ロシアのウクライナ侵攻が1カ月を過ぎ、プーチン大統領が望む戦争の「最終目的」は何かということについて様々な見方が飛び交っている。一部では、ウクライナの強い抵抗に阻まれたロシアが、首都キエフ(現地読みキーウ)制圧をあきらめ、東部ドンバス地域を確保する方向へと目標を修正したとの見方が出ているが、ウクライナ内部では朝鮮半島式の「永久分断」を試みるのではないかという懸念の声が出ている。
ロシアが戦争の目標をウォロディミル・ゼレンスキー政権の斬首(除去)から東部地域の確保へと引き下げたという主張の根拠になったのは、ロシア国防省の25日の記者会見だった。セルゲイ・ルツコイ作戦本部長はこの日、ウクライナ侵攻作戦の「第1段階の成果は達成された」とし、「今後、主要目標であるドンバス地域の住民解放に主要な力を集中する」と明らかにした。これをめぐり、一部の外国メディアは、ロシアが「ゼレンスキー政権交代」という目標をあきらめ、21日に独立を承認した東部ドンバス地域の二つの「自称国家」を支援することに力を注ぐという現実路線に傾いたのではないかという分析を示した。
それから2日後、ウクライナからは少し異なる脈絡の分析が発表された。ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ軍事情報部長は27日に発表した声明で、ウクライナ全体を飲み込む(swallow up)ことができなくなった「ロシアが、これまで占領したすべての地域を一カ所に集め、朝鮮半島でそうだったように『準国家のような実体』を作ろうとしている」と主張した。その根拠として、ロシアが「首都キエフでウクライナ中央政府を転覆しようとして失敗した後、主な作戦の方向を東部と南部に転換した」という点を挙げ、「彼(プーチン大統領)は恐らくウクライナに朝鮮半島のようなシナリオを考えているようだ。占領地域と非占領地域を分離しようとしている。ウクライナに韓国と北朝鮮を作ろうという試みだ」と懸念した。
実際、ロシアは戦争初期、空挺部隊と機甲戦力をキエフに集中させてゼレンスキー政権を倒し、一気に戦争を終わらせようとしていたが、事実上この目標の達成は難しくなっている。むしろ23日ごろからは、ロシア軍がキエフ付近から後退しているという報道が出ている。
それと同時に、ロシア軍は当初親ロシア武装勢力が一部を掌握していた東部地域を越えて、黒海に面した南部地域の攻略に全力を集中している。ロシアは21日、2014年3月に併合したクリミア半島と親ロ勢力が占領したウクライナ東部地域を連結することに成功したのに続き、南部の占領地域では単純な占領ではなく、永久統治を念頭に置いたような動きを見せている。一例として、ウクライナのザポリージャ州軍当局は26日、ロシアが占領した都市メリトポリでロシア支持を表明する集会が計画されており、別の占領都市トクマクでは、来月の4月から通貨をウクライナのフリブナからロシアのルーブルに変える計画が進められていると明らかにした。ロシアの「RIAノーボスチ」も同日、南部ヘルソンとザポリージャ州のロシア占領地域で、ロシア軍が既存の政府を解体し、新しい民軍合同政府を組織していると伝えた。この試みが成功すれば、ウクライナは黒海へとつながる通路の大半を封鎖され、内陸国家へと縮小することになる。
さらに一歩進み、親ロ勢力が作った「自称国家」ルガンスク人民共和国(LPR)のレオニード・パセチニク首長は27日、「近いうちに有権者が憲法的権利を行使し、ロシアの一部になることを支持するかを問う住民投票を実施する可能性がある」と述べたという。ロシアは2014年3月のクリミア半島併合の際にも、住民投票を大義名分として吸収作業を一気に終えた。そうなれば、ウクライナは英雄的な抗戦にもかかわらず、領土の相当部分を失う最悪の状況に直面することになる。