文在寅(ムン・ジェイン)大統領は17日、李洛淵(イ・ナギョン)首相の後任に丁世均(チョン・セギュン)元国会議長を指名した。文大統領が20代国会前半期に議長を務めた6選の国会議員である丁元議長を首相候補者に指名したのは、何より経済を活かすのと協力政治のためだと読み取れる。丁候補者は産業資源部長官を務めるなど実物経済に明るく、党代表などを経て円満な調停能力を示したという点を高く評価したものと見られる。しかし、立法府の首長を務めた人物を行政府の第二人者に任命することで三権分立の精神を毀損したという批判が多いため、人事聴聞過程などを通じてこれを十分に説明する必要がある。
文大統領は直接、大統領府の春秋館に出て来て指名の事実を明らかにし、「立法府の首長を務めた方を首相に迎えることに躊躇はあった。しかし、野党を尊重して国民統合・和合を導くことができる能力がより重要だと思った」と述べた。三権分立の議論にも関わらず丁候補者の能力を高く買ったという話だ。文大統領は当初、キム・ジンピョ共に民主党議員を首相候補者として検討して失敗に終わり、これといった代案を探すことができなかったものと見られる。丁候補者の“経綸”には異論はあまりないが、“斬新さ”が欠けているという点は否めない。文大統領が主要職の人選で国民に期待と希望を与える新しい人物を抜擢することができず、なじみのある人物を中心にして終わるのは問題だ。
丁候補者の指名をめぐる三権分立の議論は、簡単に見過ごせることではない。自由韓国党は「三権分立を破壊して議会を侍女化するとの独裁宣言」と激昂した反応を見せた。チョン・ジョンベ代案新党議員も最近、「維新独裁時代にでもありそうな発想」と反対の意思を明確にした。首相には国会の承認が必要なだけに、議論は避けられないものと見られる。ただし、三権分立の議論があまりにも形式の論理にだけ偏ってはならない。大統領中心制国家で元職の国会議長が行政府を率いると議会の権威が落ちるという指摘は全面的に妥当だが、一方では名実共に「責任首相制」に進む道になる可能性もあるのではないか。国会人事聴聞過程で激しい議論が必要だろう。
丁候補者は「経済危機と国民統合に力を注ぐ」として「私が適切なのか悩んだが、国民のためにできることがあれば、(首相になることを)問い詰められないこともあるのではないかと判断した」と述べた。 紆余曲折の末に指名されただけに、丁候補者は人事聴聞過程で政権後半期を安定して導いて行く首相の姿を国会と国民に見せなければならないだろう。