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韓国、半導体超好況にもウォン安・金利高で庶民の暮らしは苦しく…広がる二極化が課題

登録:2026-07-04 03:53 修正:2026-07-04 08:53
[経済の内実]
半導体好況が為替レートや金利などのマクロ経済に影響を及ぼし、それに対する措置で庶民の暮らしがさらに苦しくなる中、制度改革の必要性が指摘されている。写真は京畿道水原市霊通区のサムスン電子本社。2026年5月撮影/聯合ニュース

 全国民の羨望の的となっていたサムスン電子の成果給問題が一段落した。24時間365日稼働すべき半導体生産ラインが停止する可能性のある絶体絶命の状況で、政府は緊急調整権を無理に適用してでもストライキだけは防ごうとした。幸い、キム・ヨンフン雇用労働部長官もかかわって作成された調整案で、労使は合意した。

 メモリ事業部の社員は、1人当たり5億ウォン(約5200万円)の成果給を受け取ることになった。羨ましくないと言ったらうそになる。ストライキという極端な状況は防いだが、余震は続いている。半導体事業部とその他の事業部との対立はより深刻化している。半導体事業部内でもメモリと非メモリの社員同士の対立が深まっている。

■分配めぐる対立が表面化

 サムスン電子の成果給論争は、半導体と人工知能(AI)のブームの一側面を示している。予想外の巨額の利益を前にして、分配をめぐる対立が頭をもたげたのだ。なぜ社員だけで分けるのか、協力会社にも分配しよう、地域社会にも分配しよう、などの主張が飛び交った。さらにキム・ヨンフン長官が火をつけた。キム長官は「サムスン電子の成功は、労使の献身的な努力に国と地域社会の支援が加わった結果。社会の支援が結びついて得られた成果なら、再分配も社会的に議論されるべきだ」として、「韓国型社会連帯賃金」を模索しようと呼びかけた。

 サムスン電子が2026年に300兆ウォン(約31兆6000億円)の利益を上げるとしたら、地方税を含む法人税だけで82兆5000億ウォン(約8兆6900億円)を納めることになる。これほどの巨額の税金を支払うにもかかわらず、サムスン電子は人の目が気になるのか、社会貢献のために5年間で5兆ウォン(約5270億円)を出すことを約束した。その第一弾として、製品を購入した顧客に購入金額の最大20%分のオンヌリ商品券(中小ベンチャー企業部小商工人市場振興公団が発行する商品券)を贈呈することを決めた。2027年にさらに稼いだら、オンヌリ商品券もさらに支給すべきだろうか。サムスン電子の成果給問題がどこまで広がるかを予測するのは難しい。

 半導体の大好況は、様々な場所で見慣れない光景を生み出している。政府は徴収される「超過税収」を活用する方法を検討している。予想外の税収なので、どう使うかの計画もない。規定通りであれば地方交付金の精算、国家債務の返済に充てられる。小規模であれば基準に則って処理すれば済むが、そのように処理するには規模が大きすぎる。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領は先日の就任1年の記者会見で、「国債比率を減らすのは簡単な方法だが、借金がないことは絶対的な真理ではなく、愚かな行為の1つだ」と述べた。また「将来の世代のための成長潜在力を育む方向で投資する」と強調した。李大統領はそう述べたものの、実際に予算案が発表されたら国家債務比率をめぐって論争が起きるだろう。

 古くからの課題となっている地方教育財政交付金をめぐる論争も控えている。超過税収の約20%は自動的に地方教育財政交付金に割り当てられる。地方に住む生徒も高水準の教育を受けられるよう支援すべきだという趣旨に反対する人はいない。しかし、交付金は生徒数とは関係なしに機械的に割り当てられるものだから、このかん地方の生徒は減少しているにもかかわらず、予算は増え続けるという事態が発生している。生徒1人当たりの教育交付金は2025年に1371万ウォンとなり、10年前のほぼ2倍になっている。11人の生徒が修学旅行に行くのに貸切バスを4台呼んだり、職員のノートパソコンを購入するために数十億ウォンを使ったりといった例が、監査院の監査で摘発されている。

 あげくの果てに、生徒たちに配ろうという話も出ている。全国16市道の教育監選挙に出馬した58人の候補のうち40人が、生徒に金銭を配る現金支援公約を掲げた。最低10万ウォン(約1万500円)の現金支給から、マッチング型ファンドで最大5000万ウォン(約527万円)支援するとする公約まであった。地域通貨による支給や、放課後学校の受講券の支給という約束もあった。教育監は公教育を担うものであるにもかかわらず、20万ウォン(約2万1100円)の私教育(塾や習い事)費を支給するという公約もあった。もともと何かととやかく言われる地方交付金は、超過税収によってまたしても問題視された。

サムスン電子は成長の成果を国民と共有すると発表。その第一弾として、製品の購入者に購入金額の最大20%分のオンヌリ商品券を贈呈する「国民と共に、サムスン電子感謝フェスティバル」を2026年6月8日から4週間にわたり実施した/聯合ニュース

 為替レートも問題だ。為替レートは通常、国家経済の危機状況でドル高となる。今の韓国経済は誰が見ても危機的状況ではない。2026年5月の輸出は877億5000万ドルを記録し、月間で過去最高を更新した。2026年の貿易黒字はすでに1000億ドルを超えている。韓国の年間最大黒字は2017年の952億ドル。たった5カ月で年間最大黒字を超えているのだ。

