国会のファストトラック(迅速処理案件)となった検察改革法案をめぐり、与野党の駆け引きが再び始まった。自由韓国党は予想通り反対の立場。捜査権の調整は論議できるが、「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は政権延長シナリオ」というナ・ギョンウォン院内代表の「分離」主張は、これまでの態度から見て、反対のための名分づくりにすぎない。
公捜処はこれまで何度も名前が変わってはきたが、検察改革の象徴的な存在だ。ムン・ムイル前検察総長も同意した。ユン・ソクヨル現総長も、公捜処を含む改革法案を受け入れる意思を明らかにし、任命過程でもこれを再確認している。
「チョ・グク捜査」以降、特捜部の一部縮小などを理由にファストトラックを大幅修正すべきとの主張が一部から出ている。ファストトラックに挙がった検察改革案はこの世で最も良い理想的な制度だから導入しようというのではない。当然、天から落ちてきたわけでもない。20年以上もの議論の結果を受け継ぎ、検察と警察の捜査力と現実的条件などを考慮し、法務部と行政安全部・大統領府などが身を削って妥協した結果だ。何よりも国会での小競り合いまで経た激しい法理・政治闘争の産物だ。検察の過度な権限を制限し、捜査機関同士で牽制・競争できる体制を作ることから始めようというのが根本的な発想であり、要点だ。
しかし、一部でこのような論議の過程と根本概念を排除したまま、理想論に近い主張を、それも表決期限を目前に控えた時期に蒸し返していることは、非常に遺憾である。クム・テソプ民主党議員らは公捜処に反対し、捜査権・起訴権の完全な分離を主張する。これまでの態度を見れば、他に意図のある主張ではないかもしれない。しかし、法案採決を控えた時期になっても、そのような主張に固執するのは理解し難い。公捜処法はファストトラックに挙げられた「ペク・ヘリョン案」と「クォン・ウンヒ案」を調整すれば良いだけのことだ。検察と警察の捜査権調整も、詰めの段階で警察側の主張が反映された内容など、部分的な修正の必要性はあるだろうが、根本の枠組みを揺るがせば調整は難しくなり得る。
「公捜処は特特特捜部」などというナ・ギョンウォン院内代表だけでなく、保守メディアなどでは「スーパー公捜処」などと言いなし、令状請求権と起訴権の剥奪まで主張しているようだ。とんでもない話だ。捜査機関同士の競争・牽制という構図によって改革を成し遂げるという構想の上で、できたばかりの公捜処が一定の地位を確保しなければならないのは当然だ。規模を縮小したとはいえ検察特捜部が依然として存在し、高位公職者に対する捜査はもとより、既存の腐敗に対する捜査権限などに加え、憲法が保障した令状請求権まで持つ状況で、公捜処を捜査権のみを持つ組職として発足させるなら、あってもなくても同じになってしまう。
ファストトラックに上がった改革案さえ、法務検察改革委が当初作った案より規模・権限ともに後退しているのだ。にもかかわらず多くの改革派が結局のところこれを容認しているのは、第一歩を踏み出すことが重要だという判断のためだろう。クム議員のように理想論を展開できないからではない。学者や政策専門家でもなく政治家、それもろうそく市民の責任を負った与党議員の主張としては度を越している。政治は道徳倫理の領域ではなく、結果責任の領域である。今の時点での彼の主張は、ややもすれば検察と警察間の対立を招き、改革法案自体を雲散霧消させる結果を招きかねない。単なる個人の考えと評価するには状況が厳しい。現検察改革案はやっとここまで来た。今回もだめなら、「ろうそく市民」の念願を色あせさせるだけでなく、与党も存在の意味を失うことになるだろう。