国連の定める世界人口デーは7月11日。50億人を突破した日を記念して制定されたものだ。1987年のことだ。それから35年が過ぎた2022年11月、世界人口は80億人を突破した。
このような流れはいつまで続くのだろうか。国連の人口報告書によると、世界人口は2037年に90億人を超え、その後も増加を続ける。2086年にようやく104億人でピークに達し、2100年までこの水準が保たれるだろうという予測だ。
しかし、社会経済的要因が複合的に絡み合うことで、予測に反する人口変動が相次いでいる。世界人口1位の中国が予想より10年早い2022年に人口減少を迎えたのが代表的な例だ。韓国の人口減少も予想より8年早い2021年にはじまった。
世界経済がこの50年間の流れを保てば、世界人口は30年以内にピークを迎えるだろう(Earth4Allシナリオ1)とする新たな予測が発表された。2050年の86億人でピークに達して減少に転じ、2100年には70億人まで減るという見通しだ。
特に、世界各国が5つの政策を展開するケースでは、世界人口は2040年に85億人でピークに達し、2100年には60億人ほどにまで減少するだろう(Earth4Allシナリオ2)と予想される。研究陣が「大跳躍(Giant Leap)」と名付けた5つの政策は、貧困の削減、不平等の緩和、女性の地位向上、持続可能な食糧システム、清浄エネルギーへの転換。このシナリオにおいて人口の流れに最も大きな影響を及ぼすことになる動力は、2060年までに極貧層がいなくなること。報告書の予測どおりなら、1960年代末にポール・エーリックが警告した「人口爆弾」は爆発しないわけだ。
今回の報告書は、国連を含む他の人口予測とは人口ピークの規模に大きな差がある。例えば、女性の教育成就度を重視するオーストリアのヴィトゲンシュタイン・センターは、2070年に94億人でピークに達し、2100年に90億人を下回ると予測している。米シアトルのワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)は、これに加えて女性の保健衛生、避妊などまで計算に入れた予測で、世界人口は2064年の97億人でピークに達し、2100年には88億人へと減少すると見込んでいる。
今回の報告書で用いられたEarth4All(アース・フォー・オール)モデルは、さらに食糧生産、所得、租税、エネルギー、不平等、教育のようなより複雑な社会、経済、環境要因が追加されている。
研究陣は、他の人口予測は経済発展の重要性を過小評価しているのに対し、今回の予測は人口増加と経済発展、そしてこれらの間の関連性を同時にシミュレーションした結果だということを強調した。
研究を率いたノルウェー経営大学持続可能性センター所長のペール・エスペン・ストークネス(Per Espen Stoknes)教授は「特に低所得国において、経済発展は出生率に大きな影響を及ぼす」、「女性の学歴と経済力、保健衛生の水準が改善されれば出生率は下がる」と語った。
今回の分析はサハラ以南のアフリカ、中国、米国などの世界10地域を対象にした。現在、世界人口の増加の流れはアンゴラ、ニジェール、コンゴ民主共和国、ナイジェリアのようなサハラ以南のアフリカ諸国と、アフガニスタンを筆頭としたアジアが主導している。
研究陣は、世界人口の増加を主導するこれらの国々がこのような政策を導入して経済発展を遂げれば、人口は近いうちにピークに達すると予想する。
しかし研究陣は、これらの国の出生率の低下だけでは、すでに深刻化している地球環境問題は解決できないと警告した。
人口減少はまた、韓国、日本などで見られるように、高齢化による労働力減少などの新たな問題を引き起こしうる。
報告書は、地球の自然システムの最大収容能力を示す「惑星限界(planetary boundaries)」と人口との関係も分析した。「惑星限界」とは、ヨハン・ロックストームを中心とした科学者グループが2009年に提示した概念だ。彼らは人類の持続可能な生存を支える地球のシステムを9つに区分し、それぞれの限界を定義した。国連砂漠化対処条約(UNCCD)が発表した報告書によると、9つのうち4つが限界をすでに超えている。限界を超えたのは、気候変動▽生物多様性の損失▽土地利用の変化▽窒素とリンの循環だ。まだ限界に達していない残りの5つは、淡水利用▽海洋の酸性化▽化学物質汚染▽オゾン層の破壊▽大気汚染だ。
しかし研究陣は、通念とは異なり、気候変動のような限界超過を招いた主な要因は総人口規模ではなく、世界の上位10%の富裕層による過度なカーボンフットプリントだと主張する。
研究陣の一員であるノルウェーのクリスティアーニ大学のベン・カレガリ教授は「現在、人口が最も大きく増えている地域は、数十年前に人口がピークに到達した地域と比較すると1人当たりのカーボンフットプリントが非常に小さい」と語った。同氏は「今回の研究は人口爆弾が爆発しないということを物語っているが、私たちは依然として深刻な環境問題に直面している」、「人口より大きな問題である現在の過消費および過剰生産パラダイムを解決するためには、さらに多くの努力が必要だ」と語った。
今回の報告書は、グローバル・チャレンジ財団(Global Challenges Foundation)のEarth4Allプロジェクトの研究陣がローマクラブの依頼を受けて作成したもの。Earth4Allは、資源の限られた地球において平等な未来を達成するために必要なシステムの変化を進めることを目標としている国際研究組織だ。ローマクラブは世界経済が高度成長期をおう歌していた1970年代初めに、人口過剰、資源の枯渇、環境汚染を警告する『成長の限界』と題する報告書を発表し、世界的な名声を得た非営利のシンクタンクだ。