「普段の利用客の20~30%にもならない。みんな家で仕事をしているらしい」
21日午前8時50分、中国北京朝陽区の地下鉄望京東駅の改札口で、乗客の出入りを見守る駅員が語った。彼の話の通り、地下鉄の駅は普段より人が非常に少なかった。望京東駅の近くには、アリババや緑色集団、ポスコ中国、望京SOHOなど大企業や大規模なオフィスが多くあり、平日8時半~9時には出勤客で足の踏み場もない。しかし、この日は電車から降りる乗客は数十人程度しかいないようだった。駅前に用意されたシェアサイクルも、普段ならラッシュアワー時には見つけるのが難しいが、この日は100台以上が駐輪されていた。
そこから300~400メートル離れた朝陽区最大の事務地区「望京SOHO」も、やはりラッシュアワーにもかかわらず閑散としていた。小さな小売店で朝から販売している店員は「本当に人がいない。今後1週間は在宅勤務を行うということなので、店を開け続けるべきか悩んでいる」と述べた。比較的早く店を開けるスターバックスやラッキンコーヒーなどは、午前9時を過ぎても開店しなかった。
世界各国の大使館が集まっている亮馬橋近くのあるシェアオフィスは、この日はひとまず営業はしているが、利用者は極めて少なかった。シェアオフィスの管理者は「今日は利用者が本当に少ない。24時間以内のPCR検査の結果がある人だけ入ることができる」と話した。週末が終わった平日の道路だったが、走る車は少なく、様々なヘルメットをかぶり食事を配達する配達員と小さなトラックに物品をぎっしり載せた宅配員だけが忙しく動いている。
新型コロナウイルス感染症が急激に広がり、今年5月に続き北京はふたたび停止した。この日、北京衛生健康委員会が発表した20日時点での北京の新型コロナウイルス感染者数は962人で、過去最多だった。前日は621人で、わずか1日で300人以上増加した。先月末は10人前後に過ぎなかった感染者数が、わずか1カ月で1000人近くに急増した。
北京市は、この日から社会生活を維持する上で必要な施設を除き在宅勤務を勧め、公共機関を対象に、正しく守られているかどうかを確認する作業にも入った。北京防疫当局は、19日からは一部地域について飲食店内での食事禁止命令を出し、サウナや映画館、ヘルスクラブなども休業させるようにした。
1日の感染者数が1000人台に近づくと、北京市内の各所が封鎖されたが、以前のような大量封鎖は減ったものとみられる。記者が住んでいる朝陽区のマンションの場合、感染者が発生すると、該当の住民と同じエレベーターを利用する階だけを封鎖した。以前は1人の感染者が出ただけでマンション団地全体を封鎖した。現実を考慮して防疫強度を大きく下げたのだ。中国当局は11日、ゼロコロナを維持しつつ精密防疫に変える措置を下した。濃厚接触者と海外入国者に対する隔離規定を「7+3」(施設隔離7日+自宅隔離3日)から「5+3」に減らし、2次接触者に対する隔離をなくすなど、防疫規定を緩和した。感染者が発生していない地域については新型コロナの検査範囲を拡大せず、1日に2~3回検査をすることも禁止した。厳格な新型コロナ防疫による不満が社会全般で非常に強くなっていることにともなう避けられない措置だ。