[焦点]‘ハン・サンリュル前庁長批判文’上げて罷免された羅州税務署キム・ドンイル係長
“外圧防ごうとするなら牽制と疎通が必要”
国税庁職員だけが見るインターネット内部掲示板がある。その掲示板には‘私の意見’欄が用意されている。職員どうし‘疎通’しようという広場だ。去る5月28日、盧武鉉前大統領の逝去で国民の追慕熱気が哀切だった頃だった。‘私の意見’欄に‘私は去年夏に国税庁がしたことを知っている’という題名の文(下の記事参照)が上がってきた。国外逃避中のハン・サンリュル前国税庁長を批判する内容だった。この文を根拠に<租税日報>記者が‘盧前大統領逝去,国税庁職員批判文’という題名の記事を書いた。国税庁はかっと怒った。文を書いた羅州税務署のキム・ドンイル係長に対する懲戒委員会を開き6月8日付で職位解除した。この日からキム係長は胸に黒いリボンを付け黒いネクタイを締めて出勤した。国税庁首脳部が憲法に保障された表現の自由に死亡宣告を下したという考えからだった。
←光州全南進歩連帯,韓国透明性機構光州全南本部など光州地域の市民団体所属会員たちが6月16日午後、光州北区,五龍洞の政府合同庁舎前で国税庁のキム・ドンイル係長罷免措置を批判する記者会見を行った。国税庁は批判世論にも関わらず同日、キム係長を検察に告訴するなど強硬対応で一貫している。 写真連合
相次ぐ‘標的税務調査’疑惑
キム・ドンイル係長は6月18日<ハンギョレ21>との通話で「事態が常識的に解決されることを願う」と話し始めた。国税庁はキム係長に対して6月15日罷免決定を下した。退職金の半分を削り5年間公職採用を阻む重懲戒で公務員たちには死刑宣告と違わない。罷免決定に対する批判世論が沸騰したが、国税庁は翌日彼を検察に告訴することまでした。キム係長は「罷免の根拠は‘品位維持義務’を示した国家公務員法第63条と国税庁公務員行動綱領第23条であった」として「税務調査を自身の出世手段として活用したという疑惑を買っているハン前庁長が品位を失わせたのか、あるいは彼の誤りを批判した人が品位を失わしめたのかは国民が皆知っているだろう」と話した。
キム係長は「国税庁職員ならば誰でもパク・ヨンチャ前会長のテグァン実業に対する税務調査が‘標的税務調査’だという疑惑を一定程度うなずくだろう」と話した。深層・企画調査だけを行うソウル地方国税庁調査4局が財界620位圏,売上3千億ウォンの中小企業を調査するために、管轄地域でもない慶南,金海まで降りて行ったためだ。彼は税務調査期限が延びたことにも疑問を提起した。「この頃は‘納税者保護’のために期間延長をしないことが通例のため」だ。キム係長は「大統領府でさせたか、あるいはハン前庁長が過剰忠誠をつくしてそうしたのか、国民的疑惑があるのは事実ではないか」と反問し「振り返ってみれば、親パク連帯比例代表1番だったヤン・ジョンレ前議員家族に対する税務調査や、チョン・ヨンジュ社長時期の韓国放送外注企業等に対する税務調査を行ったことも疑惑を買うに値する事例」と話した。
キム係長は「現場で仕事をする2万人余りの国税庁職員は、国民の信頼を得るために透明に仕事をしている」としつつ「反面、チョン・グンピョ,イ・ジュソン,ハン・サンリュルなど3人の前庁長らは金品授受や絵画ロビー疑惑などで不名誉退陣した」と皮肉った。特にハン前庁長に対しては「前職大統領を崖っぷちに追いやるまで端緒を提供し、国税庁組織の信頼を完全に亡ぼしてしまった」と評価した。
なぜこうなったのだろうか? キム係長は国税庁長任命過程と権限集中型国税庁構造が事の発端だと指定した。落馬した前庁長らはあいにく皆内部から昇進した人々だった。キム係長は「他の人を落として上がろうとすれば政界に顔を出すしかなく、庁長になれば世話になった政治家たちや大統領府の顔色をうかがうことになる」と説明した。真の問題は「庁長が誤った考えを持っても、これを組織内部で牽制する方法がないという点」だ。キム係長はこういう現実を変えるために「6ヶ地方庁長に権限を分配し、国税庁自体で遂行する監査・監察も監査院が行うように構造改革をしなければならない」と声を高めた。