 輸出実績が過去最高であれば、ドルは下がるものだ。しかし、ドルは一時1ドル=1550ウォンに迫った。2009年の金融危機以降で最も高い。株価が上がり過ぎているからだ。

 通常、外国人投資家はポートフォリオを作成し、一定の割合で韓国株に投資する。しかし韓国株、特に半導体株の上昇スピードが速すぎたため、比率がオーバーしてしまった。これを調整するために株を売却しており、2026年の売却規模はすでに115兆ウォン(約12兆1000億円)にのぼる。ドル高は輸出企業には有利だが、輸入物価が上昇するため国民に負担が重くのしかかる。半導体がうまくいっているのは良いが、ドル高で国民の生活が苦しくなるのは問題だ。

■前例なき二極化

 金利も問題だ。経済成長率が高まれば金利は上昇するのが自然だ。経済協力開発機構(OECD)は、韓国の2026年の経済成長見通しを既存の1.7%から2.6%へと大幅に引き上げた。3カ月前、OECDは韓国の経済成長見通しを大幅に下方修正していた。その下げ幅は主要20カ国(G20)の中で2番目の大きさだった。OECDも半導体ブームを予想できていなかったのだ。名目成長率の見通しは実に10.4%。名目成長率が10%を超えたのは2002年以来24年ぶりだ。成長率が2桁とは。信じられない数字だ。

 成長率が高いのは良いことだ。しかし成長率を考慮すれば、韓国銀行は政策金利を引き上げるべきだ。稼いでいる半導体企業にとって悪いことは何もない。稼いだ金を預金するだけでも、金利が上がるため利息が増える。しかし、金利を上げると中小企業や庶民の困難は増す。半導体メーカーの利益が増えたら庶民の生活が苦しくなるという逆説が、至る所で起きている。

 結局のところ、問題は二極化だ。二極化は昨日今日にはじまった問題ではないが、これまでに経験したことのない二極化だ。一般的な二極化とは、所得や資産の格差が拡大する現象を指す。半導体好況による二極化は、単に半導体は稼ぎが良く、他は稼げないというレベルにとどまらない。半導体好況が為替レートや金利などのマクロ経済に影響を及ぼし、それに対する措置で庶民がさらに苦しむのだ。だとしたら、半導体好況による超過税収は庶民のために使うべきなのではないか。しかし、半導体で稼いだ金を庶民のためにばらまけば、ポピュリズム批判が起きざるを得ない。

 かつて半導体は、2~3年周期で好況と不況を繰り返す景気敏感業種だった。近年、AI産業が急速に成長する中で、メモリ半導体が最も重要なボトルネックになっていると指摘されている。半導体価格は1年で6~7倍になっている。メモリ半導体の確保のためにビッグテックは、サムスン電子やSKハイニックスなどの国内の半導体メーカーと長期供給契約を結んでいる。

 景気の良しあしにかかわらずメモリがこのように安定して売れ続ければ、すなわち超過税収が2~3年で終わるのではなく、より長期化すれば、大もうけしたといって喜んでばかりいるべき問題ではない。体質の変化に制度の変更が伴わないと、副作用が重くなる可能性がある。

 大統領府のキム・ヨンボム政策室長はソーシャルメディアで、「AIインフラのサプライチェーンにおける戦略的位置が生み出した超過利潤は、社会内部のK字格差を構造的に拡大する可能性がある。ならば、一部を現世代の社会の安定と転換コストの軽減に使用するのも、単なる分配ではなく、体制維持コストの性格を持つ」と述べている。そして、構造的な超過利潤の制度化原則を「国民配当金」と名付けている。

 ク・ユンチョル経済副首相兼財政経済部長官は「国富ファンド」を掲げている。ク副首相は「半導体で得た金はただ配分して使うにとどまらず、未来の資産として育てていく。投資して稼ぎ、富を広げる好循環の構造を整える」と強調している。韓国型国富ファンドは国内企業に集中投資するものであるため、外貨準備を海外資産に投資する韓国投資公社(KIC)とは区別される。キム・ヨンボム室長の国民配当金やク・ユンチョル副首相の国富ファンドをめぐっては、そのように金を使うことが正しいのか議論が交わされている。

■先んじてやって来たAI時代

 金がなくて悩むよりも、大金を手にして悩む方がましかもしれない。しかし、いきなり金ができると欲望に目がくらむものだ。互いに様々な大義名分を掲げて我田引水しようとするだろう。ぶんどり合いになると対立が深まるばかりで、未来のための資源がなくなってしまう。現実を正しく認識しないと、半導体が儲けたせいで庶民の暮らしは苦しくなるというジレンマから抜け出すことができない。

 もしかすると、半導体好況は韓国に先んじてやってきたAI時代の混乱かもしれない。AIが働き、人間が仕事を失う日が来ると、AIを持つ者は莫大な金を稼ぎ、残る人たちは「無職」にならざるを得ない。AIが稼いだ金を私たちはいかに分配すべきか。半導体好況のもたらした課題は軽くはない。

クォン・スヌ|3プロTV取材チーム長

15年のキャリアを持つ現役記者。金融、産業などの様々な分野を取材し、現場の生々しさを伝える。西江大学を卒業後、「マネートゥデー放送」を経て、現在は「3プロTV」の番組「圧倒的クォン・スヌ:圧巻」で司会者を務める。著書に『激変と均衡』、『水素電気自動車時代が来る』がある。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1266536.html韓国語原文入力:2026-07-03 09:00
訳D.K

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