本文に移動

戦闘機が1時間飛べば乗用車7年分のCO2排出…終わらぬ戦争、破滅する地球

登録:2026-03-26 11:05 修正:2026-03-29 08:42
[ハンギョレ21] ソ・ユンビンの科学を読む 
2026年3月16日午前(現地時間)、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際空港で無人機が燃料貯蔵庫を攻撃し火災が発生した/AFP・聯合ニュース

 21世紀に入っても戦争はあまりに多い。ロシアのウクライナ侵攻がまだ終わってもいないのに、イスラエルとハマスが全面戦争を繰り広げる。2026年に入ってからは米国がイランを攻撃した。事態はすべて現在進行形だ。毎日恐ろしいニュースを耳にする。大義名分や利権は命のない亡霊だ。人間は生きていて、恐ろしくも苦痛を感じるものだ。戦争がなくなるべき理由はそれだけでも十分だが、地球的な観点からも反戦の自明な論理に少しでも貢献するために、本稿を書いた。

 戦争の背景には、静かに、しかし永久に破壊されつつあるもうひとつの犠牲者がいる。それはまさに、私たちが地に足をつけて生きているこの地球、生態系だ。戦争は人間に対する犯罪であるだけでなく、地球という巨大なエコシステムを狙ったテロでもある。

■戦争の化学的な傷跡、土と水に残り後世に

 ベトナム戦争が繰り広げられた20世紀の10年余りの間に、米軍はベトナムに7000万リットル以上の大量の枯葉剤を散布した。戦争が終わった後、私たちは次のような惨状を目の当たりにした。ベトナムの森林の20%以上、特にマングローブの森の40%が消えた。数多くの動植物が死に、一部は絶滅した。数千キロに及ぶ土地が永久に汚染された。ベトナム戦争をきっかけに、戦争による自然破壊行為は「エコサイド(Ecocide)」と名付けられた。生態系を意味する「エコ(Eco)」に、虐殺を意味する「サイド(-cide)」を組み合わせた言葉だ。エコサイドは具体的に「人間またはその他の要因によって特定地域の生態系が広範囲にわたり毀損・破壊され、その地域の住民の平和な生活が深刻に阻害される行為」と定義される。現在、エコサイドは国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程に基づく犯罪となっている。

 しかし、エコサイドは続いている。現代の戦争が過去に比べて「洗練されている」という印象は、完全なる錯覚だ。戦場の土は有毒化する。戦場では依然としてミサイルや砲弾が飛び交い、爆発している。火薬はトリニトロトルエン(TNT)、TNTよりも爆発力が大きく点火速度が速いトリメチレントリニトロアミン(RDX・爆発性ニトロアミン化合物)のような火薬物質で作られている。弾には鉛、水銀、アンチモンといった重金属が含まれている。それらは土壌に埋まり、爆発しながら土に混ざり合う。爆撃地の土壌を分析してみると、重金属濃度が基準値より最大数百倍も高いことがわかる。これらは数十年間分解されない。文字通り「化学的な傷跡」であり、これは景観を損なうだけでなく、有毒だ。健康な土壌の中には数億匹の微生物が生息している。微生物は有機物を分解し、生態系の基盤を支える役割を果たす。重金属や化学物質はこの微細な生態系さえも破壊してしまう。

 特に施設への爆撃は災害の規模を拡大させる。ロシアのウクライナ侵攻直後の2022年5月、ウクライナ環境省は、西部の都市テルノピリで肥料貯蔵庫が破壊された後、近隣の河川の水中のアンモニア濃度が基準値の163倍、硝酸塩濃度が基準値の50倍にのぼったと発表した。被害はそれだけにとどまらない。有毒物質は地下水に浸透する。ある地域での戦闘が、近隣はもちろん数千キロ離れた村の飲料水の水源まで汚染しうる。汚染された土地で汚染された水を摂取し育った農作物や家畜は、有毒物質を体内にそのまま蓄えている。食物連鎖の最も上にいる人間は、結局、戦争が撒き散らした毒を濃縮された形で摂取することになる。土と水に刻まれたエコサイドの痕跡は、戦争を経験していない未来世代の体内にも入り込み、奇形やがん、免疫疾患として受け継がれていく。

