「日本はロシアから石油もガスも得られなくなるだろう」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の最側近であるロシア国家安保会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は5日、ソーシャルメディアに日本に対する警告文を載せた。米国が主導する対ロシア制裁に積極的に参加する日本が、ロシアからエネルギーを輸入できなくなるという「脅し」だった。木原誠二官房副長官は6日午前の記者会見で、この発言について「コメントを控える」と慎重な態度を示した。
2月24日の戦争開始以来、ロシアが取った行動をみると、この発言が「単純な警告」ではないことが分かる。ウクライナ侵攻以降、日本が西欧主要国と共に様々な制裁措置を取ったことを受け、ロシアはエネルギーや領土、外交、安全保障等、ほぼすべての分野で強い圧力をかけている。1956年の国交正常化以降、日ロ両国が積み上げた多くの成果が崩れ、脱冷戦後最悪の状況に突き進んでいる。米国の主要同盟国として対ロ制裁に足を踏み入れるしかない韓国にとっても「対岸の火事」とは言えない問題だ。
最も打撃が大きいのはやはりエネルギー分野だ。プーチン大統領は先月30日、世界最大規模の石油・ガス開発事業である「サハリン2」の運営主体を、新たに作るロシア法人に移管する大統領令に署名した。外国企業は新しい会社設立後、1カ月以内にロシア政府が提示する条件に従って株式を取得するかどうかを知らせなければならない。条件も問題だが、持分を要求してもロシア政府が同意するかは不透明だ。同事業にはロシアのガスプロム(持分50%)、英国とオランダの合弁会社シェル(27.5%)、三井物産(12.5%)、三菱商事(10%)が共同で参加している。シェルは3月に事業撤退を発表したが、ロシアへのエネルギー依存度の高い日本は当分維持することを決めたため、この措置は明らかに日本を狙ったものと言える。
日本が輸入する液化天然ガス(LNG)のうち、ロシア産は約9%に達する。この大部分が「サハリン2」から来る。天然ガスの供給先を短期間で替えるのは困難であるため、ロシアが供給を中止すれば、日本は大きな打撃を受けることになる。ロシアの代わりに短期契約(スポット)市場で購入する場合、最大2兆円の追加費用が発生すると予想される。ロシアがこの措置を持ち出したのは、日本が主要7カ国(G7)と北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席し、ロシア産の原油価格の上限制など新しい制裁に合意した直後だった。
戦争が始まった後、西欧とロシアはこの4カ月半間、制裁をめぐって熾烈な攻防を繰り広げてきた。日本政府は開戦直後、G7など国際社会と歩調を合わせ、ビザ発給の中止や資産凍結、輸出禁止などの制裁案をいち早く発表した。これを受け、ロシアも3月7日に制裁に参加した韓米日と欧州連合(EU)など48カ国を「非友好国」に指定し、本格的な対応に入った。同月21日、ロシア外交部は「現状況で日本と平和条約締結交渉を持続する意思はない」とし、千島列島南端の4島(日本名・北方領土)返還問題を含む平和条約締結交渉を中止すると宣言した。日ロ関係の最も敏感な部分を直撃したのだ。
攻防は外交官追放と漁業問題まで広がった。戦争の長期化に伴い、日本政府が4月にプーチン大統領など398人と28の団体を対象に資産凍結措置を発表すると、ロシアは日本外交官8人を追放し、岸田文雄首相など日本人63人に対して無期限入国禁止を決めた。先月7日には、1998年に日本と締結した漁業協定を一時停止すると発表した。同協定には、両国が領有権紛争を繰り広げている千島列島南端の4島周辺海域で、日本漁船がロシア当局に協力金を出し、割り当てられたクオータ内で安全に操業活動ができるようにする内容が含まれている。
軍事的に日本に圧力をかけようとする動きもある。ロシア軍艦10隻は3月10~11日、日本の本州と北海道の間の津軽海峡を通過して東海(トンヘ)に進入し、先月も軍艦5隻が北海道から沖縄まで日本列島の太平洋側地域を半周する姿が捉えられた。日本政府は「ロシアがウクライナに侵攻して発生した問題の責任を我々に転嫁するのは不当だ」と強く反発しているが、ロシアはこれといった反応を示していない。