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岸田首相「分配なくして成長なし」新しい資本主義の実現掲げる

登録:2021-10-06 06:11 修正:2021-10-06 06:47
初の記者会見で「所得主導の成長」を強調 
量的緩和を基盤にしたアベノミクスから脱却 
所得増大のため賃上げと福祉拡大掲げたが 
財源調達構想には懸念の声も
岸田文雄新首相が今月4日、首相官邸で初の就任記者会見を開いている。岸田首相が同日打ち出したのは、経済成長のため分配の重要性を強調する「新しい資本主義」の実現だった=東京/AP・聯合ニュース

 「分配なくして次の成長はない。成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げていく」

 岸田文雄新首相が4日、就任初の記者会見で「新しい資本主義の実現」を強調し、このように述べた。韓国では韓日関係に直接的な影響を及ぼすことになる岸田政権の外交安保戦略に神経を尖らせているが、日本では「新しい資本主義」というスローガンの下、「分配」を重視する経済政策が話題になっている。

 岸田首相は会見で、自ら強調してきた「新しい資本主義」についてさらに具体的に説明した。 また「(経済)成長は引き続き極めて重要な政策テーマ」だとしながらも、「成長だけでその果実がしっかり分配されなければ、消費と需要は盛り上がらず、次の成長も望めない」とし、庶民や中小企業の所得増大のための賃金引き上げ、福祉拡大などを通じて共に経済成長の「果実」を分け合えるよう制度を改善すると明らかにした。9年近く日本経済を引っ張ってきた量的緩和を基盤にした「アベノミクス」から果敢に脱却し、岸田流の「所得主導成長」を推進していくことを目指すものとみられる。鈴木俊一新財務相も同日、記者団に対し「(首相から)分配と成長の好循環について話があった」と述べた。首相は具体的な政策検討のため、司令塔となる構想会議も設置する予定だと明らかにした。

 同日の会見内容を見ると、岸田流の「所得主導成長」の大まかな方向性が読み取れる。岸田首相は下請け企業などで働く人たちに成長の果実をきちんと分配できるよう環境を整え▽医療・介護・保育分野で働く人たちの賃金を引き上げ▽子育て世帯に住居費と教育費を支援すると述べた。これに比べ、安倍晋三元首相は「強い経済は日本の国力の源」とし、大胆な量的緩和▽景気浮揚のための機動的な財政政策▽投資促進のための成長戦略などの経済政策を展開した。

 もちろん安倍元首相も社会保障の拡大と賃上げなどに力を注いだが、当初期待した「経済の好循環」は実現しなかった。円安で輸出が伸び、大手企業各社の業績が回復し、株価は上がったが、物価変動を反映した実質賃金は横ばいか、前年より低い年が多かった。日本の厚生労働省資料によると、1世帯当たりの所得(中央値)は、1995年の550万円から2018年には437万円へと減少傾向にある。早稲田大学のパク・サンジュン国際学術院教授(経済学)は本紙との電話インタビューで、「自民党でも分配が重要だという流れはずっとあった」とし、「ただし今回、岸田首相は分配を全面に掲げている。安倍元首相とは政策方向が確実に変わった」と述べた。

 問題は「分配を通じた成長」を実現できる財源だ。岸田総理は国債発行と「金融所得」に対する税率引き上げなどにより財源を調達していくという構想を示した。日本の勤労所得税は最大税率が45%の累進税が適用されるが、株式売却の利益や配当に課す金融所得税は一律20%だ。金融所得は富裕層に集中しているため、これを引き上げることで、税収確保と格差解消の「二兎」を同時に得られるというものだ。しかし、懸念の声は依然として残っている。朝日新聞は「高齢化に伴い、社会保障費は年々膨れあがる。首相が政策を実現するために必要な財源は巨額だ」とし、「株式投資の魅力が下がることで株価の下押し圧力となることも懸念される。また、消費増税などに比べると、金融所得課税の強化で得られる財源は大きくない」と報じた。

東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1013961.html韓国語原文入力:2021-10-05 21:26
訳H.J

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