ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ東部のドンバス地方に対する軍事行動を開始したことで、危機を現実化させる段階に入った。ドンバス地方にいわゆる「平和維持軍」としてロシア軍を派遣するのは、名目上ウクライナの領土を侵犯することだ。
米国は素早く対応に乗り出した。米国のジョー・バイデン大統領は21日(現地時間)、プーチン大統領がドンバス地方の親ロシア派武装勢力の国家だと主張するドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を、「ずっと前に行うべきことだった」として、独立国家として認めたことを受け、両地域に米国人の貿易と投資を禁止する行政命令を下した。またホワイトハウスは「同盟およびパートナー国と調整している」とし、22日にロシアに対する追加制裁を発表すると明らかにした。
プーチン大統領の命令は、侵攻が差し迫っているという米国側の警告と概ね合致するという点で、ウクライナはもとより米国と欧州をさらに緊張させている。バイデン大統領やアントニー・ブリンケン国務長官、その他の高官らは、ロシア軍が2月中旬頃に行動を開始する可能性がある、あるいは核ミサイル実験で武力示威を行うかもしれないなどと警告してきた。また、ウクライナの親ロシア派武装勢力の実効支配地域で侵攻の名分にするため、(ウクライナ政府軍からの)攻撃をでっち上げる可能性があるとも述べたが、これを裏付ける情況も明らかになっている。「ガーディアン」は、ロシア国営放送が反軍地域のヤギ工場を爆破しようと侵入したウクライナ要員らを射殺した場面だとして放送した画面の音声を分析した研究者らが、2010年のフィンランド軍の訓練時に録音された爆発音だという結論を下したと報じた。
問題はロシアがどこまで進むかだ。米政府関係者らは、数週間前まではウクライナ国境地帯に集結したロシア軍が、脅威で譲歩を引き出そうとする意図があるかもしれないと分析していた。米国側はその後、ウクライナ領土に対する局地的占領を試みる可能性があるという見通しを示したが、最近はプーチン大統領が全面戦争を決心した可能性が非常に高いとみている。バイデン大統領は18日、ロシア軍が数日内に侵攻を開始すると確信していると述べ「彼らは280万人の罪のない人々が住むウクライナの首都キエフを狙う」と主張した。米政府高官らは、ロシア軍がキエフだけでなくウクライナ全域の主要ターゲットを占領する計画を立てたと語った。
米国側は、自国の異例の情報公開は、予め計画を暴露することでプーチン大統領の意志を挫き、注意を喚起させて国際的反ロ戦線を強化するためのものだと説明してきた。バイデン大統領も「我々はロシアが侵攻を正当化するために掲げるとみられる理由をすべて除去し、行動を阻止するため、彼らの計画について繰り返し警告している」と述べた。
侵攻説を否定してきたロシアの今回の行動は、米国の「情報戦」を無視して突き進む意志を誇示したものともいえる。ロシア軍が実際に砲門を開くなら、ウクライナに親ロ政府を樹立し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟など親西欧路線を捨てさせることが究極的な目的である可能性が高い。米国側の情報と展望の通りならば、ロシア軍は事実上ウクライナ全域を征服する戦略を練ったわけだ。プーチン大統領が21日の演説で「ウクライナは真の国家としての伝統がない」とし、「現代ウクライナは全面的にロシア、より正確にはボルシェビキの共産主義ロシアが作った」と述べ、ウクライナを国家として認めないという姿勢を見せたのも、全面侵攻の可能性を示唆する発言と見られる。ロシア軍がドンバスに進駐した場合、ウクライナ軍と距離が近くなり、意図的または偶発的な衝突の可能性も高くなる。ロイター通信は親ロシア派武装勢力が掌握した都市ドネツクで、プーチン大統領の発表後、戦車など軍事装備が移動したという目撃談があると報道した。
しかし、2014年にクリミア半島を併合した時よりもウクライナ軍の戦力が強化されており、ロシアも「費用」を考えざるを得ないという分析もある。ウクライナ正規軍を敗北させても、ウクライナ人の抵抗や国際的圧力を考慮すれば大きな負担だ。そのため、ドンバスに軍事力を配置して脅威をさらに強化する水準で米国などと妥協を模索することも考えられる。国際政治コンサルティング会社である「ユーラシア・グループ」のイアン・ブレマー代表は、親ロ共和国の承認で終わればNATO同盟国の隊伍も崩すことができるとし、「ロシアはウォロディミル・ゼレンスキー政権を追い出すためにキエフに進撃する電撃戦を敢行することはないだろう」と、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで語った。「一人のロシア軍兵力でも」ウクライナを侵犯すれば過酷な対応に出ると言っていた米国も、プーチン大統領の命令を侵攻と規定せず、事態の推移を見守る態度を示している。ロシアも、米国などの反応を見極めながら、行動のレベルと対話の可否を決めるとみられる。
親ロ共和国が主張する領土をロシアが全面的に認めるかどうかが、全面戦争に発展するかどうかを決めるカギとなる可能性もある。ドネツクとルクガンスク人民共和国の支配地域はドンバス地方の半分にもならないが、彼らは同地域全域が自国の領土だと主張している。ロシアが両共和国の実効支配地域を超えて軍事力を配置しようとした場合、ウクライナ政府軍との衝突が予想される。