罷免決定を下した‘懲戒議決文書’はキム係長の文が<租税日報>に報道されることによって結果的に国税庁の名誉が失墜したという論理を展開している。これに対してキム係長は「ハン前庁長は今国税庁組織員の身分ではないのみならず、彼に対する批判は国税庁が健全な自浄能力を持った集団だということを国民に知らせる行為であった」として「ハン前庁長は今からでも国内に帰ってきて(チョン・シニル セジュンナモ会長の税務調査ロビー疑惑,テグァン実業標的税務調査疑惑などを)調査されなければならない」と反論した。「こういう過程が先行してこそ掲示文(の表現)が激しかったのか、そうではなかったのかを判断することができる」ということだ。
“罷免不当”請願審査・行政訴訟方針
キム係長は実際に今回の波紋を大きくした張本人に国税庁首脳部を指定した。「わが国の憲法が表現の自由を保障しているにも関わらず国税庁職員だけが見る内部掲示板に文を載せたという理由で懲戒を下したため」だ。「懲戒が話にならないのでマスコミの報道が集中したし、多くの国民が国税庁の実状を知ることになった」と彼は主張した。
懲戒波動を体験して関係ない家族までが苦難に遭った。彼の妻は懲戒決定にとても驚いたためか真夜中に胸の痛みを訴える。高3と高1の子供たちが勉強に集中できないかと思い心配も大きい。キム係長は「それでも後輩たちが勇気を出せと励ます携帯メールを送ってくれ、前職職員たちも電話をたくさんかけてくれて力になる」と笑って話した。彼は今回の罷免決定に対する請願審査を要請し、ここで受け入れられなければ行政訴訟を提起するつもりだ。民主社会のための弁護士会,参加連帯など市民社会陣営と全国公務員労組でも積極的に援助するという意向を明らかにした。
しかし彼の願いは法的争いではなく対話と疎通だ。初めて掲示文を載せて照会数が6千余回に達するや、掲示物管理委員会は恣意的判断により削除(非公開に)した。「もしその時、監査官が‘表現が引っかかるので一部修正してくれ’と要求したとすれば、快く応じただろう」とキム係長は話した。何の説明もなく文を消し、自身もコメントを上げて反発するほかはなかったとのことだ。彼は「率直に言って今は寄り添う相手が国民しかいない実情」としながら「ぜひ国税庁首脳部が感情的対応だけに駆け上がらず罷免措置を撤回し懲戒委員会を再び開く決断をするように願う」と訴えた。
国税庁内部掲示板にキム・ドンイル係長が上げた文(要約)
テグァン実業税務調査の転末を明らかにしなければ
←キム・ドンイル係長
この文を書いている自分自身も痛ましいことこの上ない。前職大統領を自殺という極端な方法で命を終えるように追いやるまで国税庁がその端緒を提供したためだ。
2009年5月25日(月曜日) <ハンギョレ> 5面にある“ロウソクのあかりに火傷した政権‘反転カード’‘税務調査疑惑”という題名の記事によく現れている。
こうした話にもならない行動をして国税庁を危機に陥れ、国税庁の信頼をとうてい回復できなくさせておきながら、国税庁の首長であった間に職員らに講演をして社会貢献だ何だといってショーをやって見せたのか!
今からでも国税庁首脳部は、なぜテグァン実業を調査することになったか、なぜ管轄地方国税庁でなくソウル庁調査4局で調査をするようにしたか、なぜ大統領に直接報告をし、直接報告をした後でどんな措置がとられたのか、明らかにしなければならないでしょう。
そして責任を負わなければならない位置にあったすべての人々は公職を離れなければならず、国民の前に謝罪をしてこそ当然でしょう。
これだけが傷を負った国民の心を慰労できるでしょう。一刻を争います。これもまた時期をのがせば意味がありません。
国税庁首脳部でも悩みが深いでしょうが、一日も早く速かに実行されるよう願います。
故盧武鉉前大統領の冥福を祈ります。
イム・ジュファン記者eyelid@hani.co.kr
原文:http://h21.hani.co.kr/arti/society/society_general/25249.html 訳:J.S