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[ニュース分析]米国は中国を「核軍縮」のテーブルに引き込めるだろうか

登録:2021-11-18 04:25 修正:2021-11-18 09:47
サリバン補佐官「戦略的安定に関する議論を開始」 
中国、中途半端な反応で、目に見える結果の期待は難しい模様 
米国、2023年には東アジアに中距離ミサイル配備の見通し 
米中で成果が出せなければ、激しい対立は不可避の模様
米国のジョー・バイデン大統領(左側)が15日(現地時間)、ワシントンのホワイトハウスのルーズベルトルームで、テレビ会議による中国の習近平国家主席との首脳会談を行っている。今回の会談は1月のバイデン大統領就任の10カ月後に初めて開かれるのものだ=ワシントン/AFP・聯合ニュース

 米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席が15日(米東部時刻)、初のテレビ会議による首脳会談で、「戦略的安定」に関する議論の開始を検討することにしたと、ホワイトハウスが明らかにした。米国が中国を核軍縮のための対話のテーブルに引き込み座らせるために一歩踏みだすという意味だが、中国の中途半端な態度により、意味のある成果を得られるかは未知数だ。ただし、この議論の結果は、いかなる形であっても、朝鮮半島情勢に強い影響を及ぼすことは避けられない。

 米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は16日(現地時間)、ブルッキングス研究所で開かれたセミナーで、「バイデン大統領は習主席に、両首脳が指導し、安全保障・技術・外交にわたり権限を与えられた双方の高官級チームが導く戦略的安定の対話の必要性を提起した」と述べた。さらに「両首脳は、戦略的安定に関する対話を進展させ始めることを検討することで合意した」と述べた。「戦略的安定」は核のような戦略兵器による核戦争の脅威を減らすことで、米国とロシアの核軍備管理の対話でこの用語が用いられる。

 この発言は、司会を務めたブルッキングス研究所のジョン・アレン所長が、中国の核弾頭増強と極超音速ミサイルの実験などに言及し、「軍備管理の問題がさらに大きくなったが、米中がこのような問題をどのように扱うのかについての議論はあったか」と尋ねた際に出てきた返答だ。サリバン補佐官は「核軍備管理」を口にはしなかったが、応答の流れからは、両首脳が核を含む軍備管理の議論の開始を検討することにしたという意味だと読みとれる。ただし、会談結果を伝える両国の発表資料には、そのような内容は含まれていなかった。

 しかし、サリバン補佐官は、今回の対話は冷戦時代にさかのぼる“長い歴史”を持つ米ロの核軍備管理とは違うという趣旨で、「はるかに歴史が深く、より成熟したロシアとの公式の戦略的安定の対話とはまったく同じではない。米中関係ではその成熟度は低い」と述べた。さらに、「ここから、それを進展させるための最も生産的な方法を考えるのが、今の私たちの任務」だと述べた。中国との核軍縮のための極めて初歩的な議論を始めてみようという意向を表明した発言だと読みとれる。

米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が16日、米国のブルッキングス研究所でのテレビ会議セミナーで、前日に行われた米中首脳会談の内容について説明している=ブルッキングス研究所のウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 実際に米ロ両国は、核の脅威を減らすため、1987年に中距離弾道ミサイルの保有・製造・実験などを禁止する中距離核戦力全廃条約(INF)、1991年に核弾頭や大陸間弾道ミサイル(ICBM)などを削減する戦略兵器削減条約(START)、実戦配備の核弾頭の数を1550発以下に減らす2010年の新戦略兵器削減条約(新START)などを締結した経験がある。新STARTの期限終了を控え、2月に米国とロシアは5年間の延長に合意した。

 米国は「中国の浮上」が始まった後、この軍備管理の枠組みに中国を引き込むために努力を続けてきた。米ロ両国が条約で足止めされている合間を利用し、中国が様々な射程距離の中距離ミサイルを開発したからだ。中国はこの力を基に、韓国・日本・沖縄・グアムなどに実戦配備された米軍の戦力を脅かし、九州~沖縄~台湾を結ぶ第1列島線の内部への米国の空母などの接近を防ぎ、グアムなどの第2列島戦の内部での自由な動きを阻止するという「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を推進している。

 そのような状況変化を認知した米国は、2019年8月にINFから脱退した後、米国・中国・ロシアの3カ国を包括する軍縮の枠組みを作ろうと主張してきた。その一方で、自分たちも2023年から東アジアに中距離弾道ミサイルを配備するという計画を推進中だ。朝日新聞は7月、インド太平洋軍司令部が提出した予算要望書を分析し、「第1列島線に沿って配備される射程500キロ以上の地上発射型ミサイル網の構築だ。5年間の総額として29億ドルを計上」したと明らかにした。このミサイルを配備する候補地は、朝鮮半島、日本本土、沖縄などの南西諸島などにする以外はなく、計画が推進されれば、2016~2017年の「THAAD問題」とは比較にならない対立が起きる可能性がある。これに加えて、最近の米国からは、中国が2030年までに核弾頭を1000発まで増やすことができるという分析が出ており、昨年夏の極超音速ミサイルの実験以降は「スプートニクの瞬間」だという悲鳴があふれているなど、中国の核・ミサイル戦力の増強に対する警戒心が高まっている状態だ。

中国の短距離・中距離弾頭ミサイルの射程距離//ハンギョレ新聞社

 しかし、中国が米国の意図のとおりに核軍縮の交渉に乗りだす可能性はほとんどない。中国のある当局者は、ウォールストリート・ジャーナルに、双方は首脳会談でそのような対話の形式を決めなかったと述べ、非政府専門家が参加する「ツートラック」対話が一つの選択肢かもしれないという見解を明らかにした。サリバン補佐官が「会って話でもしてみよう」という習主席の発言を恣意的に拡大解釈した可能性もある。

 中国はこれまで、軍縮の枠組みに入るようにという米国の要求について、自分たちの核戦力は「防御的な需要に応じて核能力の開発を厳格に制限しており、誰の脅威にもならない」という一貫した立場を明らかにしてきた。実際、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の分析によると、中国の核弾頭は350発で、米国(5550発)、ロシア(6255発)に比べはるかに少ない。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1019722.html韓国語原文入力:2021-11-18 02:34
訳M.S

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