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元NATO軍司令官、「ウクライナ、このまま行けば来年初めに勝利する可能性も」

登録:2022-11-25 06:34 修正:2022-11-25 11:42
ベン・ホッジス元NATO軍司令官インタビュー 
「米国など積極的な支援が続けば…ヘルソン・ハルキウが関門」
2022年11月18日(現地時間)、ドイツのベルリンで会ったベン・ホッジス元司令官=ノ・ジウォン特派員//ハンギョレ新聞社

 2月末にロシアのウクライナ全面侵攻で始まった戦争が、24日で10カ月目を迎えた。ウクライナは韓国に匹敵する領土全体の6分の1(17日基準で10万5189平方キロメートル)をロシアに奪われた状態だ。だが、3月末~4月初めのロシア軍のキーウ撤退と9月のウクライナ軍の大反撃により、戦争初期の3月末(13万3179平方キロメートル)に比べて状況が好転した。11日には南部の要衝地ヘルソン市の奪還という戦略的成果を上げた。

 現在の戦況を西欧の軍事専門家はどうみているのだろうか。本紙は18日、ベン・ホッジス元北大西洋条約機構(NATO)軍司令官(64・米陸軍中将)に会い、現在の情勢と今後の展望について聞いた。ホッジス氏は、ロシアがクリミア半島を強制合併した2014年3月にはNATO軍最高司令官(2012~2014年)を務めており、2017年まで駐欧州米軍司令官を務めた。ホッジス氏は、米国などの積極的な支援が続けば、ウクライナ軍が来年初めに、2014年3月に奪われたクリミア半島など南部領土を取り戻す攻勢に入る可能性があるとし、楽観的な見解を示した。冬を迎えて戦線が膠着するときに双方が対話に乗り出すべきというマーク・ミリー米統合参謀本部議長ら米軍首脳部の立場とは、やや異なる見解だった。

―ウクライナが最近、ヘルソン市を取り戻した。

 「心理的な側面からみれば、今回のヘルソン市の奪還でウクライナ人の士気が大きく上がった。ロシアはヘルソン州併合を宣言した後、その州都のヘルソン市を失った。おそらく恥辱感を感じているだろう。様々な内部問題も発生していると思われる。軍事作戦の側面からみれば、9月にウクライナが反撃を開始した後、(南部の)ヘルソン、(北部の)ハルキウを取り戻した。ヘルソンに向かう「右ウィング」、ハルキウからイジュームに下りマリウポリに向かう「左ウィング」は最終的にクリミア半島に向かう。来年1~2月頃にはクリミア半島の奪還という最後の段階を始められるだろう」

―ウクライナが攻勢を続けるためには、引き続き米国と欧州の全面的な支援が必要だ。

 「数カ月前、共和党が公にこれ以上(ウクライナに)支援するのは難しいと言った時、非常に心配した。共和党がクレムリン(ロシア大統領宮)と同じ見解を示すのは生まれて初めて見た。ドナルド・トランプ元大統領と彼に従う数人の人々のことだ。幸い、彼らの大半が前回の中間選挙で敗れた。興味深いのは、ロシアがイランからドローンを供給され、北朝鮮から冬用軍服の提供を受けていることだ。これはロシアが相当追い込まれていることを物語っている。今回の戦争は私たち皆の意志にかかっている」

―戦争はいつ終わり、誰が勝つだろうか。

 「ウクライナの勝利を望んでいるのは言うまでもない。(米国と欧州の支援が続けば) 来年1~2月頃、クリミア半島の奪還という最後の段階を始められるだろう。ウクライナはすでに、ロシアが物資の供給を受けるクリミア大橋を爆破した。ロシアはすでにドニプロ川の裏側に後退している。 ヘルソンの修復で右ウィングがさらに前進しやすくなった。ただ、西側が現在のように支援を続けるという前提のもとでの話だ。もし西側が装備や財政などの支援を続けず、対ロ制裁を維持しなければ、戦争はさらに長引くだろう」

2017年6月16日(現地時間)、ベン・ホッジス米陸軍駐欧州7軍司令官(当時)がポーランドで開かれた北大西洋条約機構(NATO)のセイバーストライク(Saber Strike)演習の最終日、兵士たちと握手を交わしている/ロイター・聯合ニュース

―15日、NATO加盟国のポーランド領土にミサイルが落ちた。全欧州が戦争拡大を懸念したが、最初の報道から2時間後にツイッターの書き込みで「ロシアの意図的な攻撃ではないと思われる」と言及した。

