来年から日本の中学生が学ぶべき教科書に「日本の植民地被害補償は韓国政府の役割」だとか、「強制動員の合法性」を強調するなど、歴史を歪曲する表現が新たに加わったことが確認された。日本の岸田文雄首相が「河野談話」を継承すると韓国国民に約束したにもかかわらず、その主な内容である「慰安婦の強制性」を叙述した歴史・公民教科書は14種のうち1種に止まった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が昨年3月、強制動員被害者賠償と関連して一方的な譲歩案を発表するなど、歴史問題を封印するような形で韓日関係にアプローチしたことで、日本教科書の歴史歪曲が一層露骨になっている。
日本の文部科学省は22日、来年から4年間使用する歴史・地理・公民など中学教科書の検定結果を発表した。韓国の市民団体「アジア平和と歴史教育連帯」と「アジア平和と歴史研究所」が、新たに検定を通過した中学の歴史8種、公民6種、地理4種、地図2種の教科書を分析した結果によると、至る所に歴史を歪曲する叙述が新たに加わっていた。
帝国書院の歴史教科書には、1965年の日韓基本条約と同時に結んだ協定で、日本は韓国に経済協力を行う一方、個人に対する補償は韓国政府に任せられたと記されている。当時の請求権協定で個人補償が韓国政府に委任されたというのは事実無根であるにもかかわらず、教科書に堂々と掲載された。アジア平和と歴史教育連帯のイ・シンチョル常任共同運営委員長は「尹政権が発表したいわゆる『強制動員解決案』を韓日請求権協定にまで拡大適用したもので、非常に深刻な状況」だと批判した。尹政権は昨年3月から、韓日関係の最大争点である強制動員被害者賠償について、最高裁で敗訴した日本企業の賠償金を韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」が肩代わりする「第三者弁済案」を強行している。
強制動員に関しては、これを否定したり、事実上合法であることを裏付けるような表現も加わった。帝国書院の歴史教科書には、強制動員についての説明で、日本は国民徴用令に基づいて動員したと記述された。強制動員が徴用という合法的な枠組みの中で行われたという日本政府の立場をそのまま反映したもの。同じ脈絡で山川出版社の教科書には「朝鮮人は日本に徴用、中国人は強制連行」と区分して記述するなど、朝鮮人は法律上問題がなかったことを強調した。日本の右翼史観を基に歴史を叙述し歴史歪曲で悪名高い「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)のメンバーが執筆した自由社の教科書は、韓国が根拠のない戦時労働者(徴用)問題など反日の姿勢を崩していないと表現するなど、強制動員を全面的に否定している。
日本軍「慰安婦」についての記述は、中学の教科書からほとんど消えている。歴史・公民教科書14種のうち「慰安婦」について直接的あるいは間接的に触れたのは3種(21.4%)に過ぎなかった。このうち、「慰安婦」動員の強制性を記述した教科書は、たった1種(学び舎)だった。
山川出版社の教科書には「慰安施設に日本、朝鮮、中国、フィリピンなどから女性たちが集められた」など、「日本軍慰安婦」という用語も使われなかった。育鵬社の教科書には、朝日新聞が2014年に過去の慰安婦報道の中で誤った部分を訂正し謝罪する部分だけを取り上げるなど、「慰安婦」問題が偽りだと主張する内容が含まれた。これは「慰安婦」動員の強制性を認め、歴史教育を通じて忘れないと宣言した「河野談話」(1993年8月)を無視したものだ。岸田首相は昨年5月、ソウルで行われた韓日首脳会談後の記者会見で「歴代内閣の立場を引き継ぐ」と明らかにした。
韓国の過去事清算運動を「反人権的」として貶める内容も新たに載せられた。自由社の公民教科書には、日本統治時代に日本に協力した朝鮮人の財産を国家に帰属させることが2005年に韓国の法律で定められたことに触れ、こうした人権問題について日本が韓国に確実な改善を求めるべきだという内容が記された。
独島(トクト)が「日本固有の領土」だと強弁する内容は、公民(6種)、地理(4種)の教科書にすべて掲載された。歴史教科書は4年前より1種が増え、6種に掲載された。
「アジアの平和と歴史教育連帯」と「アジアの平和と歴史研究所」は同日の記者会見で、「日本政府は植民地被害の賠償・補償に対するすべての責任を韓国政府に押し付け、すべての歴史問題は解決済みという立場を随所で示している」とし、「このような意図が教科書に反映されていることは非常に深刻な事態」だと批判した。さらに「日本政府のこのような態度は韓日関係の改善どころか、より一層激しい対立に追い込む危険性が高い」と述べた。