映画『82年生まれキム・ジヨン』が封切り6日目に観客動員数が110万人を超え、善戦している。3年前に出た同名のベストセラーがなにしろ「フェミニズム論争」のど真ん中にあった作品で、封切り前から議論の的となっていただけに、今の盛況はより意味がある。それだけこの映画を自分の話として共感する人が多いという証だろう。
作品中の30代のキャリア断絶女性キム・ジヨンの人生は、職場をやめて育児にかかりきりになるしかない多くの韓国社会の女性の姿と大きな違いはない。韓国は、日本と共に女性の就業率が年齢によってM字曲線を描く代表的な国だ。既婚女性(15~54歳)900万人あまりのうち非就業者の割合は38.4%だが、そのうち結婚・出産・育児などの理由で職場を辞めたキャリア断絶女性は半分を超え、その中でも30代は73.4%と圧倒的だ。韓国で法的に男性も育児休職の取得が可能になったのは1995年であるにもかかわらず、今も利用比率は8.5%に過ぎない。制度やシステムだけが問題なのではない。子どもを連れてきた専業主婦を「マムチュン(ママ虫=母親を害虫のように卑下する意味のスラング)」と見る視線、能力があっても女性の昇進には限界があるなど、「空気のような差別」が私たちの周辺に依然として存在していることを否定できる人は多くないだろう。
しかし、この映画はこうした差別を「攻撃的」に暴露してはいない。ジヨンの周囲の人物も悪人ではない。誰かはジヨンに、誰かは母親に、誰かは夫に感情移入できる「家族ドラマ」に近い。にもかかわらず封切り前に「フェミ映画」として無差別の「評点テロ」(レビューでわざと低い評価をつける行為)が起こり、封切り後には一部のネットユーザーがポータルサイトの映画レビュー欄に「偽」の名セリフを書き込み、これをオンラインコミュニティーで遊びのように消費する現象が現れているという。もちろん、映画に対する評価は個人の自由だ。しかし、ありもしない事実を作り出し女性嫌悪認識をあおる低級さの前に、憤りよりもむしろ哀れさを感じるほどだ。女性を描き出すことが中心ではあるが、世代とジェンダーを超えた「連帯と共感」の可能性を語るこの映画のメッセージが、韓国社会に広がっていくことを期待する。