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2歳の息子を残して戦死したロシア兵士の日記「殺したくない、誰も…」

登録:2023-07-25 07:23 修正:2023-07-25 08:26
31歳の兵士が家族に送る手紙の形式で書いた日記 
「私は帰らなければならない、生き残らなければならない、帰らねば」
20日(現地時間)、ウクライナのドネツク地方で、ウクライナ兵士がロシアのミサイル攻撃で破壊された建物の廃虚の間を歩いている/EPA・聯合ニュース

 「誰も殺したくない」

 昨年2月にウクライナを侵攻したロシアの動員令によって最前線に投入され戦死したロシアの兵士が書いた日記が公開された。

 22日(現地時間)、英国の日刊紙「タイムズ」の日曜版「サンデー・タイムズ」は、昨年11月、ウクライナのドネツク地方の戦線に投入され戦死したモスクワの建設労働者ビタリー・タクタショフさん(31)の日記の一部を公開した。

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プーチンの戦争で未来を破壊された若い家族

 妻と2歳の息子を残して戦争に動員されたタクタショフさんは、昨年11月末から今年1月初めまでの約1カ月の間、ほとんど毎日青い小さなノートに家族に残す手紙の形式で日記を書いたという。サンデー・タイムズは、タクタショフさんの日記は、ウクライナ兵士らが死亡したロシア兵士の財布から発見して情報提供してきたと明らかにし、内容を公開した。

2022年11月29日(最前線の近くで過ごした初日)「家族みんなにとても会いたい、たくさん話をしたい。私たちはチェチェン軍の近くにいるが、夜は銃声が聞こえる。ドローンが飛び回り、大砲が動いているのを目撃した」

11月30日「恐ろしさで神経過敏になり、涙を流しながら文章を書いている。家に帰りたい。私のために祈ってほしい。(家族)みんなを本当に愛している。私は誰も殺したくない。すべての宗教が『人を殺すな』と教えているからだ。私たちも人を殺さず、彼ら(ウクライナ兵士)も私たちを殺さないように願う」

 タクタショフさんは、2018年に配偶者のエカチェリーナさんと結婚した。2人には息子が1人がいる。家族はモスクワ郊外の静かな町に定住したという。エカチェリーナさんのSNSには、夫婦が息子を抱きしめ笑みを浮かべる様子、クリスマスにショッピングセンターを訪れる様子、三輪車に乗った息子と一緒に公園に出かける様子、暑い夏の日に休暇を過ごす様子、雪が降る日に散歩する様子などが写真に残っているという。

 家族の幸福は動員令で消えた。ロシアは昨年9月、「予備役の市民だけを徴集対象にする」として動員令を下した。この動員令で約30万人が徴集された。条件は軍服務の有経験者だったが、サンデー・タイムズは、タクタショフさんの家族によると彼は軍隊経験がなかったと報じた。

今年1月、ウクライナの住民がキーウ郊外の都市で子どもたちの手を握り、ロシア軍の攻撃で破壊された地区を歩いている/ロイター・聯合ニュース
23日(現地時間)、ロシアのミサイル攻撃で被害を受けたウクライナのオデーサの大聖堂の内部を人々が片づけている/AP・聯合ニュース

12月4日「最悪の状況が発生し、私たちは最前線で『ゼロ』(最前線の終わり)に向かっている。私はあなたについてだけ考えている。私は帰らなければならない、生き残らなければならない、帰らねば」

2023年1月初め「私の心の中で、何かが起きているようだ。頭の中はめちゃくちゃで、周りの人や自分を撃ってしまいたい衝動的な気持ちになる。私はただ、愛するあなたのために持ちこたえていて、あなたに会うことだけを待ち遠しく思っている」

 タクタショフさんは、昨年11月末から1月5日まで、33ページにわたり戦場の時間を記録した。タクタショフさんは「本当に愛している、早く会いたい。2人目の子どもが欲しい。どうか待っていて」と書き、妻に対する思いを表した。当初はクリスマスに家に帰れるという噂が広がり、タクタショフさんは家族に会えるという希望を抱いていたようだ。

 だが、日記によると、タクタショフさんは逆に最前線により近い場所に送られたとみられる。休暇についての噂が広がり、2023年の新年のカウントダウンをする間、タクタショフさんは自ら命を絶つ衝動に苦しめられたと書いた。タクタショフさんは足を折って家へ帰る計画を立てたりもしたという。

1月上旬「今日私は木を切っていて、足の骨を折ってここから脱出し帰りたいと考えた。ブーツを脱いで丸太に足を載せ、折って準備さえすれば。そうすれば、3~6カ月の間は治療を受けるだろうが、私が故意にそうしたことを証明できる人は誰もいないだろう。もうここには戻らない」

 サンデー・タイムズは「私たちが発見したのは、プーチンの戦争によって未来が破壊されたある若い家族」だったとして、「これは、ロシア兵士は重武装をして戦闘に専念し勝利しているというクレムリン(ロシア大統領府)の宣伝を覆す内容」だと報じた。サンデー・タイムズは「兵士になることを強要された父親と兄弟たち数千人が、家から遠く離れた野原と塹壕で倒れている」と報じた。

イ・ジュビン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1101479.html韓国語原文入力:2023-07-24 22:45
訳M.S

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