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[寄稿]二者択一か綱渡り外交か?

登録:2021-04-07 02:40 修正:2021-06-28 18:13
現代の世界秩序は少なくとも8つの異なる秩序が同時に存在している複合的な姿であり、中国と米国はこの8つの世界秩序において、それぞれ異なる関係を結んでいる。したがって、米国の側に確実に立つか、米国と中国の間で綱渡りをせよ、という選択肢しかない答案用紙は、出題からして間違っているのだ。そこではもどかしかったり、気をもんだりする選択のみが可能となっている。朝鮮半島が進むべき道は、誤った答案用紙を拒否することだ。

 これはハラハラする綱渡りなのか。イライラが募る首脳外交のドロドロとした昼ドラマなのか。胸に迫る平和と繁栄の朝鮮半島はどこかへ行ってしまったのだろうか。

 ソ・フン大統領府国家安保室長は2日(現地時間)、米ワシントン近くの海軍兵学校で、米国のジェイク・サリバン国家安保担当大統領補佐官、日本の北村滋国家安保局長と、韓米日3カ国安保室長対面会談を行った。チョン・ウィヨン外交部長官は3日、中国の福建省廈門で韓中外相会談を行い、王毅外交担当国務委員兼外交部長と意見を交わした。ソ・フン安保室長とチョン・ウィヨン長官が、同じ日に米国と中国でそれぞれ会談を行ったのだ。米国のバイデン政権の発足に続き、今や華やかな外交が花開き始めたのだろうか。それとも米中の覇権戦争に韓国が巻き込まれ始めたのだろうか。

 一部からは「トゥキディデスの罠」を懸念する声もあがっている。古代ギリシアで起こったペロポネソス戦争を記録した歴史家トゥキディデスにちなんだ言葉だ。アテネの新興強国としての台頭が、既存の強国だったスパルタにとっては脅威となって「権力転移戦争」が激発したというのだ。この公式で、アテネに中国を、スパルタに米国を代入すれば、21世紀の未来が分かるとの主張だ。では、必然的に起こる米中覇権戦争において、韓国の選択はいかにあるべきかと問う。

 実は、こうした「現実主義」的な問いは、ある答えを前提としている。韓国の同盟国である米国に中国が挑戦したり挑発したりするなら、軍事同盟国の選択肢は決まっているからだ。さらに、韓国は民主主義という価値を米国と共有する「価値同盟」であるため、「共産党一党体制」である中国との関係には根本的な限界があるということも加わる。したがって、このような現実を認めず、文在寅(ムン・ジェイン)政権が米国と中国の間で中途半端な姿勢を示すことは問題であり、その結果、ソ・フン国家安保室長は米国に「呼び出され」、チョン・ウィヨン外交部長官は、中国に「呼び出される」という、もどかしい状況になってしまったのではないか。

 これに対する反論も根強い。米国の側に確実に立つことは、別のもどかしい状況を招くというのだ。この論によると、米国が韓国の同盟国であることは事実だが、中国は韓国の最大の貿易相手国だという現実は度外視できない。中国との貿易額は対米・対日貿易額を合わせた額より多いという圧倒的な経済的現実のためだ。同盟の手ばかり握りしめていたら、飯は誰が食わせてくれるというのか。韓国と中国はすでに戦略的協力パートナーの関係であるということも忘れてはならないという。

 安保と経済の現実を総合的に判断しなければならないという「現実主義」的反論も、ある答えを前提としているのは同じだ。米国の手ばかりを握っているわけにも、中国との貿易ばかりに頼っているわけにもいかない。最大限、両者の関係を安定的に管理しなければならない。「北朝鮮核問題」を解決するためにも、両国の協力は欠かせないのではないか。したがって「綱渡り外交」は韓国の宿命だ。米中関係が緊張すればするほど張りつめる綱の上で繰り広げられるバランス外交は、米国も中国も韓国に求愛する三角関係へと帰結する。バイデン政権と習近平政権がそれぞれ文在寅政権の安保・外交トップと同時に会談を行った昨今の姿は、このようなバランス外交の白眉ではないか。

 しかし、これらの主張は、その相反する評価にもかかわらず「一本の木」だ。枝は二つに分かれていても根は同じからだ。彼らが想定するのは、米国中心の世界秩序と中国中心の世界秩序に二分された世界観だ。この二つの秩序は相反する価値と規範に基づいているため共存は不可能だという、世界を支配する覇権国家は一つしかあり得ないという、競争的世界観だ。覇権国家と挑戦国家には無限の競争のみが選択肢として残されており、それ以外の国には二者択一か、両者の間でのぎりぎりの綱渡りのみが残されている、という世界観だ。

 米国ハーバード大学の中国政治学者イアン・ジョンストンは、そのような二分法的世界観は複雑な21世紀の国際関係をきちんと反映していないと指摘する。ジョンストンによると、現代の世界秩序は少なくとも8つの異なる秩序が同時に存在している複合的な姿であり、中国と米国はこの8つの世界秩序において、それぞれ異なる関係を結んでいる。したがって、米国の側に確実に立つか、米国と中国の間で綱渡りをせよ、という選択肢しかない答案用紙は、出題からして間違っているのだ。そこではもどかしかったり、気をもんだりする選択のみが可能となっている。朝鮮半島が進むべき道は、誤った答案用紙を拒否することだ。国と国との平和、国家と市民との間の平和、市民と市民との平和を核とする世界秩序を韓国の答えとして作り出す時、胸に迫る朝鮮半島の外交を始めることができる。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン|国際基督教大学政治学・国際関係学デパートメント教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/989600.html韓国語原文入力:2021-04-05 04:59
訳D.K

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