韓国人には馴染みのない中国の伝統料理「泡菜(パオツァイ)」が、一夜にして「キムチ」のように身近なものになった。泡菜は中国式の漬物で、西洋のピクルスや韓国のチャンアチ(漬物)、日本の漬物のような料理だ。生姜、ニンニクなどの香辛料と塩を入れた熱湯に様々な野菜を入れて発酵させたもので、古くから四川地方で発達しているため「四川泡菜」とも呼ばれている。韓国の中華料理店でよく食べる搾菜(ザーツァイ)も泡菜の一種だ。
29日、泡菜がキムチの国際標準になったという記事が報じられ、韓国国内の世論が騒がしくなった。中国の「環球時報」が、泡菜が国際標準化機構(ISO)の認証を受けたという「中国市場監官報」を引用し、だしぬけに「キムチ(泡菜)宗主国、韓国の恥辱」という見出しをつけたからだ。記事によると、標準化は泡菜だけに該当する話にすぎない。ところが、中国人がキムチをよく「韓国泡菜」と呼ぶというだけの理由で、泡菜の国際標準がキムチの国際標準に化けるという「言いたい放題」が繰り広げられたのだ。
そこへまた韓国メディアが環球時報を引用し、「キムチ工程」(中国の東北工程をもじったもの)「キムチ崛起」などの造語を持ち出して「中国キムチが国際標準になった」と大騒ぎし、この問題に対処できなかったとして「韓国外交の無能」とまで言及した。環球時報も舌を巻く「言いたい放題」の極致だ。環球時報は2017年に在韓米軍のTHAAD(高高度ミサイル防衛)配備問題が起こった時、「韓国の保守主義者はキムチばかり食べて馬鹿になったのか」という暴言を論評に書き、今年6月には朝鮮戦争70周年を記念してBTS(防弾少年団)が「(韓米)両国の苦難の歴史」と表現したことにけちをつけ中国世論を刺激するなど、極端な愛国主義で嫌韓感情を煽る記事を何度も書いてきた。しかし、今回のキムチ国際標準騒ぎは、環球時報の一方的な攻撃というよりも、中国メディアと韓国メディアがいずれも、取材したものではない「書き写し」競争を繰り広げ「煽り報道」に没頭するあまり起こったハプニングに近い。知りつつ書き写そうが知らずに書き写そうが、結果的に両国のメディアは「幻想的なペア」のチームワークを発揮し、それぞれ嫌韓と嫌中の世論を刺激してページビュー数を上げるという目標は達成したようだ。結局また、読み手だけが恥ずかしい思いをすることになった。