本文に移動

[コラム]日本の福島原発汚染水「海水希釈」の神業

登録:2021-04-25 20:26 修正:2021-04-26 06:36
イラスト//ハンギョレ新聞社

 ある人が「ウサギ肉のハンバーガー」を売っていた。純ウサギ肉かと尋ねたところ、馬肉を「少し混ぜた」と答えた。どのように混ぜたかと尋ねると、一対一の比率だと答えた。例えば、1キロずつ混ぜたということかとさらに問い質すと、「そうじゃなくて1匹ずつ混ぜた」と打ち明けた。これはウサギ肉ハンバーガーなのか、馬肉ハンバーガーなのか?政府が食料品に成分表示基準を定めているのは、このような形の「希釈」を禁止したり、少なくとも実態を表わすようにしようとしてのことだ。

 汚染物質の排出にも許容基準値がある。1991年3月、洛東江(ナクトンガン)を深刻に汚染させたフェノールの場合、リットル当たり排出許容基準値が0.1ミリグラムだ。フェノール1グラムは、1万リットル以上の水で薄めれば捨てることができるという話だ。だが、希釈用の淡水を大量に得ることは難しく、川や湖にむやみに放出するには制約が伴う。そこで腹黒い者は、豪雨が降る日を その日とみなして、素早く悪さをする。

 汚染物質の海洋放流にも基準値があるが、実際には何の意味もない。海水は手に入れやすく、ポンプを回し海水を汲み薄めて海に再び流すのに格別困難がないためだ。地球上の水の97%が海水だ。1億トンのタンク136億個を満たすほどの量だ。したがって、基準値の40分の1でなく、4万分の1に合わせることも、さほど難しいことではない。日本政府が福島原発放射能汚染水を「飲料水基準値」以下にして海に放流するとした理由がここにある。

 放射性物質の海洋放出量でみれば、福島原発汚染水の放出だけでなく原発自体を正当化するのが難しくなる。重水を使う月城(ウォルソン)原発からもトリチウムがたくさん洩れている。米国や中国の原発も同じだ。フランスの使用済核燃料再処理施設では、2015年の1年間で福島原発汚染水の全体に含まれるトリチウムの15倍に達する量を海に放流した。「海水希釈」の神業に私たちがだまされているだけだ。

 日本の放射能汚染水海洋放流は、原発事故のせいで海に流れることを防ぐためにわざわざ汲んで貯めた汚染水を海に再び捨てるという点で、無責任で不道徳なことだ。日本政府は固体化、大気中放出、地下埋設など様々な方法の中から海水希釈を選択した。最もコストがかからないからという理由で。

チョン・ナムグ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/992503.html韓国語原文入力:2021-04-25 17:11
訳J.S

関連記事