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[寄稿]街頭に出たミャンマー市民たち、「必ず勝つ!」

登録:2021-04-29 10:04 修正:2021-04-29 12:52
チョン・ビョンホ|漢陽大学文化人類学科名誉教授
ミャンマー軍部クーデターに抵抗するヤンゴン市民たちが27日、ヤンゴンのサンチャウンで3本指を掲げて行進している=ヤンゴン/AFP・聯合ニュース

 ミャンマーのヤンゴン大学の教授が近況を伝えてきた。軍部クーデターに反対し、授業を拒否して街頭に出たと。二度と自由を奪われないように、教授の大半が市民不服従運動に参加しているという。弾圧が激しくなっているが最後まで戦って勝つ、応援してほしいと訴えた。馴染みの教授たちの悲壮な顔が思い浮かんだ。生計に関わる給与を手放しただけでなく、解雇の危険まで甘受した彼らの険しい未来が思い描かれ、心が重くなった。

 2013年春の、彼らとの初めての出会いが思い出される。ミャンマー地域社会発展のための国際協力事業を推進するため、ヤンゴン大学を訪問した。しかしパートナーとなる現地の教授たちとはなかなか会えなかった。1988年に民主化闘争を残酷に鎮圧した軍部が、大学キャンパスに学生と外部の人の出入りを禁止したためだった。訪問申請をして1週間待った末、なんとか許可を得た。軍事独裁の影が濃かったものの、それでも少しずつ文民政府への転換が始まっていた時期だったから、まだ可能だったのだ。大学正門で私服軍人が厳しい視線で審問した。

 人通りが絶え、がらんとしたキャンパスには雑草が生い茂り、草むらの間を野犬がうろついていた。大都市ヤンゴンの中心街に、こんなに広い荒廃した空間があるとは、実感がわかなかった。数十年もの間整備されずにぼろぼろになった建物が立ち並んでいた。真っ暗な玄関を過ぎ、長い廊下の両側の教室はすべて閉まっており、片隅の職員室に教授と職員が集まっていた。まるで幽閉されていた人たちが救助隊に出会ったかのように、私たちを歓迎してくれた。昔セミナー室として使っていた大きな部屋には、くもの巣が張りほこりが立ち込めていた。壁の棚を拭くと、古風なチークの本棚が輝きを取り戻して姿を見せた。曇ったガラス戸の奥には様々な言語圏の古典書籍がぎっしり詰まっていた。まるでハリウッド映画の『レイダース 失われたアーク』の一場面のようだった。

 ヤンゴン大学の前身であるラングーン大学は、東南アジア最高の名門大学だった。ビルマの英雄アウンサンと国連事務総長ウ・タントを輩出した大学で、シンガポールのリー・クアンユー首相が羨望したという国際的高等教育機関だった。しかし、ミャンマー軍部は人権問題に批判的な米国や欧州の大学との交流を断ち、その代わり日本にだけ少数の留学生を送った。学生デモを恐れてキャンパスへの出入りを防ぎ、男性教授らの抵抗を警戒して人文社会専攻の教授は女性だけを残した。まさにその教授たちが、疲弊した大学を復活させるために情熱的に動きはじめた状況だった。

 ヤンゴンのほか、マンダレー大学などの別の大学の状況も似たようなものだった。韓国でいえばソウル大学、釜山大学、全南大学のような大学だ。このように大学から学生を追い出して学問を抑圧した国がうまくいくだろうか。韓国にコメを援助したビルマは、世界最貧国ミャンマーとなった。

 韓国もその道をたどるところだった。大学キャンパスに軍人たちが押し入り、図書館で勉強していた学生たちまで殴って追い出し、学校正門を銃を持った軍人たちが守っていた時代があった。「祖国と民族のために」騒がしい大学は大砲でぶっ飛ばすと豪語した将軍たち、デモをする市民たちは戦車で轢いてもいいと言い放った警護室長の姿は、こんにちのミャンマー軍部「タマド」の権力者たちと重なる。彼らが守ろうとしているのは国なのか、自分たちの権力なのか。権力を握って特権を世襲してきた彼らは、表向きには吠えているが内心は震えているだろう。

 権力は武力だけでは保てない。人々の同意が必要だ。銃を持った軍人の前に立ったミャンマー市民の3本の指は途方もなく微弱なジェスチャーのように見えても、権力に立ち向かう人々を数百、数千人殺して維持される権力は、結局分裂し瓦解するしかない。韓国ではそのようにして、維新独裁を終わらせるための朴正煕(パク・チョンヒ)暗殺の銃声が響いた。1980年5月のむごい鎮圧に対抗した光州市民の血によって、1987年6月のソウルには戦車が入ることができなかった。2016年秋に光化門(クァンファムン)広場で放水砲に倒れた一人の死によって、その年の冬の数百万のろうそくの上には一滴の水も放たれなかった。

 2021年4月、街頭に出たミャンマーの市民たちは、韓国のように民主化した未来を夢見て抵抗の意志を固めている。「ここで挫けたら再び暗鬱な軍事独裁の陰で幽閉された生を送らなければならない」という切迫した気持ちで、情け容赦のない権力に立ち向かっている。韓国市民の支持と連帯が必要だ。韓国政府はミャンマーへの兵器輸出を停止した。企業も目の前の利益にこだわって軍の側に立ってはならない。8年前、民主化の春の風に少しずつ萎縮を解きはじめたヤンゴン通りで、笑いながら「カンナムスタイル」を踊っていた子どもたちの顔が思い浮かぶ。あの子どもたちは今、抵抗の先頭に立っている。ミャンマーの街頭で市民たちが叫んでいる。「アウンヤミ!」 必ず勝つ!

//ハンギョレ新聞社

チョン・ビョンホ|漢陽大学文化人類学科名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/992992.html韓国語原文入力:2021-04-29 02:36
訳C.M

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