韓国政府は、米国が要求する3500億ドル(約51兆円)規模の対米投資ファンド創設と関連し、無制限の韓米通貨スワップの開設を要請したことが分かった。細部の交渉過程で米国が直接投資の比重を高めるよう要求したことを受け、韓国も外国為替市場の衝撃を緩和するための最小限の安全装置として通貨スワップの開設を要請したのだ。ファンドの構成と配分方法をめぐり韓米間の隔たりが大きく、交渉は長期化する可能性もあるとみられる。
14日、大統領室と韓国政府の説明によると、政府は先日の米国との関税交渉過程で、無制限の韓米通貨スワップを開設する必要性を提示した。政府関係者は「通貨スワップを含め、外国為替市場の影響を最小化するためのさまざまな案を協議している」と述べた。通貨スワップとは、非常時に自国通貨を預け、相手国の通貨をあらかじめ約定した為替レートで借りてくる契約のことをいう。
大統領室高官も「(米国と)いろいろな話をしている。キム・ヨンボム政策室長が放送記者クラブの時に発言した水準を参考にすれば良い」と述べた。キム室長は9日の放送記者クラブ招請討論会で、「日本は基軸通貨国であり、外貨準備高も韓国の3倍」だとしたうえで、「(韓国は米国との)通貨スワップ問題が解決していない。日本は米国と無制限通貨スワップがある」と発言した。
政府がこのようなカードを米国に切りだしたのは、対米投資ファンドの創設過程で、外国為替市場が不安になる可能性が高いという懸念のためだ。韓国が米国に投資することにした3500億ドルは、外貨準備高4200億ドルの83%にのぼる。日本が米国と結んだ5500億ドルの投資パッケージ(日本の外貨準備高の41%水準)に比べ、国家的負担がはるかに大きい。当初、韓国政府は対米直接投資の比重の負担を減らし、保証と融資などで投資しようとしたが、米国は日本と先日交わした合意のように直接投資の拡大を要求している。
ただし、無制限通貨スワップは現実的には容易ではなく、交渉戦略の一環だという分析もある。これはすなわち、米国が該当国の外国為替市場のドル流動性をめぐるリスクに対し、無制限に責任を負うことを意味するからだ。米国は金融システムの安定性のために日本や英国など基軸通貨国5カ国と無制限通貨スワップ協定を結んでいる。
米国は先に交渉を妥結した日本を事例に掲げて韓国に圧力をかけている。日本は投資先を米国が主導的に決め、投資金を回収するまでは投資利益を半分ずつ分け合うなど、不利な条項を多数受け入れた。
キム・ジョングァン産業通商資源部長官は、韓米関税交渉の後続合意のために米国を訪問したが、目に見える成果を得られず、同日帰国した。米国は直接投資拡大の他に収益の配分方法においても、投資金が回収される前までは米国が10%、韓国が90%を持っていくが、元金回収後は米国が90%、韓国が10%を持っていく構造を要求している。韓国貿易協会のチャン・サンシク国際貿易通商研究院長は「日本の先例で、外貨準備高が日本に及ばない韓国の交渉の余地が大きく狭まった」とし、「この状態が長引けば、輸出競争力も打撃を受けざるを得ない」と語った。