在日コリアンの母親を持つ中学生がブログで差別を受け、「ヘイトスピーチ」を許さないとして起こした損害賠償訴訟で、一審に続き二審でも勝訴した。二審ではヘイトスピーチが悪質だとして、賠償額を増額した。
東京高裁は12日、「投稿は著しく差別的、侮蔑的で、読者に差別的言動をあおるもの。個人の尊厳や人格を損ない、きわめて悪質」とし、書き込みをした60代の日本人男性に対し、130万円の賠償を命じたと、朝日新聞が13日付で報じた。昨年5月の一審(91万円)より39万円増額した金額だ。高裁では特に「(中根さんは)当時、中学3年という多感な時期にあり、精神的苦痛は多大で成長に悪影響を及ぼしかねなかった」と強調した。
今年大学生になった中根寧生さんは、勝訴後の記者会見で「匿名の卑怯な差別を許せない」とし、「差別的な攻撃を受けている人たちに勇気と力になりたい」と述べた。
同事件は2018年1月に起きた。当時中学3年生だった中根さんは、平和を訴えるイベントに参加し、メディアに関連記事が掲載された。大分県大分市に住む60代の日本人男性は匿名で開設したブログで同記事を引用し、「在日という悪性外来寄生生物種の一派」、「見た目も中身ももろ醜いチョーセン人」など、中傷する書き込みを掲載した。中根さんは弁護人の助けを借りて同年7月、投稿した男性を侮辱罪で告訴したが、刑事裁判では9千円の略式命令が下されるのにとどまった。彼はあきらめず2019年3月、名誉毀損や侮辱、差別による人格権侵害などを理由に、この男性を相手取って300万円の慰謝料を請求する訴訟を提起した。加害男性は差別を認めず、謝罪も代理人からファックスで送られてきたという。
告訴と訴訟の過程は中根さんにとって容易なことではなかった。彼は今年2月、高裁で行われた意見陳述で、涙声でこう訴えた。「私は悪性外来寄生生物種でも、中身がもろ醜いチョーセン人でもなく、家族に愛されて、家族を大切に思って生きる人間です…書き込みを読んで、自分が否定され、地獄に突き落とされた気がしました」。 中根さんはまた、警察署で関連事実を陳述する際も「苦しくて泣いてしまった」と述べた。また「母が『私が朝鮮人だからこんな思いをさせてしまってごめんね』と言った」とし、「家族にとってこのことは一生消すことのできない、深い傷になると思う」と訴えた。
中根さんは記者会見で「差別を受けた被害者が裁判に訴えるのはとても大変だ」とし、「裁判をしなくても被害者を救済できる制度が必要だ」と強調した。