世界保健機関(WHO)が23日(現地時間)、世界75カ国以上で感染者が確認されたサル痘に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。この宣言はWHOが下す最大水準の警報で、これを根拠に国際的なワクチン共有に必要な資金支援など各国の共同対応が可能になる。
テドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は同日、スイス・ジュネーブのWHO本部で記者会見を開き、このように明らかにし「私たちがほとんどわからない新しい感染のしかたでウイルスが急速に広がっている」と説明した。欧州はサル痘の危険性が高い状態だが、他の地域の危険は普通程度だと指摘した。テドロス事務総長は「緊急事態を宣言するが、この疾病は男性と性関係を持った男性の間で集中的に発生している」とし「烙印と差別はウイルスと同じくらい危険だ」と強調した。
サル痘は人間同士の密接な接触を通じて伝播するが、インフルエンザと似た症状を見せ、皮膚に膿がたまった水疱ができる。この感染症はこれまでアフリカの一部の地域だけで患者が発生したが、今年に入ってアフリカを旅行した人を通じて欧州など他の地域に急速に拡散した。ロイター通信は、これまでサル痘の感染者が世界75カ国以上で1万6千人発生し、死亡者はアフリカだけで5人発生したと報じた。感染者の98%は男性だ。
WHOの今回の緊急事態宣言は、専門家らの賛否が分かれる中、異例にも下された。WHOが21日に開催した専門家緊急委員会では、全15人の委員のうち6人だけが緊急事態宣言に賛成し、残りは反対した。ロイター通信によると、テドロス事務局長はこれまで専門家の意見に従ってきたが、今回は伝播速度が速く、ワクチンと治療剤の供給が不足している点を考慮し、緊急事態宣言を決めた。WHOが6月末に初めて専門家会議を開いた当時、全世界のサル痘感染者は3千人程度だったが、約1カ月の間に5倍以上に増えたと同通信は指摘した。
米ホワイトハウスの全世界流行病(パンデミック)対応本部長のラージ・パンジャビ博士は今回の宣言が「ウイルス拡散を防ぐための世界共同体の行動を促したもの」と評した。WHOは2014年のエボラウイルス、2016年のジカウイルスに対してPHEICを宣言している。現在は新型コロナウイルス感染症と小児麻痺に対してのみ、この段階の緊急事態を維持している。
一方、先月21日にドイツから入国した韓国人1人がサル痘の陽性判定を受けた後、現在まで国内の追加感染者はいない。これを受け、政府は新たな対策を打ち出すよりは、従来の対策を点検し、推移を見守る方針だ。政府は6月8日、サル痘を2級法定感染症に指定した。政府は患者のサル痘発生国訪問情報を医療機関に提供しており、第3世代天然痘ワクチンである「ジンネオス」5000人分に対する契約も進めている。疾病管理庁は、1週間以内に危機状況評価会議を開き、国内の措置状況を点検することにした。