 「まず、ロシアが意図的にそのような行為をする可能性はほとんどないと思われた。すぐに発覚する可能性がある。そのような行為はNATO加盟国、欧州連合(EU)諸国を攻撃しているように見える恐れがある。もし本当にそのような狙いがあったとすれば、ミサイルが落ちた地点はポーランド軍の装備がある基地など、何か価値のある場所であったはずだ。

 第二に、誰かの『ミス』だったという方が説得力があると思われた。ある映像を見たが、(ロシアが撃ったと推定される)巡航ミサイルをウクライナ軍が迎撃する場面だった。ところが、飛んできたミサイルはすべて消えず大きな塊のまま進んで落ちた。そのため、(ミスだという)シナリオの方が私にはより説得力があると感じられた」

―当初、ポーランド政府がNATO憲章第4条(相互協議)を提起するだろうというのが大方の予想だった。だが結局、第4条の発動要請はなかったという。

 「公式に第4条を発動したら、緊張を高める様相を見せたであろう。第4条は1949年のNATO創設以来たった7回しか発動されていない。(15日夜の首脳間通話を含め)様々な電話協議が行われ、すでに初期にどのような状況なのか明らかになった可能性がある」

―ポーランドに落ちたミサイルによってNATO憲章第5条(集団安保)が発動される可能性もあった。これは「第3次世界大戦」を意味するのか。

 「必ずしもそうではない。第5条は2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、1回だけ発動された。しかし、それは第3次大戦には飛び火しなかった。ただし第5条は、ある加盟国に対する武力攻撃をNATO全体に対する攻撃とみなすという内容だ。第5条は潜在的敵性国家が、例えばリトアニア、トルコ、ポーランドを攻撃したとすれば、これはNATO全体、すなわち米国やドイツ、英国などとの軋轢に広がりかねないという意味だ。この事実を敵性国家に想起させるために重要であり、また危険だ」

―ポーランド軍とNATO軍がポーランド領土に飛んでくるミサイルを探知したにもかかわらず、迎撃しなかった理由は何だろうか。

 「公開された情報によると、実際(ポーランド軍の)レーダーはミサイルがどこから飛んできたのかを探知していた。しかし、今回のことは課題が何であるかを示している。ミサイルは非常に速いスピードで飛んでくるし、対応する時間はわずか数秒だ。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の対応には数分が与えられるのとは異なる。ミサイルの探知には非常に多くのセンサーが必要であり、誰かは決定を下さなければならない。予め練習が必要なことがとても多い。我々の練習は十分ではなかったと私は思う」

2022年11月18日(現地時間)、ベン・ホッジス元司令官がドイツのベルリンで本紙記者にウクライナのヘルソン奪還の意味について説明している=ノ・ジウォン特派員//ハンギョレ新聞社

―ウクライナはポーランドを打撃したのがロシアのミサイルだと引き続き主張している。

 「ウクライナも少し態度を軟化させ始めた。9カ月間にわたり戦争が続いていた中で、『戦略的意思疎通のミス』と呼べるくらいのことが起こったのではなないかと思う」

―もしロシアがウクライナに発射しようとしたミサイルがポーランドに落ちたとしたら、NATOはどのように反応しただろうか。

 「ロシアがウクライナを攻撃しようとしてポーランドに外れたとしても、必ずしも緊張の激化につながるわけではない。何より望んでいるのは、現在同盟国が示しているように、クレムリンを糾弾することだ。なぜNATO加盟国の国境近くに向けてミサイルを発射するのか。何を得ようとしているのか。ロシアは危険水位を高めている。第二に、今回の事件によって、ウクライナの力を高めるための支援、すなわち高速機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)に搭載される射程距離300キロメートルの陸軍戦術地対地ミサイル(ATACMS)のような武器支援に対する障害物をなくすことができただろう。例えば、オデーサから300キロメートル離れたクリミア半島内にある目標物を打撃できるようにだ」

―米国と欧州がウクライナにさらなる防空システム支援を行うべきだと考えるか。

 「可能だと思う。(パトリオットの支援が)8カ月前に行われるべきだったと思う。 問題は、米国が持っているパトリオットシステムでさえ非常に限られていることだ。欧州全域で(パトリオットシステムを持つ)米軍部隊はただ一つだ。サウジアラビアにはとても多い。

 我々の持つ限られた資源をいかに配置すべきかの優先順位を考えなければならない。今回の事件は私たち皆に警鐘を鳴らした。2022年にロシアがアパート、ショッピングセンター、病院、オペラハウスのような民間施設にミサイルを発射するなど、誰が想像しただろうか。数億人の欧州市民を守るためには、私たちが思っていたよりも多くのことが必要だ」

ベルリン/ノ・ジウォン特派員お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1068626.html韓国語原文入: 2022-11-24 10:55
訳H.J

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