メディアは自殺に関する報道をする際、きわめて慎重でなければならない。過度に報道したり扇情的に報道することは、遺族の悲しみを倍増させ、後追い自殺を招く原因となる。特に有名人の自殺についてはなおさらだ。
「朝鮮日報」が3日、母娘ともに亡くなったタレントのパク・チソンさんの母親が書いたとみられる遺書を「単独記事」と記して報道した。朝鮮日報は「現場には母親が書いたとみられるノート1枚分のメモが残されていた」とし、内容の一部を公開した。朝鮮日報の報道後、いくつかのメディアも遺書の内容を記事化した。無責任きわまりない。
遺書は、公益のために必要な場合でなければ報道しないのが原則だ。韓国記者協会などが制定した「自殺報道勧告基準3.0」では、「遺族の心理状態を考慮し、細心の配慮を払わなければならない」として「遺書と関連する事項を報道することは最大限自制する」と定められている。その上、警察は2日「現場でパクさんの母親が作成したとみられるメモを見つけたが、遺族の意向によって内容は公開しない」と記者らに伝えた。にもかかわらず、これを報道したことは、遺族の悲しみに共感する態度ではない。道理にはずれている。
誤った自殺報道は、また別の死を招く恐れがあると専門家たちは警告する。有名人の自殺をメディアが集中的に報道した後、一定期間自殺者が増えるという研究結果がいくつもある。韓国メディアは自殺報道でも速報とスクープを競い、死を商業化しているという批判を受けてきた。しかし最近、自殺記事に「自殺予防ホットライン情報」を載せるメディアが増えるなど、少しずつ改善されている様子もみられる。
今回もほとんどのメディアが遺書の公開を自制したが、朝鮮日報が特に「単独」をつけて報道したのは、照会数を上げるための「クリック商売」だという批判を免れることはできない。朝鮮日報のホームページには、この記事をはじめ、パクさんの自殺に関する記事が150本近く掲載されている。本当にこれでいいのか問いただしたい。言論の倫理はゴミ箱に投げ捨てたようだ。
遺書を公開した朝鮮日報の記事に対し、「これはあんまりだ。家族を2人も亡くして苦しむ遺族のことを考えてほしい」「遺族が非公開を望んだのに、それをどうしても記事にしなきゃならなかったのか」「ああ、また別の記者たちがこれを書き写していくだろうな」などのコメントが次々にアップされた。メディアが自ら信頼を失墜させる姿を、いつまで見守らなければならないのか。実に惨憺たる心情だ。