本文に移動

ロシアは優位に・西側は疲弊感…ウクライナ、路上で徴兵まで

登録:2024-07-18 05:06 修正:2024-07-18 17:52
二つの戦争(下)ウクライナ戦争 
ロシアは経済成長のもと、戦線拡大に乗りだす 
西側「撤退」世論が高まり、窮地に追い込まれる
戦場で死亡したウクライナ兵のエドゥアルド・ハトムリンさんの母親のニナさんが5月6日、首都キーウの独立広場で行われたハトムリンさんの葬儀で、棺を覆っていたウクライナ国旗を握りしめ、涙を流しながらキスをしている=キーウ/AP聯合ニュース

<2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻戦争に続き、2023年10月7日に発生したパレスチナのガザ戦争は終わらず、国際社会を冷戦終結後最大の陣営対決と混乱に追い込んでいる。転換点に入ったウクライナ戦争について、ガザ戦争に続いて点検する>

 14日、ウクライナの首都キーウ郊外で、軍事警察が通りすがりの男性たちを捕まえた。遠くにいた男性たちは近くの商店や別の道に逃れた。

 ロイター通信が報じたこのような「路上徴兵」の場面は、ロシアの侵攻を受けているウクライナが直面する兵力不足現象を端的に示している。ウクライナは5月、徴兵の下限年齢を27歳から25歳に下げる内容を骨子とする兵役法改正案を可決した。60歳から25歳までのすべての男性を徴兵できるこの法律によって、年末にまで20万人の兵力を追加する計画だ。

 ワシントンの欧州政策分析センターは、ウクライナ政府の20万人補充計画は「希望事項」に過ぎず、訓練と前線配置はさらに大きな問題だと指摘した。

 ウクライナの人口は4300万人だが、外国に逃れた避難民やロシア系住民などを除いて計算すると、徴兵可能な男性人口は300万人に過ぎない。すでに100万人が徴兵されている。残りも相当数は健康上の問題などによって徴兵が不可能だったり、他の必須職種に勤務しなければならない。

 戦争に対する国民の不満も高まっている。男性たちは徴兵を逃れようと賄賂を渡して国外に逃れ、キーウでは約20万人の男性が徴兵官を避けるアプリを使っていると、BBCなどが最近報道した。

ウクライナの戦況の変化 資料:米国戦争研究所//ハンギョレ新聞社

 ウクライナ戦争も5月から新たな局面に入った。ロシアは、ウクライナのハルキウや東部のチャシフヤール、南部のヘルソンに向けて攻勢を強化し、占領地を少しずつ拡大し始めた。特に、第2の都市ハルキウは陥落が目前に迫っていると評されるほど危機的だ。14日にもロシアはヘルソン南部のウロジャイネを再占領し、東部のチャシフヤール郊外では輸送路を遮断した。このような状況は、ウクライナ戦争がロシアの「占領地確保」に加え「緩衝地帯の拡大」の局面に入ったことを意味する。

2022年2月24日にロシアの侵攻で始まったウクライナ戦争は、キーウ陥落危機(第1局面、2022年3月)→キーウからロシア敗退(第2局面、4月)→ロシアによるドンバスなど東部戦線の占領(第3局面、5~7月)→ウクライナの反撃と東北部および南部奪還(第4局面、8~11月)→ロシアの戦略的防衛(第5局面、12月~2023年5月)→ウクライナの反転攻勢と失敗(第6局面、6~12月)→ロシアの攻勢転換(第7局面、2024年1月以降)を経てきた。

 軍事資源が劣勢なウクライナは、反転攻勢で成果を出そうとしたが、兵力と兵器を使い果たして新年を迎えた。ロシアは攻勢に切り替え、4月からは緩衝地帯の拡大を目的とした占領地の拡大作戦を展開している。

3日、ウクライナの首都キーウで肩章を着用した徴兵官が路上を歩いている/ロイター・聯合ニュース

 

 戦争が現在のロシア優位になった背景には、西側の戦略的誤判断もある。西側の対ロシア制裁は、期待ほどの効果を発揮できなかった。

 ロシアは西側の対ロシア制裁に参加しない「グローバルサウス」(北半球の低緯度と南半球の開発途上国)や中国との協力強化によって、西側の制裁に対抗している。戦争によって軍需産業が特需をむかえた状況まで加わり、ロシア経済は成長している。ロシアは昨年は3.1%の経済成長をし、今年は3.2%成長が予想されると、国際通貨基金(IMF)が指摘した。

 もちろん、戦時経済体制にともなう政府財政の支出がロシア経済の成長を主導しているため、長期的には否定的な効果が明らかだ。しかし、そのような否定的な効果がロシアに明確に現れるときまで戦争が続くのであれば、ウクライナが受ける被害は甚大だ。

 西側でもウクライナ支援に対する疲労感を訴える世論が強まっている。5月に発表された米国のピュー・リサーチ・センターが米国の成人を対象にした調査によると、回答者の31%は「ウクライナへの支援が多すぎる」と答えた。戦争初期の2022年3月には7%が「多すぎる」と答えたのに比べ、24ポイント増えた。

 3日に発表された欧州外交評議会(ECFR)の調査によると、ほとんどの国で支援増加は反対されている。支援増加の支持の割合が比較的高い国は、ポーランド(53%)、エストニア(45%)、スウェーデン(41%)、ドイツ(40%)程度だ。ブルガリア、ギリシャ、イタリアでは半数以上が兵器支援を「悪い考え」だと答えた。

 米国議会でウクライナ支援に懐疑的な代表的な人物とされるジェームズ・デービッド・バンス上院議員は、ドナルド・トランプ大統領候補の副大統領候補に指名された。欧州連合(EU)の議長国になったハンガリーのオルバン・ビクトル首相は最近、ロシアと中国を訪問し、ウクライナ戦争の仲裁者の役割を自認した。フランスの国民連合(RN)やドイツの「ドイツのための選択肢」などの欧州の右派ポピュリズム政党は、オルバン首相とともにウクライナ戦争交渉論を主張している。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1149536.html韓国語原文入力:2024-07-17 20:07
訳M.S

関連記事