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ウクライナ政府と市民団体は、ロシアは占領地をより確実に掌握するために「親ウクライナ」勢力を摘発するとともに、強力な「ロシア化」作業を展開していると糾弾する。占領地のあちこちに設置された、住民の個人情報が記載された書類や携帯電話などを検閲する「審査検問所」で引き起こされる人権侵害に対しては、特に批判の声が強い。ロシアは東部の占領地とロシア国境一帯に検問所を大量に設置し、住民の移動経路を確認したり個人情報を検閲したりしている。
ウクライナの非営利団体「市民自由センター」で活動する政治学者のミカエロ・サバさんは、今月3日のハンギョレとのオンラインインタビューで、「占領地での検問は、ロシアに反対する人々を探し出すとともに、親ウクライナ勢力を排除するという目的がある」として「ロシア憲法にもこのような『フィルタリング』の過程を認める条項はない。それまで住んでいた場所にとどまりたければ、その人はロシアに反対していないということを立証しなければならない」と語った。しかしロシアの公式見解は、検問所での違法行為は存在しないというものだ。
検問は特に、戦争で荒廃した占領地を離れるために国境を越える住民たちに最も苛酷に行われるという。2022年4月に故郷のヘルソンを離れ、現在は2人の子どもと共にチェコに定着しているマリア・コザロワさんは、検問所で生き別れた夫のイバン・コズロウさんと3年も会えていない。今はウクライナ領土に戻っているが、ヘルソンは2022年3月にロシアに占領され、マリアさん一家も脱出を敢行した。マリアさん一家はクリミア半島を経てジョージアへと抜けることを考え、クリミア半島の検問所で審査を受けた。一家の悲劇のはじまる瞬間だった。
この時、イバンさんはロシア軍によって家族と引き離され、その後、マリアさんと子どもたちはイバンさんに会えていない。マリアさんは難民に認定されてチェコに住むことが決まってから、弁護士を雇って1年ほどつてをたどって夫の行方を探し、彼がクリミア半島の刑務所に閉じ込められていることを確認した。イバンさんの携帯電話を検閲したロシアは、彼がウクライナ軍にロシア軍の位置を知らせたとして、スパイ容疑などで懲役11年を言い渡していた。今月11日にハンギョレの取材にオンラインで応じたマリアさんは、「夫は電気ショックや眠らせない拷問などで心理的、肉体的に痛めつけられた。ヘルソンはロシアに占領されたといっても、彼らの領土として正式に認められたわけではなかった。ロシア刑法を適用しても11年はやり過ぎだ」と述べた。サバさんは、イバンさんのように裁判手続きを経て収監される例は少数に過ぎないとして、「大半は法的助力や宣告もなく、単に拘禁施設に閉じ込められているだけ」だと語った。市民自由センターは、占領地外の戦線や村から追放された人々を除き、現在までに約7000人が拘禁または収監されているとみている。
ウクライナのパスポートを使用する占領地の住民は、検問所でより厳しい審査を受けることになる。サバさんは「検問の過程が終わるとロシアのパスポートを取るよう圧力をかけられるし、ロシア国籍でないと占領地の外にある財産の売買もできない。脱出を望む人々は賄賂を渡すか、違法な脱出ルートを選ぶという危険を甘んじて受け入れているのが実情」だと語った。
激しい戦闘でインフラが崩壊した占領地の状況はさらに悪化している。サバさんは「ドネツクやルハンスクでは、18歳になった若者たちはロシア軍に徴集されている。ロシアのパスポートがないと医療施設の利用も制限される。工場や農耕地の近くにも地雷が埋まっているため、行くことすらできない。(占領地での)暮らしはウクライナやロシアより劣悪だ」と語った。