■未来まで引きずり込んで焼き尽くす戦争

 それだけではない。空を見上げてみよう。戦争は気候危機を加速させる最も強力な炭素爆弾でもある。全世界がカーボンニュートラルを叫び、プラスチックを減らし、リサイクル・リユースに尽力している一方で、戦場では想像もできない量の温室効果ガスが噴出されている。戦闘機は一度出撃するたびに数千リットルのケロシン(灯油)を燃やす。戦車や軍艦が移動する経路には、巨大なカーボンフットプリントが刻まれる。作戦遂行能力が最優先される兵器において、エネルギー効率や環境配慮は最も後回しにされる要素だ。最新型の戦闘機がたった1時間で排出する二酸化炭素は、乗用車が7年間で排出する量に匹敵する。そのため、世界の軍事部門で発生する二酸化炭素の排出量は、世界の排出量の約5.5%に達すると推定されている。これだけでも世界第4位の排出国レベルだが、軍事機密などを理由に排出量の報告が義務付けられていないため、実際にはどれほど多いのかは誰にも分からない。

 欧州気候基金とウクライナ環境政策・擁護イニシアチブの支援を受けて作成された「ウクライナ戦争24カ月経過時点における温室効果ガス排出に関する報告書」によると、ロシア・ウクライナ戦争の最初の2年間に発生した温室効果ガスは約1億7500万トンだった。これはベルギー全体が1年間に排出する温室効果ガスよりも多い量だ。

 さらに恐ろしいのは、炭素排出は戦争が終わった後も続くという点だ。戦争で焼けた森は、もう炭素を吸収できない死んだ土地となる。崩壊した都市を再建するために投入される莫大な量のセメントや鉄鋼を生産する過程でも、膨大な量の炭素が排出される。セメント1トンを製造する際には、1トン近い二酸化炭素が発生する。戦争は現在だけでなく、未来までも引きずり込んで焼き尽くしてしまう。

■「聴覚・嗅覚の麻痺」非人間動物の命は

 これでもまだ終わりではない。ヒト以外の動物(非人間動物)の問題も残っている。戦争の中で動植物は声なき難民となる。かれらは軍事作戦の過程で追い出され、死を迎える。直接殺されなくても、爆発は動物の聴覚と嗅覚を麻痺させる。地雷の埋設や軍事施設の建設は、野生動物の避難経路さえも地獄へと変えてしまう。戦争は人間の保護システムをも崩壊させる。平時であれば国が管理していた国立公園や絶滅危惧種保護区は、戦争に巻き込まれると完全に無防備な状態となる。例えばウクライナは、ロシアがウクライナ国内の自然保護区に軍事基地を建てたと主張している。これは、絶滅危惧種を含む600種の動物と750種の植物が危険にさらされたことを意味する。彼らの運命がどうなったかは、戦争が終わってからでなければ分からないだろう。

 エコ(eco)はギリシャ語のオイコス(oikos)に由来する。オイコスとは、家、家族、あるいは生活の場という意味だ。それゆえ、エコサイドを地球上のすべての生命体の家を侵略する武装強盗のような行為だと表現しても言い過ぎではないだろう。私たちは自分の家を守るように地球環境を保護し、強盗を追い払うように戦争を排除しなければならない。戦争は一部の問題ではなく地球全体の問題であり、現在だけの問題ではなく未来の問題でもある。あらゆる戦争と、それによる苦しみの終息を祈りつつ本稿を終える。

ソ・ユンビン|小説家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1250825.html韓国語原文入力:2026-03-24 19:05
訳C.M

関連記事