2030年には再生可能エネルギーである太陽光が、原子力を抜いて費用が最も安いエネルギー源になるという日本政府の見通しが発表された。政府次元の予測としては初めて、再生エネルギーは高く原子力は相対的に安いというエネルギー政策の前提が崩れたと評価されている。
朝日新聞は13日付けの紙面で、2030年時点で太陽光発電(事業用)が1キロワット時あたり8円台前半~11円台後半とし、原子力(11円台後半以上)より安くなるとの推算値を経済産業省が12日に発表したことを報じた。
原子力発電は、政府の試算のたびに費用が高くなっていることが明らかになった。2011年の試算では30年時点の費用が1キロワット時当たり8.9円以上だったが、2015年には10.3円となり、今回は11円台後半まで増加した。原子力はこれまで最も安いエネルギー源と認識されてきたが、少なくとも推定値基準として太陽光、陸上風力(9~17円)、液化天然ガス(LNG)火力(10~14円)に続く4位に下がる展望だ。
原子力の費用上昇には、安全対策と廃棄物処理が影響を及ぼした。2011年の福島原発事故後に規制が強化され、放射性物質の拡散防止などの工事が必要になり、事故時の賠償や廃炉費用なども増えた。また、使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物(核のごみ)問題も費用上昇の原因と指摘された。
一方、太陽光は技術革新と大量導入などによりコストが少しずつ下がると見通した。2020年の1キロワット時当たり12円台後半から、10年後の2030年には8円台前半~11円台後半に費用が下がると集計された。今回算出された費用は、発電所を作り十分に稼動させた後の廃棄までにかかる金額を総発電量で割った値だ。
同紙は「政府や電力会社は福島第一原発事故後も原発のコスト面の優位性を強調してきたが、前提が揺らぐ」として「政府が改定をめざすエネルギー基本計画にも影響しそうだ」と指摘した。
日本は太陽光や風力などの再生エネルギーを「主力電源」として現状より大幅に拡大させる計画を持ってはいる。だが、太陽光は夜間に発電できず、風力などは天候の影響を受けるとし、相変らず原発への依存度を拡大している。特に、日本政府は2011年の福島事故後に原発をすべて閉鎖することにした政策を覆し、再び稼動させている。現在は電力生産全体のうち約6%を占める原発を、2030年には20~22%まで引き上げる予定だ。
龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は、同紙とのインタビューで「(政府発表で)原発が経済性に優れているという根拠はなくなった」と話した。毎日新聞も「政府や電力業界が原発推進のよりどころにしてきた『安さ』の根拠が揺らいでいる。」として「安全性に続き、また一つ『原発神話』が崩れた」と評価した。