゼネカのワクチンを他国と共有することを明らかにした。インドに対してワクチンの原材料や治療薬などを提供することも決めている。ワクチン技術の知的財産権を一時的に停止してワクチン生産を促進しようとの要求についても検討していることを、ホワイトハウスは明らかにしている。しかし、米政府内ではまだワクチンを国外に送るべき時ではないという反論があるという。ワクチン技術の知的財産権の停止にはメーカーが強く反対している。

 ワクチン共有の責任を米国だけに求めるわけにはいかない。自国民優先も非難は難しい。しかし「米国は帰ってきた」と宣言したバイデンの米国に世界が期待するものは、「米国一人」路線をひた走ったトランプの時とは異なる。バイデンは「力ではなく模範で世界を導く」と約束した。彼は昨年7月、筋萎縮性側索硬化症の活動家アディ・バキャンとのオンラインでのインタビューで「米国が先にワクチンの開発に成功した場合は、その技術を世界と共有するのか」という問いに「それは良いことであるだけでなく、圧倒的に我々の利益にもかなう」と述べつつ「イエス、イエス、イエス、イエス」と答えている。ワクチンにおけるより果敢なグローバル・リーダーシップこそ、世界が米国の帰還をはっきりと体感する機会だ。

//ハンギョレ新聞社

ファン・ジュンボム|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/993249.html韓国語原文入力:2021-04-29 18:02
訳D.K

関連記事