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「日本で“韓国の本”でできるものはすべてやってみたいです」

登録:2023-11-22 06:12 修正:2023-11-22 09:00
今年5年目を迎えたK-BOOKフェスティバルのキム・スンボク実行委員長
2019年から「K-BOOKフェスティバル」の実行委員長を務めている韓国文学専門出版社「CUON」のキム・スンボク代表(53)=キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 「日本でどうすれば韓国の良い作品を紹介していけるだろうか、そう悩んでいるうちに生まれたのがK-BOOKフェスティバルです」

 韓国の本を日本に広く紹介する「K-BOOKフェスティバル2023」が26日まで日本全域で行われる。韓国国際交流財団と日本の「K-BOOK振興会」が共同主催し、韓国の日本の出版社、日本の書店、作家、編集者、翻訳家、読者らが参加する大規模なイベントだ。今年で5年目を迎える。初回の2019年から同フェスティバルの実行委員長を務めている韓国文学専門出版社「CUON」のキム・スンボク代表(53)に15日、日本の代表的な書店街である東京神保町で会った。

 「出版社を立ち上げた当初は、韓国の本を日本でたくさん出版することが重要でした。韓国文学の翻訳作品がどんどん増えてからは、こうした流れをどう繋げていくかが最大の悩みでした。答えは簡単です。書店でよく売れて、図書館にたくさん並べられるようにしなければなりません。そうしてこそ出版社が次の本を出すことができます」。キム代表は韓国関連書籍を日本の読者にもっと身近に感じてもらうため、日本の出版社や書店と手を組んだ。フェスティバルを機に日本の書店に韓国書籍コーナーを作り、様々なイベントで読者の関心を集める戦略だ。

 今回のフェスティバルには日本の書店約200店と韓日の出版社40社が参加した。韓国の本を買えば特製の紙袋としおり、韓国の本のガイドブックが付いてくる。フェスティバルのテーマは毎年変わるが、今年のテーマは「こえる」。「新型コロナウイルス感染症を“超えて”、韓国の本が好きな人たちにまた会いたいという意味が込められています。国境、言語、ジャンルを超えて本で共感を作るだけでなく、私たち一人ひとりにも越えてきたか、これから越えなければならない何かがたくさんあると思います」

 フェスティバル期間中、韓国の作家たちが日本の読者たちに直接会う時間もある。韓国を代表する詩人、キム・ソヨン氏とオ・ウン氏は今月21~26日、九州の福岡と熊本に続き、東京で「韓国の詩」をテーマに読者と対話する。25~26日、東京神保町では2日間、オン・オフ同時に韓流20年、作家との対話、クイズ大会、韓日作家対談などの行事が開かれる。

 キム代表のこのような努力が積み重なって、日本では韓国文学が定着しつつある。チョ・ナムジュ氏の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』は日本で23万部以上売れており、ソン・ウォンピョン氏の『アーモンド』は15万部以上の売上を記録した。キム・スヒョン氏のエッセイ『私は私のままで生きることにした』は58万部以上の売れ行きで、日本で韓国翻訳出版物の売上最多記録を打ち立てた。

 「大きく人気を集めた作品が出てきて、韓国の本の底辺が広がっているのが驚くべき変化です。小説やエッセイが依然として多いですが、最近は詩集や人文書もたくさん出版されています」

日本全域で韓国の本を知らせるイベント 
書店200店と韓日の出版社が参加 
キム・ソヨン、オ・ウンなど作家との対話も 
「韓流の影響で日本で韓国の本に関心が高まっている 
若者の認識の変化が類似したのも影響 
両国の作家が参加する文芸誌を構想中」

 出版大国の日本で韓国の本がどうして人気を集めるようになったのだろうか。「以前、韓国でも日本の映画、ドラマ、歌が人気を集め、結局文学へとつながりました。日本でも似たようなことが起きています。韓流が強いじゃないですか。それが積み重なり、自然に本へと関心が移ったようです」。キム代表は韓日の若者の認識の変化がかなり似ていることも人気の要因だと語った。「韓日の出版市場を見ると、フェミニズムや人生観など社会的流れと悩みがよく似ています。韓国文学の持つ独特の魅力もありますが、互いに共感できる内容であることが、韓国の本を手に取らせるのではないかと思います」

東京の大型書店「紀伊国屋」の2階にある「韓国コーナー」に多様な韓国作家の本が並べられている=キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 ソウル芸術大学で文芸創作を専攻したキム・スンボク代表は、1991年に日本に留学して定着した「ニューカマー」。日本大学で評論を学び、日本の広告会社で働いていたが、2007年にCUON出版社を設立し、韓国文学シリーズを翻訳し始めた。韓国の本を売って広く知らせるために2015年、日本の書店が密集している神保町に「CHEKCCORI(チェッコリ)」というブックカフェを開いた。ここを「サランバン(書斎や応接間として使われた交流の場)」にしてブックトークなど年に100回余りイベントを行っている。

 「実は留学が終わったら韓国で就職するつもりでしたが、(1997年末の)アジア通貨危機でそれが難しくなりました。日本で就職した広告会社も、好調だったものの(2007年の)米国発金融危機で仕事が激減し、かなりの打撃を受けました。その時『外部の要因で自分の人生が左右されるのはもう終わりにしよう』と心に決めました。自分の好きなことをしようと思って、一人出版社を立ち上げました」

 出版社を設立し、しばらくしてキム代表は日本全域で韓国の本が流通できるように市場そのものを拡大しなければならないと思うようになった。「最初は良い文学作品を日本に紹介しようと思って、うちの出版社のことばかり考えていました。しかし、日本の書店に韓国コーナーがないと本はなかなか売れません。その時から市場を大きくするために、日本の出版社に良い韓国の作品を紹介し始めました」。今は韓流ブームとあいまって日本の書店で「韓国コーナー」が急速に拡大した。

 キム代表が力を入れている分野は良い良質な翻訳者を探すことだ。2017年から毎年韓国の短編2冊を選び、「翻訳コンクール」(日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール)を開催している。受賞すれば本の出版につながり「翻訳者」としてデビューできるため、人材が集まる。応募者だけでも年間150~200人余りだ。「良い韓国作品をうまく翻訳することが本当に大切です。日本で韓国文学が定着したのは、韓国政府の支援も一役買っています。ただ、今は文学だけにとどまるのではなく、良い本だと思ったらジャンルに関係なく支援を行う方向へと変化が必要だと思います」

 「韓国の本の伝道師」として人生をかけたキム代表は昨年、がんを患い、生死の境をさまよったという。幸い手術が成功し、今は体がほぼ回復した。健康を取り戻し、新たな挑戦も構想している。「韓日の作家たちが同じテーマで文を書いて両国の読者が読めるよう文芸誌を作りたいです。年に1、2回発行できればと思います。韓国文学が日本で成長し、これが可能な時代になったのです」。キム代表は「韓国の本でできるものはすべてやってみたい」と語った。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1117265.html韓国語原文入力:2023-11-22 02:39
訳H.J

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