麻薬カルテルなどとの戦闘経験豊富
退役将兵が多く、雇用コストもあまりかからず
米軍が民間に業務を任せ傭兵として脚光
ハイチのジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件で、コロンビア軍出身の傭兵が改めて注目されている。
ハイチ警察によると、今回の暗殺の28人の容疑者のうち、コロンビア人は26人で大半を占めている。残りの2人のハイチ系米国人は、自分たちのことを「通訳」だと釈明しているという。彼らの話が事実なら、今回の暗殺団の戦闘員は全員がコロンビア人ということになる。このうち少なくとも17人はコロンビア軍の出身であることをコロンビア当局は明らかにしている。大半は2018年から2020年にかけて退役しており、出身階級は中佐から兵士まで様々だ。
なぜ、これほど多くのコロンビア軍出身者が傭兵として参加したのだろうか。今回の事件は、いかに多くのコロンビア軍出身者が全世界の紛争地域などで傭兵として活動しているかを示す端的な例だとAFPなどの国外メディアは伝えている。
コロンビア軍は戦闘経験が豊富で、傭兵市場で大いに歓迎されている。コロンビア軍は長い間、左翼ゲリラや麻薬カルテルなどの犯罪組織と戦闘を繰り広げてきた。米国イリノイ大学のジョージ・マンティラ氏は「コロンビア軍は非正規戦の経験が多い。兵士はよく訓練され、戦闘経験が多く、また傭兵として雇用する際の費用も相対的に安い」と語った。
コロンビア軍の兵力は22万人で、毎年数千人が進級ができなかったり問題を起こしたなどの理由で軍を離れる。彼らが傭兵市場に豊富な人材を供給する源泉の役割を果たしているのだ。コロンビア陸軍司令官のルイス・フェルナンド・ナバーロ将軍は「コロンビア軍出身者が傭兵として雇用され、他国に行くというのは古くからの問題。それを禁止する方法もない」とし「例えばアラブ首長国連邦のドバイにもコロンビアの軍人が相当数いる」と述べた。ジョン・マルランダ大佐は「毎年1万5000～1万人の将兵が退役する」とし「彼らはまだ若く、年金の恩恵もあまり受けられないため、より良い経済的機会をつかもうと考える」と述べた。
今回のハイチ大統領暗殺に参加したコロンビアの傭兵たちは、4社の派遣会社に雇用されていたことが調査で分かっている。今回暗殺犯として逮捕されたコロンビア軍出身のフランシスコ・ウリベの妻と名乗る女性は、コロンビアのラジオ放送に出演し、「夫は『CTU』という会社に月2700ドルの条件で雇用され、ドミニカ共和国に渡った」とし「夫はそこで有力な家門を守る警護員として働くことになったと話していた」と語った。彼女が語ったCTUとは、ベネズエラ出身のアントニオ・エマヌエル・イントリアゴ・ベレラが米国フロリダ州で経営する保安・警護請負会社だと「dpa」は報じている。
コロンビア軍出身の人々は、イエメンやアフガニスタン、イラクなどの武力が必要とされる所ならどこででも傭兵として雇用され、活動している。彼らの活動はメディアに複数回公開されている。
「ニューヨーク・タイムズ」は2011年5月に、コロンビア軍出身の数十名の傭兵が米国の保安・警護請負会社「ブラックウォーター」に雇用され、アラブ首長国連邦の重要施設の警備のためアブダビ空港に到着したことを報道している。ニューヨーク・タイムズは2015年にも、数百人のコロンビア人がアラブ首長国連邦で直接雇用され、イエメンでフーティ反乱軍と戦っているとも報じている。また2004年にはベネズエラ当局が、コロンビアの民兵隊153人を当時のウゴ・チャベス大統領暗殺計画に参加した疑いで逮捕している。
そもそもコロンビアの傭兵が脚光を浴びるようになったのは、2000年代以降、米軍が紛争地域である中東で要人警護などの一部の任務を民間会社に任せたことがきっかけとなっている。当時の民間への移譲は、任務遂行中に事故が起きた場合の責任を民間業者に押し付け、政治的負担を軽くできるということなどが考慮されたものだ。イリノイ大学のマンティラ氏は「人権侵害問題などが生じれば法的責任が傭兵個人に行く。国や契約した会社は責任を免れることになる」と述べた。
その後、米国、英国、フランス、ベルギーなどの民間会社が主にコロンビアなどのラテンアメリカ出身の傭兵を大量に募集し、紛争地域に提供する国際市場がブームとなった。
訳D.K
