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[寄稿]保守メディアの診断は間違いだ―日本社会党を教訓に

登録:2021-04-13 06:26 修正:2021-04-13 07:49
選挙に敗れた政府与党と改革への課題 
 
ヤン・ウィモ|教育者出身・作家

 「公正と実利を優先するMZ世帯」。ある保守メディアの記事のタイトルだ。「公正」と「実利」が何の問題もなく両立可能なのか混乱する。公正さと実利は二者択一ではないとはいえ、両立可能には思えない。保守メディアが公正を前面に出す底意が気になる。

 彼らはジェンダー問題が最大の問題だったというが、理解しがたい点がある。20代女性が40代男性とともに与党候補にさらに多くの支持を与えたのとは違い、20代男性が伝統的な保守支持層である60代以上の世代よりも強く野党候補を支持したという事実だ。ジェンダー問題により敏感な20代女性よりも20代男性がジェンダー問題で投票心理を変えたということだが、“アンチフェミニズム”の傾向が比較的強い彼らが目覚め、フェミニズムを積極的に受け入れることがあるとでもいうのだろうか。

 他の問題も同じだ。不動産問題で公正ではないからという分析が正しいのであれば、不動産問題ではるかに欠陥が多い野党候補を支持できない。「チョ・グク問題、LH問題」云々も同意しがたい。チョ・グク事件が問題ならば、昨年の総選挙でも与党が敗れるはずだが、史上最高の勝利をおさめたし、20代も同じだ。LH問題が権力型不正ではないことを20代が知らないはずはないので、なおさらだ。

 本質は、2007年の大統領選挙と同様の“漠然と期待する実利”だ。大学にいた筆者は、当時の学生たちが、李明博(イ・ミョンバク)候補が当選すれば経済がよみがえり、就職問題が解決されるはずだと漠然と期待した事実を、鮮やかに記憶している。筆者は「現在も経済指標は良好だ。問題は、その成果が一部に偏っているのことに加え、雇用なき成長だ」と話をしたが、若者だけではなく既成世代でさえ根拠のない期待感でいっぱいになり、そのまま投票を行った。理性が作用する余地は全くなかったほどだった。それによる選挙結果や以後の実情を、私たちはよく知っている。

 今回の選挙では、不動産政策のために与党を捨てるという人々が筆者の周囲のいたる所に散在していたが、どこに原因を求めるのか。さらに、税金のために「偽装離婚」もいとわないという人々も少なくない。そのうえ、今はコロナ禍まで重なった。国民は疲労感を爆発させる対象が必要で、その対象として現政権を選んだとみなければならない。

 問題は、現政権の改革意志がくじけ、検察改革の完成に加え、メディア改革、そして需要抑制の不動産政策が変わらないかと思われることだ。大統領の任期も1年程度残っているが、今回の選挙の敗北が決定打となり、改革をくじかせることになるのではないかと心配だ。

 ろうそく革命の力で立てられた政権であるので、名分上でもありえないが、実利を求めても同じだ。むやみに妥協に出れば、野ウサギどころか家ウサギまで失うことになり得る。今回の20代の投票心理の変化が、保守メディアの分析どおり「ジェンダー」や公正の問題が原因であるのなら、なおさらだ。しかし、今回の選挙のように目先の利益を振り払うことは難しい。

 日本社会党(1996年より社民党)の没落が良い教訓になるだろう。1993年8月の衆院選で社会党は大勝利をおさめ、少数与党と多数野党の状況で連立内閣の与党になり、1994年6月にはついに47年ぶりに社会党の首相を輩出し、意気盛んに進んだ。しかし、これが結局、自ら失敗を招く手法になってしまった。自民党との連立政権は、社会党が掲げた価値を傷つけ、結局、次の選挙で社民党は交渉団体も結成できない弱小政党に転落した。それにより利益を多く得たのが日本共産党だった。社民党の支持層は左右に分裂し、左派の支持者の相当数が共産党に向かった。

 政権に目を奪われ自分たちの信念を軽々しく捨てればどのような結果が生じるのかを、社会党の没落は生々しくみせてくれた。与党はこのような歴史的な教訓を振り返る必要がある。

 改革は時代の課題であるため、必ず成し遂げなければならない。今になり適当に妥協すれば、実利的にも決して有利にはならない。たとえ政権を奪われても、180議席を超える改革支持勢力が議会を掌握している。改革を続けることができる根拠はそこにある。

//ハンギョレ新聞社

ヤン・ウィモ|教育者出身・作家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/990697.html韓国語原文入力:2021-04-13 02:36
訳M.S

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