3日に統一30周年を迎えたドイツが、依然として東西ドイツ間の格差を解消できていない現実が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡散の地域ごとの差として新たに浮かび上がっている。
米経済誌『ウォールストリート・ジャーナル』は3日、旧東ドイツ地域のCOVID-19の感染は旧西ドイツ地域のそれよりはるかに少なく、これは東ドイツ地域が人口が少なく、産業施設が稀な農村地域であることと無関係ではないという指摘が、ウイルス学者や経済学者の間から出ていると報道した。
ドイツ保健省傘下のロベルト・コッホ研究所の発表した3日現在のドイツ16州のCOVID-19累計感染者数を見ると、旧東ドイツのメクレンブルク=フォアポンメルン州が10万人当たり76人で最も少ない。これはドイツ平均の357人の20%ほどだ。同様に、旧東ドイツのザクセン=アンハルト州は122人、ブランデンブルク州は174人、ザクセン州は181人、テューリンゲン州は194人だ。10万人当たりのCOVID-19感染者が最も多い南部のバイエルン州(529人)とはかなりの差がある。メクレンブルク=フォアポンメルン州は、COVID-19による死亡者も全国平均の10万人当たり11.5人の10%ほどの1.2人だった。人口10万人規模の都市である州都シュヴェリーンでは、これまで1人の死者も出ていない。
旧東ドイツ地域がCOVID-19の衝撃をあまり受けていない理由としては、外国旅行などによる移動が多くない低所得層や高齢者の人口が多く、産業施設や大都市などの、人口移動や接触が頻繁な地域も少ないことなどが挙げられる、と同紙は伝えている。経済的に立ち遅れている農村地域のため、より安全だという逆説的な話となっているのだ。昨年の旧東ドイツ地域の1人当たりの国内総生産は、全国平均の79%に過ぎなかった。旧東ドイツ地域の真ん中にあるベルリンを除けば平均の73%となり、格差はさらに広がる。
ロストック大学病院のウイルス学者エミール・ライジンガーは「東部地域の人々は外国旅行をあまりしないためウイルス流入が少なかったという指摘が、COVID-19拡散が弱い理由を最もよく説明していると思う」と指摘した。
一方、ドイツ連邦のシュタインマイヤー大統領はこの日、ブランデンブルク州ポツダムで開かれた統一30周年記念式で、「今日のドイツは史上最高のドイツ」と評した後、東西ドイツの経済格差にも触れた。大統領は、統一後の東ドイツ地域の市民の方がよりひどい激変を経験したとし「人々が不利益を永久に受けると感じれば、統合力が崩壊して政治不信が強まり、ポピュリズムと過激主義の繁殖地が増す」と指摘した。
ドイツの公共放送「ドイチェ・ヴェレ」も「統一して30年が過ぎたが、ドイツは経済以外にも多くの面でまだ分断状態にある」と指摘した。左翼党の政治家であり「ローザ・ルクセンブルク財団」を率いるダグマー・エンケルマンは、全般的に見れば統一の影響は肯定的なものだが「依然として不正義が存在している」と批判した、と同放送は報じた。