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岸田首相、憲法に「自衛隊明記」の意思明らかに…右傾化加速するか

登録:2022-07-12 06:46 修正:2022-07-12 15:51
「安倍首相が情熱を傾けた難題に取り組む」 
自民党63議席など連立与党大勝 
改憲勢力4党で177議席、3分の2以上確保
今月10日に行われた参議院選挙で「大勝」を収めた岸田文雄首相が11日午後2時、東京の自民党本部で今回の選挙を振り返り、今後の政策方向を示す記者会見で話している=東京/ロイター・聯合ニュース

 「卓越したリーダーシップと行動力を持って導いてきた安倍元首相が暴漢に襲われ、命を落とす衝撃的な事件があった。安倍元首相が特に情熱を傾けてきた拉致問題や憲法改正などの難題に取り組んでいく」

 10日に行われた参議院選挙で「大勝」を収めた岸田文雄首相は11日午後2時、東京自民党本部で今回の選挙を振り返り、今後の政策方向を示す記者会見を開いた。自民党は選挙が行われた125議席のうち、単独過半数を超えた63議席、連立与党の公明党は13議席を獲得した。非改選議席を含めると参議院内の両党の議席は146議席(58.9%)で過半数、改憲に賛成する日本維新の会と国民民主党まで合わせれば177議席で、改憲発議が可能な3分の2議席(166議席)を大きく上回った。「歴史的な大勝」を収めたが、選挙を2日後に控えて無念の死を遂げた安倍晋三元首相のことを考えてか、40分間にわたる会見中、岸田首相の表情は明るくはなかった。

 「日本右翼の求心点」の役割を果たしてきた安倍元首相の死去以後、日本はどこに向かって進むのだろうか。同日の会見で岸田首相は、今後日本が進むべき方向を比較的明確に示した。

 まず関心が集まっている改憲については、安倍元首相が情熱を傾けてきた課題であることを繰り返し強調し、秋の臨時国会から本格的な改正作業に乗り出すと方針を明確にした。 岸田首相は「憲法改正は自民党結党以来の党是(党の基本方針)であり、今回も『早期実現』を公約に掲げて選挙を戦った」とし、「党是の実現に向け、国会での議論をリードしていきたい。秋に予定される臨時国会で今回の選挙で示された民意を受けて、与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待する」と述べた。

参議院選挙(10日)の結果 (単位:議席)//ハンギョレ新聞社

 改憲の範囲については、2018年3月に自民党が公開した4項目すべてが「現代的な課題」という認識を示した。4項目の中には、日本の交戦権と軍隊の保有を禁止した平和憲法の核心である「9条」を変え、自衛隊の存立根拠を明記する内容も含まれている。9条も改正対象であることを明確にしたのだ。岸田首相はさらに、「改憲は最終的に国民が決めることであり、全国的に各地で対話集会を開催するなど、国民の理解を得るための活動に積極的に取り組んでいく」と明らかにした。このため、今秋の臨時国会で9条改正などを積極的に議論し、世論喚起のために国民への説得にも乗り出すものとみられる。ただし「憲法を改正するかしないかにに3分の2賛成するのではなく、具体的な内容について3分の2の賛成を結集しなければいけない」と述べ、改憲勢力内でも意見の相違があることを認めた。それでも、「改憲の早期実現」を掲げた選挙で大勝を収めたうえ、「憲法改正に情熱を傾けてきた」安倍元首相の影響も重なり、戦後日本の平和主義を象徴した日本憲法の運命は文字通り「風前の灯火」となった。

 また、別の関心事である軍備増強についても、これまで推進してきた路線を引き続き維持する方針を確認した。岸田首相は「いわゆる反撃能力(日本が直接北朝鮮と中国などの敵基地を攻撃できる能力)を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討し、年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、日本の防衛力を5年以内に根本的に強化していく」と述べた。しかし、日本の国内総生産(GDP)の1%程度である防衛費(5兆4005億円)を「5年内に2%に引き上げる」という具体的な数値目標については、「防衛費増額は何が必要なのか内容と予算と財源は3点セットで考えなければならない」という慎重な立場を取った。これに対抗して自民党の高市早苗政調会長など安倍元首相の側近たちは「安倍元首相の遺志は憲法改正と国防力強化」だとし、「GDPの2%の防衛費」という目標を実現すべきだと強く主張している。

 下半期の政策推進過程で、自民党の強硬派と穏健派の間でかなりの対立が予想される。岸田首相はその他に、賃金引き上げなど分配を強調する自身の看板政策である「新しい資本主義」を具体的に実現し、新型コロナと物価高問題にも徹底的に対応する意向を明らかにした。このため、下半期には食料やエネルギーなど物価急騰に対する対策も発表する予定だ。

 安倍元首相の不慮の死が日本右傾化の「方向」を決めたわけではないが、その「速度」を加速化することは明らかだ。岸田首相は同会見の間、ウクライナ戦争とそれによる物価高などに触れ、「今、我々は重要な転換点にある」、「ポスト冷戦時代にふさわしい新しい国際秩序を作っていかなければならない」と重ねて強調した。このために日本が選んだ道は、改憲と軍備増強を通じて中国やロシア、北朝鮮などの脅威に対応することだ。岸田首相は「今、我々の前には多くの難題が山積している。我々は戦後最大級の難局にある。これを乗り越えるには平時ではない、いわば有事の政権運営が求められる」と述べた。日本の隣国である韓国にとっては、注視しなければならない「凄絶な」現実認識だ。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1050540.html韓国語原文入力: :2022-07-12 02:40
訳H.J

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