ミャンマーにとって韓国は、独裁から民主主義へ移行する過程で自ずから比較対象であり模倣する先例だ。 韓国は1970~1980年代に開放の過程を経験し、成功的な市場経済と民主主義を作動させることになった。 軍部統治の下、国際社会から孤立していたミャンマーは、外部世界と改革・開放を経験していく最中だ。
民主主義にはニュースと情報を提供する自由な言論が必要であるため、言論改革は開放された社会に進むための核心的要素だ。 去る10~12日、ミャンマーの首都ヤンゴンで開かれた‘2014東西センターカンファレンス’では、ミャンマーの進化する言論が主な討論主題であった。 ‘自由な言論に向けた挑戦’という主題で開かれたこの行事にはアメリカとアジアの多くの国から来た言論人・メディア専門家350人余が参加した。 記者は韓国言論振興財団の後援を受けてこの行事に参加した。
最近ミャンマーはこういう行事が開かれるにはぴったりの国の一つだ。 去る60年間、軍部政権は事前検閲制度を実施し、すべての印刷物は販売する前に必ず政府に提出し検閲を受けなければならなかった。 このような事前検閲法は政府が言論を厳格に統制することによって独裁の効率性を高めた。 事前検閲制は昨年廃止されたが、政府は相変らず最近もメディアを強力に統制している。 言論を創刊するには、これを担当する情報部から許可証を受けなければならない。 政府が自分の思いのままに出版許可証を発行する事もでき、また取り消すこともできることを意味する。
ミャンマーでの言論の自由に向けた進歩は緩やかだが、国際的にはその努力が認められている。 2013年ミャンマーは国境なき記者団(RWB)の言論の自由指標で179ヶ国中151位だった。 2012年に比べて18位も上がったわけだ。
ミャンマーの開放は、折しも韓国で言論の自由が後退している時点になされた。 韓国は国境なき記者団の言論の自由指標で50位を占めており、2012年より6位下落した。 2011年韓国はフリーダムハウスが付ける自由言論順位で‘自由だ’から‘部分的に自由だ’へ下方調整された。
去る数年間、韓国の保守政権は民主主義が保障する報道機関と表現の自由を傷つけてきた。 朴槿恵(パク・クネ)大統領は去る1月に最初の記者会見を行い、あらかじめ準備した演説文を朗読したし、事前に調整された質問にのみ答えた。 数日後インターネットでは、2003年に大統領記者会見で当時盧武鉉大統領に記者たちが自由に手を挙げて質問する場面が話題になった。
また、朴槿恵(パク・クネ)政権になって、時代錯誤的な国家保安法を適用する事例が大幅に増えた。 アムネスティ・インターナショナル報告書によれば、2008~2011年の間に国家保安法事件は95.6%増加した。昨年には103人が国家保安法違反容疑で起訴された。 去る10年間で最も多い数字だ。
10日ヤンゴン カンファレンスにパネルとして参加したアジア太平洋メディアサービスのペルティル リントゥノ通信員は‘退行’と表現しうる憂慮事項について話した。 彼はミャンマーでの発展がずっと維持されないこともありうるとし 「かつての1980年代や1990年代初期のような深刻な水準まで後退するとは思わないが、巨大企業がメディアを掌握することに対しては心配している。 より多くの自己検閲をすることになるだろう」と話した。
ミャンマー民主主義民族同盟議長であるアウンサン・スーチーは9日、今回のカンファレンスの事前行事で自由言論の重要性を強調した。 彼女は 「誰かが私にミャンマーには完全な言論の自由があるかと尋ねるならば、ないと答えるだろう。 私たちにはまだ自由な言論を守護し増進する法がないためだ。 しかし同時に、私は言論が未だ十分に責任を全うできずにいるとも答えるだろう」と話した。
韓国とミャンマーの重要な差は、韓国の言論の自由が1980年代に軍部政権と永く戦って成し遂げた結果だという点だ。 韓国の言論の自由は街頭で繰り広げられた市民の抵抗によって得られたわけだが、ミャンマーの言論の自由は軍部政権によって上から下に降りてきたものだ。
もう一つの差異点は民族構成だ。 韓国は民族、言語が同質であるために自由言論への移行が容易だ。 すべての韓国人は同じ出版物を読め、国家のビジョンに普遍的に献身しているという意だ。 だが、ビルマとも呼ばれるミャンマーは、非常に多様な民族で構成されている。 パマル族が人口の68%を占めているが、公式には135の民族が存在する。 これらの内の一部はカレン族のようにミャンマー政権の合法性を認めていない。
言論はこのような少数民族をきちんと代弁していない。 11日の会議にパネルとして参加した国際ビルマニュース(Burma News International)のコンサルタントであるチリンは「多くの言論は少数民族が住む所や国境地帯に記者を置いていないために、彼等に関する情報は非常に脆弱だ」と話した。 ミャンマー大統領のスポークスマンであるu ye htutは、言論が少数民族をきちんと代弁できていないという点を指摘して 「報道機関の99%がヤンゴンにある」と話した。
韓国の言論はそれほど膨大な少数民族を代弁しなければならない任務を持ったことがないが、表現の自由を確保するために独裁政権と戦ってきた歴史は似ている。 韓国の事例は自由言論のシステムを備えても、現在の韓国政府のように、そのような価値を重要視しない政権の下では自由が枯れることもありうるという教訓をミャンマーに与えている。
Steven Borowiec<ハンギョレ>英文ニュースチーム記者