アサド政権が崩壊したシリアは、イスラエルやトルコなど周辺国家に引き裂かれている。
イスラエルとトルコは、アサド政権崩壊後の8日から自国の軍または代理勢力を動員し、シリア領土に進軍して占領する一方、大々的な空爆を行っている。
イスラエル国防軍(IDF)は10日、シリア各地をこの48時間で350回以上空爆したと発表。イスラエル軍はこの空爆が、シリア内の「戦略兵器の在庫の大部分」を目標に攻撃し、これらの兵器が原理主義者の手中に入ることを防ぐことが目的だったと明らかにした。また、前日の10日夜、アル・バイダとラタキアの港にあるシリア海軍の戦艦15隻を撃沈したと公表した。
これらの空爆は、イスラエル軍がゴラン高原東側のシリア領土に進軍して占領した中で実施された。イスラエル軍はアサド政権が崩壊した翌日の8日、シリア領域内に進軍し、ゴラン高原東側の緩衝地帯など400平方キロメートルを占領したと、ネタニヤフ首相が発表した。
イスラエルのメディアによると、イスラエル軍は現在、ゴラン高原の北側のシリア領土に駐留している。また、イスラエル軍はレバノンのラシャーヤ地域と接するシリア側の領土も掌握した。イスラエル軍が占領した地域は、シリアの首都ダマスカスからわずか40キロメートルの距離にある。
エジプト、ヨルダン、サウジアラビアは、イスラエル軍の侵入はシリアの混乱を利用する国際法違反だと非難した。トルコ外交部は、シリアに平和と安定の可能性が生まれる時にイスラエルが「占領者の精神状態を示している」と非難した。
だが、トルコもシリア北部で軍を動員してクルド人に対する爆撃を行った。トルコが支援する「シリア国民軍(SNA)」は8日以降、クルド人が主軸の「シリア民主軍(SDF)」と戦闘を繰り広げている。双方の戦闘でこの3日間で218人が死亡した。ロンドンのシリア人権観測所が明らかにした。同団体は、トルコの支援するシリア国民軍がマンビジュでシリア民主軍に攻勢をかけ、両側で少なくとも218人が死亡したと説明した。
クルド人のシリア民主軍もアサド政権崩壊後、シリア北東部のデイル・アル・ズールおよびユーフラテス川西側に進駐し、シリア政府軍に取って替わった。シリア民主軍は米国が2015から2019年までイスラム国家(IS)撃退のためにクルド人を動員して武装させた組織。クルド人はトルコおよびシリアからの分離独立を追求しているが、トルコはこれを自分たちの最も大きな安保懸念事案として設定し、対処している。
イスラエルとトルコは、アサド政権崩壊により勢力の空白が生じたシリアで自分たちの利害のために領土占領などを強行している。特に、イスラエルは進軍したシリア地域を長期占領することを表明している。
イスラエルタイムズによると、イスラエルの高官らは、イスラエル軍が侵攻して占領したこの緩衝地帯に関する協定の無効化を図っているという。同紙は、イスラエル軍の兵士が「シリア内の問題の展開によっては長期間」この新しい占領地帯を守ることになりうると伝えた。イスラエル・カッツ国防相は、シリア南部に防衛地帯の設置を意図していると明らかにした。同国防相は、シリアにテロが根付くことを防ぐために、恒久的なイスラエルの駐留がなくてもシリア南部で武器とテロの脅威にさらされない防衛地帯を作ると述べた。