韓国財界では今回の控訴審判決により、サムスン電子のイ・ジェヨン会長の経営能力が本格的に試されるとみられている。二審でも無罪が維持され、司法リスクが事実上解消されたというのが大方の見解であり、今後経営一線で積極的に成果を出すのが課題ということだ。ただし、イ会長が経営権を握った後、サムスン電子の収益性が悪化する傾向にあり、昨年は危機説まで流れるなど、イ会長が直面した現実は容易ではない。
サムスン電子の実績資料を3日に分析したところ、昨年の会社の営業利益率は10.9%にとどまることが分かった。「半導体の酷寒期」だった2023年(2.5%)を除けば、2011年(9.8%)以来13年ぶりに最も低い数値だ。ライバル社のSKハイニックスと台湾のTSMCが昨年それぞれ35.5%、49.0%を記録したことに比べれば、差が大きい。技術競争力の低下に直面したサムスン電子が、昨年半導体業界に吹いた「人工知能(AI)の薫風」から疎外された結果とみられる。
サムスン電子の収益性の悪化は外部でも警戒心を引き起こしている。先月末、国際格付け会社ムーディーズはサムスン電子の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変え、その理由として技術競争力の不振と低い営業利益率を挙げた。一回性の要因などを除いて算出した「調整営業利益率」(AOM)が13〜14%を下回る状態が長期化した場合、現在「Aa2」である信用格付けの引き下げもありうるとも警告した。イ会長が抱えた課題が決して容易ではない点を示す断面だ。
財界ではひとまず対外的な経営活動に姿を現さなかったイ会長が、今回の判決を機に前面に出るかどうかに注目している。サムスン電子の半導体危機説が本格化したこの数カ月間、イ会長は大統領の歴訪への同行をはじめとする一部の日程を除き、公の場から距離を置いてきた。半導体事業の不振で実績が悪化し始めた時も、チョン・ヨンヒョン半導体部門長(副会長)が「反省文」を発表しただけで、イ会長の姿は見当たらなかった。イ会長のリーダーシップが弱まったのではないかと言われた背景だ。
投資家をはじめ、会社内外の信頼を回復することも主な課題とされている。市場ではイ会長を中心としたサムスン電子の不透明な支配構造を株価の低評価の原因の一つとして指摘してきた。イ会長だけでなく「ナンバーツー」と呼ばれるチョン・ヒョンホ副会長も未登記役員にとどまっているためだ。未登記役員は株主総会を通じて選任されず、会社の法的意思決定機構である取締役会のメンバーでもないが、実質的には多くの権限を行使する場合があり、物議を醸してきた。登記役員に比べて法的責任が軽く、権限と責任が不一致だという批判もある。
サムスン電子の事情をよく知る財界関係者は「三審が残ってはいるが、一審と二審で無罪判決が維持されたため、会社内部でも司法リスクからはある程度抜け出したとみているようだ」としたうえで、「ただし、これを機に経営一線でどんな変化が生じるかは、もう少し見守らなければならないだろう」と語った。