韓国政府と主要企業は、人工知能(AI)の要となるチップである米国エヌビディア(NVIDIA)のグラフィック処理装置(GPU)を26万枚確保したものの、肝心の現場でそれを使う理工系人材が不足していることも、韓国が解決すべき課題だと言われている。専門家は、AI覇権競争時代に際し、国家競争力の要となる理工系人材を確保するために、良質の雇用の創出に注力すべきだと指摘する。
韓国のAI分野の人材流出問題は明確になりつつある。米国スタンフォード大学の人間中心AI研究所(HAI)が今年4月に発表した報告書「AIインデックス」によると、韓国のAI人材流出入指数は2023年が-0.30、2024年が-0.36で下落している。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国中で35位にあたる。マイナスは、その国に流入した人材より国外に流出した人材の方が多いことを意味する。
今月3日に韓国銀行が公開した「理工系人材の海外流出の決定要因と政策的対応の方向性」と題する報告書にも、このような流れが記されている。国内の理工系の2700人あまりの修士・博士号を持つ人たちに対するアンケート調査では、回答者のうち、国内で勤務している人の42.9%が「今後3年以内に海外に転職することを考えている」と答えている。特に20~30代では、そう答えた人の割合が70%に達している。
彼らが国外への転職を考えているのには、年俸などの金銭的要因が大きく作用している。国内の大学でコンピュータ工学を専攻し、現在はテック企業に勤めるAさんは、「周囲の同期や後輩たちには国外企業に転職した人たちがいる。待遇そのものが違うから」だと述べた。実際に韓国銀行の調査によると、韓国の理工系人材は入社直後の年俸が平均5800万ウォン(約617万円)であるのに対し、国外企業に就職した理工系人材の年俸は1億6700万ウォン(約1780万円)で、韓国国内の就業者の3倍近い。
専門家は、理工系人材が就職するに値する雇用が国内にないことが人材流出の原因だと指摘する。科学技術政策研究院のパク・キボム上級研究委員は、「科学高校や英才学校を卒業して博士まで取った3千人の優秀な人材が毎年輩出されているが、彼らは政府出資の研究機関の一つのポストを得るために汲々としている」として、「韓国は国内総生産に対する研究開発費が世界2位だといわれるが、雇用面からみると力量が非常に低い国」だと語った。
延世大学のチョ・ソンベ教授(コンピュータ工学)は「社会で産業的需要を作り出せなければ、苦労して輩出した能力のある人材が海外のビッグテック企業に去り、残った人だけで国内の仕事を埋めることになりうる」と話した。