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[ハンギョレ21 2010.07.16第819号] "遺骨 撒く直前に入金された"

 

[イシュー追跡] 4億ウォン余りを受け取り労災認定訴訟を取り下げた後、罪悪感に苦しめられる故パク・ジヨン氏の母親(2335字)
"お金は全部持っていって私たちのジヨンを返してくれ"

ホ・ジェヒョン

 "三星電子が4億ウォン余りのお金を与え、労災訴訟を取り下げた。 三星がジヨンの死を埋めてしまおうと私たち家族を買収した。「三星電子半導体工場で仕事をし、2007年に白血病に罹り、去る3月に亡くなった故パク・ジヨン氏の母親 ファン・某氏は娘の遺影を真っすぐに見ることができなかった。去る7月5日に取材陣に会い、多額の金を受け取り ‘労災認定行政訴訟’ を取り下げた事実を打ち明けた後だった。

←故パク・ジヨン氏の母親が記者にみじめな心情を吐露している。

ファン氏は 「( 治療費でできた ) 借金をすべて返したら空しくて、ジヨンの死をお金に変えてしまったようで罪悪感を持った」 として「三星電子は貧しい被害者家族をお金で買収し真実を隠そうとしてはいけない」 と話した。以下は忠南、論山市の自宅の近所で交わしたファン氏との一問一答だ。

-三星電子で金を受け取った過程を説明して欲しい。

=三星電子関係者がジヨンが亡くなる一日前の3月30日、労災認定行政訴訟を取り下げる条件で巨額の金銭を提示してきた。計4億ウォン余りを受け取った。初め私たちは10億ウォンを要求した。だが、三星電子は最終的に3億8千万ウォンを補償費として与え、2千万ウォンの葬儀費を支援した。三星電子が5千万ウォンの関連保険に入っていたようだったよ。

-通帳にお金が入金された日は。

=4月2日だった。 ジヨンを化粧し江原道、束草近海に遺骨を撒く直前に入金された。

-三星電子と合意した理由は何か。

=ジヨンがとても苦労を多くしているけど、そうやってずっと頑張っていられなかった。ジヨンが結局は死にそうだと思い、せめてゆっくりと送ってやりたかった。労災認定を得ようと、けんかをしてジヨンをたくさん疲れさせた。ジヨンに罪を犯したようだった。病院費を払うのに借金も多くした状態で経済的にも大変だった。その借金をどのようにして全部返せばいいのか当てもなくて金を受け取った。三星電子側が ‘労災を認められて受け取れるお金より、もっと多く与える’ と約束した。

-訴訟を取り下げることのほかに三星電子が要求したことはなかったか。

=面倒なことになるので民主労総や言論などと接触しないでくれと言った。私たちの家族に遠くへ引っ越せと薦めた。

-金を受け取ったという告白をすることになった理由は何か。

=借金をすべて返したら、空しい気分だった。私たちの家族は三星に利用された。三星はうちの子の死を埋めてしまおうとした。心に余裕がない状況で簡単に合意したことを後悔している。三星から合意金ではなく慰労金を受け取らなければならなかった。誤った選択だった。

-三星電子がなぜこういう取り引きをしたと考えるか。三星電子側の主張どおり、ジヨン氏が個人的疾病で亡くなったとすれば、こういうことをする理由があるか。

=私もそれが気になっている。一抹の良心があったのだろうか。ジヨンが職業病で死んだということを彼ら自らは認めたのではないかといえる。ところが事実を隠さなければならないので、遺族たちを懐柔しようとしたようだ。誰でも家族が病院にいれば最も至急必要なのはお金だ。どうにかして治療費でも作って生かさなければならないという考えしかもてない。

-合意以後、変化した心境を三星電子側に打ち明けたことがあるか。

=(三星電子の) 部長たちに何回も電話した。‘私が当時は借金が多くて、どうしても金が必要で合意をしたが、事実上 ジヨンをお金と取り替えたことだった。ゆっくり稼いで自分が返せば良いのに、わけもなく合意をした。私は悔しい’ と言いながら ‘お金は全部持っていっていいから私たちのジヨンを返してくれ’ と何度も電話して泣いた。

-今後、どのようにすべきか。

=再び労災認定行政訴訟ができるか調べてみる。でも、三星に相対して戦えるかが心配だ。とても大きな企業だ。勤労福祉公団も今のようではいけない。なぜ我が国では人が死んでいっても大きい会社には一言もいえないのか。いつまで、これを見守らなければならないのか。半導体工場がこのように危険なことをあらかじめ知っていたなら、ジヨンは死ななかっただろう。また、今でも(三星電子半導体工場で)仕事をしている子供たちはどうするのか。私の娘が体験した過程を(他の人たちが) 同じように体験しているはずなのに…。 一日も早く真実が明らかにならなければならない。

-今の心情はどうか。

=生きていることが生きることではない。死ねないから生きている。 (ジヨンに会いたくて) 一日中、植物人間のようにまぬけに座って時間だけを過ごしている。 ‘私もジヨンについて行かなければならないのか’ そんな思いになる。 ジヨンに夢で一度会うことが願いだ。

-三星電子に望むことがあれば。

=労災申請を取り下げるように強要してはいけない。これは遺族たちや被害者本人に任せなければならない。お金で買収してはいけない。 三星は貧しい人々の弱点を利用している。

ホ・ジェヒョン記者,ハンギョレ報道映像チーム catalunia@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/special/special_general/27711.html 訳J.S