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[社説]セウォル号の人命救助過程の穴、解明を

登録:2019-11-01 03:41 修正:2019-11-01 07:21
31日午前、ソウル中区ポストタワーで開かれた「セウォル号惨事における救助・捜索の適正性調査内容の中間発表記者懇談会」で、セウォル号惨事の犠牲者遺族たちが涙を流している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 発見時には脈があったにもかかわらず、すぐに病院に移送されずに死亡したセウォル号の犠牲者がいたという調査内容が31日に公開された。「加湿器殺菌剤事件と4・16セウォル号惨事特別調査委員会(社会的惨事特別調査委員会、以下「社惨委」)はこのような内容をマスコミに発表し、「構造の問題をさらに調査し、犯罪の疑いがあれば捜査要請などの措置を取る予定」と明らかにした。事件発生から5年半が経ってようやく明らかになったこのような事実に対して、衝撃と共に深いやるせなさを感じざるを得ない。私たちは「あの日」についてまだまだ多くを知らないということを改めて感じる。

 惨事当日の2014年4月16日午後5時24分、海の上で発見された檀園高校の生徒A君はその23分後、海洋警察の救急救助士によって死亡判定を受けたが、5分後に遠隔医療でつながった医師により再び生存判定を受けたという。救急救助士が測定した時には0%だった酸素飽和度が69%に上がっていたからだ。社惨委は最初の測定が間違っていたと考えているというが、より正確な調査が必要とみられる。医師が「生存」と判定したにもかかわらず、A君をヘリコプターではなく船を5回も替えながら移送したというのは理解し難い。現場の対応に問題があった可能性がある。

 A君が発見された後で現場には2時間で3機のヘリコプターが行き交ったという。このうち2機は西海(ソヘ)海洋警察のキム・スヒョン庁長とキム・ソクキュン海洋警察庁長(役職はいずれも当時)が乗り、去って行った。現場でどのような混乱があったかはまだ確認されていないが、惨事の現場において救助者移送より急がねばならないことなどあり得ない。当時の現場の正確な状況とともに、ヘリでA君を移送する決定がなぜなされなかったのか詳細に明らかにすべきだ。

 ただ、災難時の状況は平時の一般事故の現場と違ってすべてが極限の混乱の中にあるため、一般的な状況下のような決定や判断は行われ得ないという点には留意すべきだ。だが万が一、A君の蘇生の可能性を知りながらヘリを患者の移送に使わなかったのなら、指揮責任者の過ちを厳しく問うべきだろう。

 社惨委がこの日の発表を「中間調査結果」と表現したように、まだ追加または補完すべき部分が多く残っている。調査権限の限界も大きいだろうが、社惨委はひたすら真実を明らかにするという姿勢で、冷静かつ緻密に調査を続けるべきだ。社惨委の使命の中には、検察の捜査では実現が期待できない事柄もある。そのひとつが「安全な社会づくり」だ。惨事の予防と体系的な構造の再構築にも力を注いでくれることを期待する。

 社惨委の発表により、セウォル号の家族は再び言いようのない大きな悲しみに沈んだ。にもかかわらず、惨事の徹底した真相究明だけが自分たちのような被害者を再び出さないようにする道なのだという信念によって、何とか苦しみに耐えている。真相を究明すればそれだけ韓国社会は安全になるだろう。ゆえに、いたずらに「セウォル号疲労感」などと口にしてはならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/915366.html韓国語原文入力:2019-10-31 18:48
訳D.K

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