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[ルポ]「黒人死亡」抗議デモ、「私も息ができない」ホワイトハウス前で怒りの叫び

登録:2020-06-01 09:35 修正:2020-06-02 08:27
「人種差別の米国を変えよう」 
抗議デモ、約30都市に拡大 
AP通信「国防部、軍事警察投入を準備」
30日(現地時間)、米国市民がホワイトハウス前で先月25日に黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警察官に押さえつけられ死亡した事件の抗議デモを行っている。ある市民がフロイドさんが警察に鎮圧された時の様子を再現している=ワシントン/ファン・ジュンボム特派員//ハンギョレ新聞社

 「私の父さんと兄さんは殺されるんじゃないかという心配をせずに街を歩けない。もううんざりだ。私たちが変えなければ誰も変えられない!」

 土曜日の30日午後(現地時間)、米ワシントンのホワイトハウス前に集まった数百人の市民の中で、40代の非白人女性が叫ぶと、参加者たちは拍手で応えた。特に司会者はおらず、誰かがあちこちで「息ができない!」と叫ぶと、皆一緒に叫んだ。5日前、黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が、白人警官のデレク・ショービン(44)の膝に首を押さえつけられて死亡した事件に抗議するために集まったデモ隊の中から「正義なしには平和もない!」、「黒人の命も大事だ!」 などの叫び声が続いた。

 ハンギョレが現場で会った市民たちは「もう我慢できなくて飛び出した」と、怒りと絶望感を吐きだした。黒人男性のコミ・アクファローさん(29)は「黒人は毎日苦しんでいる。フロイドさんの死亡は黒人が米国で依然として二流市民という事実を見せつけた」と述べた。白人女性のカレン・ブラロブさん(75)は「2020年に米国でこんなことが起きたということが悲しく、腹立たしい。人種主義は人の心を変えなければならないので、私にできることがないと思っていたが、到底家にいられなくてここに来た」と話した。さまざまな人種、性別、年齢の参加者たちは、マスクをつけたまま正義を求めるプラカードを掲げた。同日、ワシントンのあちこちでホワイトハウスの近くに接近するデモ隊と鎮圧する警察が衝突した。一部のデモ隊は大統領秘密警護局の車両を壊して屋根に上った。

 先月25日に発生した「フロイド死亡事件」に抗議するデモが全米に広がっている。慌てた当局は加害警察官のデレク・ショービンを3級殺人容疑で起訴するなど火消しに乗り出したが、一部のデモ隊が略奪や放火など極端な暴力に突き進んでいる。ドナルド・トランプ大統領は、これを口実に強硬対応の方針ばかりを強調し、事態を悪循環に追い込んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で10万人以上が死亡し、失業者数が4千万人を突破した状況で、人種差別問題にまで火がつき、米国は総体的な混乱に陥った。

 ワシントンは、デモの広がった多くの米国の都市の一つにすぎない。フロイドさんが死亡したミネソタ州ミネアポリスから始まったデモは、5日間で少なくとも20州約30都市に広がったとCNNは集計した。

 デモ隊は警察に石を投げ、一部は過激になり、建物を壊し商店を略奪したり放火したりした。カリフォルニア州ロサンゼルスではパトカーが燃え、デモ隊によっては商店の物を取っていきもした。ミネアポリスでは28日、警察署が燃えた。ミネアポリス周辺の韓国人店舗5カ所も被害を受けた。ミネソタ州など12の州とワシントンDCに州防衛軍の投入が承認され、フロリダ州マイアミなど25の都市には夜間の通行禁止命令が下された。現在まで17都市で1400人余りが逮捕されたとAP通信は伝えた。

 トランプ大統領は同日、スペースXの初の民間有人宇宙船の打ち上げを祝う演説で、全米にわたるデモについて「正義と平和とは何の関係もない。暴徒と略奪者、無政府主義者によって(フロイドさんの死亡が)黒く塗りつぶされている」と非難した。トランプ大統領は「罪のない人びとにテロを加えるANTIFAと急進左派集団が暴力と公共器物破損を主導している」とし、「容認しない」と述べた。トランプ大統領はツイッターにも民主党州知事・市長がデモ隊に強硬に対応しなければ「軍隊の無限の力を活用することと、大規模な逮捕」をすると警告した。米国防総省はミネアポリスに軍事警察(旧憲兵)部隊800人の投入準備を陸軍に指示したとAPが報じた。

 今回の事態は、怒った市民を鎮め人種差別の解決策を導き出す指導力が存在しない米国の現実を物語っている。事態が長期化する場合、11月の大統領選挙にも影響を与えかねない。トランプ大統領は人種差別的という批判を受けてきた。

 オバマ前大統領は29日に声明を出し、「これが2020年の米国の『ノーマル』であってはならない」と批判した。バスケットボール選手のレブロン・ジェームズ、歌手のマドンナやビヨンセなどの著名人は、ソーシャルメディアなどを通じてこのような批判に参加している。レディー・ガガは6枚目のアルバム発売記念のオンライン「リスニングパーティー」を延期し、「有権者登録をして声をあげるのに時間を使って」と呼びかけた。民主党大統領選候補のジョー・バイデン元副大統領は市民に「平和デモ」も一緒に呼びかけた。彼は30日夜、「(フロイドさんを死亡させた)野蛮性に抗議するのは正しく、必要だ」としながらも「地域社会を荒らし、不必要に破壊することは正しくない」と述べた。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/947281.html韓国語原文入力:2020-06-01 02:41
訳C.M

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