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「米、イスラエルのヒズボラ攻撃を積極的に阻止…勝利難しいと判断」

登録:2024-01-09 05:12 修正:2024-01-09 08:07
6日、イスラエル軍の空爆が加えられたレバノン南部のキアムで爆発の煙が上がっている=キアム/新華・聯合ニュース

 イスラエルはガザ地区での戦争初期からレバノンの武装組織ヒズボラに対する先制攻撃を検討していたが、米国が強く引き止めたという報道が出てきた。米国は、イスラエルが南側のガザ地区でハマス掃討戦を行うと同時に北側でヒズボラとの戦争に突入すれば、戦線が分散して勝利が難しいと判断し、戦争拡大に反対を続けていたということだ。

 ワシントン・ポストは7日、米国の政権関係者らの話を引用し、イスラエル政府が昨年10月7日にハマスの奇襲攻撃を受けた数日後、ヒズボラを攻撃するという提案をしていたと報じた。関係者らは、イスラエル政府がハマスの攻撃の背後にヒズボラがいて、ヒズボラの攻撃も差し迫っているという誤った情報を入手し、このような提案をしたと報じた。これを受けイスラエル政府内では、ハマスに続きヒズボラの攻撃のシグナルまで見逃す場合は大きな問題になるという懸念が提起された。

 米国政府の高位関係者は、イスラエル側のこうした動きに対して、米国は直ちに反対の意向を伝えたことを明らかにした。イスラエルがヒズボラを攻撃すれば、イランはもちろん他の武装勢力が介入する可能性が高いと判断したためだ。米国は、ガザ地区での戦争の初期にイランなどに戦争拡大をたくらむなと警告したが、その裏でイスラエルを引き止めていたということだ。ジョー・バイデン大統領も同様に、ベンヤミン・ネタニヤフ首相にこのようなメッセージを繰り返し伝えたという。

 米国がイスラエルにヒズボラとの正面衝突を避けるよう要求したのは、勝算が高くないとみているためでもある。米国の国防情報局は、イスラエル国防軍(IDF)がヒズボラとも衝突した場合、戦力が分散して勝利は困難だと評価した。

 米国側では、イスラエルがヒズボラと全面戦争を行えば、2006年のイスラエル・レバノン戦争より破壊的な結果が出るという観測を出している。当時、34日間の戦争では双方で1300~1500人が死亡した。ヒズボラは当時よりイスラエル領土により食い込んで攻撃する能力を備えていると評価されている。米国のシンクタンク「中東研究所」のビラル・サーブ氏は「レバノン側の死傷者は30万~50万人に達し、イスラエル北部では大規模な難民が発生するだろう」とワシントン・ポストに述べた。同紙は、ヒズボラがイスラエルの石油化学工場や原子炉を狙うこともありうると述べた。

 米国の政権関係者らは、ヒズボラとの小規模な衝突を起こしたイスラエルは、本格攻撃する意図を捨てずにいるとみている。ハマスの奇襲を防ぐことができず責任論に苦しめられているネタニヤフ首相が、政治的生存のためにも、強硬なアプローチを選ぶ可能性があるということだ。

 米国側では、1日にイスラエルがガザ地区から兵力数千人を撤収すると発表したことが、ヒズボラに対する攻撃準備の作業である可能性があるという疑いが提起されている。ガザ地区では兵力の運用に余裕ができ、ヒズボラを攻撃することが容易になったというわけだ。イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は5日、ヒズボラとの対立では「外交的解決」を望むとしながらも、その方法は限界点に達していると述べた。米国はヒズボラは本格的な衝突を望んでいないとみているが、ヒズボラの指導者のハッサン・ナスララ師は5日、イスラエルの攻撃に対する対応を公言した。ヒズボラは、2日にレバノンの首都ベイルート郊外でイスラエル軍のドローン攻撃によりハマスの政治局副局長らが死亡したことに対する報復として、6日にイスラエル領土に向けてロケット40発を発射した。この日のイスラエル軍の攻撃でヒズボラのメンバー5人が死亡した。

 バイデン大統領がアントニー・ブリンケン国務長官をふたたび中東に送り、イスラエルにレバノンとの国境問題を議論する特使を派遣したのも、イスラエルとヒズボラの衝突を防ぐためだ。ブリンケン長官は7日、カタールでの記者会見で「(ガザ地区での)衝突はたやすく転移する可能性がある」と述べ、戦争拡大を再度警戒した。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1123412.html韓国語原文入力:2024-01-08 19:52
訳M.S

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